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室生 犀星

初級翻訳・童子 第4話

私には、恩樹がその子どもを得意そうに抱いたり、あやしたり、おしっこをさせたりしているのを見るたびに、いつも馬鹿馬鹿しい気持ちがしました。連れてこないときは、決まって子どもへのお土産のパンや玩具の包みを抱えていました。あまりにそれが定着しすぎ...
室生 犀星

初級翻訳・童子 第3話

「しばらく休んでからにしたほうがいい」私は見かねてそう言い、心の中でため息をつきました。胸肌の薄い皮膚が少し黒ずんでいるのまで気になり、絶望的な気持ちになりました。女中部屋で一休みさせてから、明かりの下でまた赤ん坊に乳房をくわえさせましたが...
室生 犀星

初級翻訳・童子 第2話

毎日3回も、お忙しいのにミルクを分けていただいて、本当に感謝しています」お母さんはそう言って、赤ちゃんが眠っている部屋へと案内しながら言いました。「とにかく、一度この子を見てやってくださいな。こんなに丸々と太って元気なんですよ」「まあ、本当...
室生 犀星

初級翻訳・童子 第1話

お母さんには「脚気(かっけ)」という病気があったので、赤ちゃんの健康のために、お母さんのミルク(母乳)は絶対に飲ませないことに決めました。ふっくらとしたお母さんは、おっぱいが張ってくると肩がものすごく凝って痛くなるので、生ぬるい白いミルクを...
中谷 宇吉郎

初級翻訳・鼠の湯治 第2話

その間は傷がかえって広がったり、少し治りかけたと思ったら止まったりと、いろいろ気ままな経過をたどるのです。いわば「治ろうか、どうしようか」と迷っているような期間があり、それを過ぎてから初めて、正規の治癒曲線に従って治っていくのです。この正規...
中谷 宇吉郎

初級翻訳・鼠の湯治 第1話

これは、北海道大学のY先生の研究室で実際に行われた、「ネズミに温泉療法を試す」という不思議な実験のお話です。「ネズミに温泉?」と聞くと、なんだか突拍子もないことに聞こえるかもしれません。でも、「温泉に入るとケガが早く治る」という昔からの言い...
宮本 百合子

初級翻訳・鼠と鳩麦 第1話

友達と火鉢に向かって手をかざしていたときのことです。友達がふっと何かに気づいたように、こう言いました。「ねえ、ちょっとこれ見て。あなたの爪にこんなものがあるわよ?」左手の中指の爪を指さすので、のぞき込んでみると、薄いピンク色の爪の真ん中あた...
岡本 綺堂

初級翻訳・鼠 第6話

「気をつけてお行きよ」お此の声も湿っぽく曇っていました。その声を背中で聞きながら、お元は降ってきた小雨の中、庭先へと抜け出しました。横手の木戸を内側から開けると、彼女の姿は闇の中へと消えていきました。翌朝の近江屋は、お元の家出の騒ぎで大騒ぎ...
岡本 綺堂

初級翻訳・鼠 第5話

近江屋七兵衛といえば、この界隈では誰もが知る、四十二歳の分別盛りの男です。それなのに、わが子を恋しく思うあまりに目がくらんでいたとはいえ、十七、八の小娘にまんまと騙されたのかと思うと、七兵衛も我ながら腹が立つやら、ばかばかしいやらで、しばら...
岡本 綺堂

初級翻訳・鼠 第4話

有明行燈の火に照らされた蚊帳の中には、鼠らしい姿は見当たりません。念のために布団を振ってみましたが、いたずら者はどこにも隠れていませんでした。「行燈を消さずに置いてください」言い知れない恐怖に襲われたお此は、夜が明けるまで一睡もできませんで...
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