原 民喜

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原 民喜

初級翻訳・誕生日 第1話

もうすぐ、雄二(ゆうじ)の誕生日がやってきます。学校では、ちょうどその日に遠足に行くことになっていました。「どうか、いいお天気だといいな」雄二は、一週間も前からその日のことが気になってしかたありませんでした。というのも、このところ毎日、びっ...
原 民喜

初級翻訳・火の子供 第5話

……だが、友は燃料も乏しい住居で、雑草を食べて飢えをしのぎながら、ついにこの友は惨めさの底で、今、新しい一人の子供を得たのだ。新しい人間の子供を……。風景は僕を噛む 僕は風景を噛むああ 噛みあう二つの お前と僕僕は日没前の時刻が、僕をここへ...
原 民喜

初級翻訳・火の子供 第4話

だから、もし彼が死んでしまえば、人類の生存以来続いてきた一つの点線が、彼のところでパタリと途切れてしまうことになる。この空白の想定は、彼を何か慄然とさせるのだった。体験することに憧れていた少年の僕も、その先には底なしの深い穴がぽっかりと口を...
原 民喜

初級翻訳・火の子供 第3話

しんとした、静かで狭いお部屋だった。少年だった僕には、そのお部屋の上の屋根をパッとめくった先に広がっている、果てしない宇宙の世界が、胸の奥にじーんと響いてくるような気がした。あの頃からすでに、何か不思議なものが僕を引きつけて、僕のことをのぞ...
原 民喜

初級翻訳・火の子供 第2話

僕は、あの原爆の光線で焼かれて死んだ人間たちが、人間というよりは塑像(そぞう)か何かのようで、無機質なもののような神秘な表情をしていたのを思い出す。めちゃくちゃに膨れ上がった肉塊の中から、紡錘形(ぼうすいけい)や円筒形が、無言で盛り上がって...
原 民喜

初級翻訳・火の子供 第1話

〈一九四九年 神田〉僕は通りがかりに、映画館の前にならぶ行列を眺めていた。水色の清楚なコートを着たお嬢さんの後ろ姿が、なんとなく僕の目に留まった。順番を待っている人の姿には、どうしても寂しさがつきまとうものだが、そのお嬢さんの肩のあたりにも...
原 民喜

初級翻訳・気絶人形 第1話

気絶人形原民喜 くるくるくるくる、ぐるぐるぐるぐる。そのお人形は、さっきから目が回って気分が悪くなっていました。 ぐるぐるぐるぐる、くるくるくるくる。お人形のセルロイドのほっぺたは真っ青になり、瞳が美しくふるえています。 まわりでは、みんな...
原 民喜

初級翻訳・忘れもの 第1話

忘れもの原民喜 ポストのところまで歩いていくと、彼はポケットから手紙を取り出しました。 そして、なんだか変だなとは思いつつもそのままポストの口へ入れましたが、指を離した瞬間にハッと気がついて、顔をゆがめました。 切手を貼るのを忘れていたので...
原 民喜

初級翻訳・山へ登った毬 第1話

史朗(しろう)くんは、この春からピカピカの一年生になりました。まだ学校へ行く道をしっかり覚えられないので、お手伝いのお姉さんが一緒に連れて行ってくれます。お姉さんは、史朗くんの妹をおんぶして歩くのでした。妹の手には、とてもきれいな毬(まり)...
ペンギン鳥の歌

初級翻訳・ペンギン鳥の歌 第1話

森は雪につつまれて、あたり一面、真っ白になりました。高い、大きな枯れ木の上では、一羽のカラスがスピーカーをセットして、今、いっしょうけんめい、こんなことをしゃべっています。「あ、あ、あ、あ。ただいま、テスト中です」「あ、あ, あ、あ。ただい...
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