彼はただ、心で感じているだけでした。
理屈や議論の代わりに、本当の「生活」が彼のもとにやってきたのです。だからこそ、彼の心の中には、今までとはまったく違う何かが生まれようとしていました。
彼の枕の下には、一冊の福音書が置かれていました。彼は無意識のうちに、その本を手に取りました。それはソーニャのもので、かつて彼女が彼のために「ラザロの復活」を読み聞かせてくれた、あの本です。
刑務所に入ったばかりの頃、彼はこう思っていました。「ソーニャはきっと、宗教の話で自分を困らせたり、しつこく教えを説いて、この本を押し付けてくるんだろうな」と。ところが、驚いたことに、彼女は一度もそんな話をしなかったし、福音書を無理にすすめてくることさえありませんでした。
結局、彼が病気になる少し前、自分から彼女に「持ってきてほしい」と頼んだのです。彼女は何も言わずに本を持ってきてくれました。それでも、この時まで彼は一度もそのページを開こうとはしませんでした。
その日も、彼は本を開きはしませんでした。けれど、ふとある考えが彼の頭をよぎりました。
『今となっては、彼女が信じていることは、おれが信じていることと同じではないか? 少なくとも、彼女の心や、彼女の願いは、もうおれのものだ……』
ソーニャもまた、この日は一日中興奮していましたが、夜になるとまた具合が悪くなってしまいました。それでも彼女は幸せでした。あまりにも突然訪れた幸せに、逆に怖くなってしまうほどでした。
七年、たった七年! この幸せの始まりのひととき、二人はふとした瞬間に、この七年という歳月を、まるで七日間のように短く感じることさえありました。
彼は、この新しい生活がただで手に入ったわけではなく、これから先、もっと高い代償を払わなければならないこと、そのためにこれから先、大きな苦難を乗り越えなければならないということさえ、考える余裕がないほどでした。
しかし、そこにはもう新しい物語が始まっています。一人の人間が少しずつ変わり、少しずつ生まれ変わり、ある世界から別の世界へと移り変わり、今までまったく知らなかった新しい現実を知っていく物語が、始まりかかっていたのです。
これは、新しい物語のテーマとして語るには十分なことでしょう。しかし、本篇のこの物語は、これにてひとまず終わりです。
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