北原 白秋

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北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第13話

むしろ、わたしは今日現在の自分の未熟さを、誰よりも深く知っています。一つひとつの詩についても、その足りないところを細かく知りすぎているがゆえに、他の人の十倍もの苦しみをあえて引き受けようとは思いません。この本には、『水墨集』を出した後の、お...
北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第12話

あの老いた胡桃(くるみ)の梢(こずえ)にあり、美しく光る白樺の枝々にある。枯れた山、枯れた野原、あちこちに見える沢水。まだ芯から深く温まるわけではないけれど、何かを酔わせるものがある。安らかで、いい落ち着きがあるのだ。こうして一日を過ごす。...
北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第11話

えいや、ほう、ぽん、えいや、こころばかりで敲つのやら。花は白菊、ませの菊、にほひばかりの秋じややら。鵜匠長良川の鵜匠の家系、山下幹司君へ。篝火(かがりび)が朱色に燃えあがる、君こそは、誇り高き鵜匠だ。濡れてしずくを滴らせる腰蓑と、古風な折烏...
北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第10話

鴨はまかせる。大きいうねりに座って、盛りあがる、盛りあがる、ぶ厚い底力に揺られる。鴨は開けている、穏やかな眼を。劫初(ごうしょ)からの海、韃靼の寒空。しかも、夏、夏、夏。どちらを向いても、うねりの、絶え間もないうねりの、暗い、光らない、おそ...
北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第9話

鴨だ。鴨がすべりあがる。おお、大きいうねりの窪みから――深い深い底の奥から、もこりもこりと盛りあがる、ぶ厚い波。そのうねりの坂へさしかかって、揺られ、揺られて。鴨の、なんと鮮やかな、黄色い嘴(くちばし)だこと。横を向いて、留まると、高まりき...
北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第8話

たうたうと波騒ぐ汐首岬、鮮やかだ、雑草の青、さみどり。ああ、本当に、いにしえのアイヌ・モシリ、  語りかけよ、今この岬の岬たちよ。曇り日のオホーツク海光はない、燻(いぶ)し色の空には日の在処が、ただ明るいだけ。輝くことなく、頂だけが明るい、...
北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第7話

おぼろげだ、思い返せば、それは眉に立つ陽炎(かげろう)のようだ。子どもたちはみんな鵲を追いかけ、鵲と一緒に影を見失ってしまう。子の鵲飛ぶ一羽、子どもの鵲。蓮の田の空を、いま。脚をちぢめて飛ぶものだから、蓮の花が白く見え、露の音まで白く見え、...
北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第6話

ちぇ、やめろ、J・O・A・K(ラジオ局)。蝶々がジャズを踊って飛んでいく。【蕚(うてな)の花】蕚の花が雨に浮かんでいる。鳴り響く、ラヂオのニュース、フランスのお金が値下がりし、パリで暴動が起きる、ポアンカレーがまた政治の舞台に戻ってくるのか...
北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第5話

風を祭ろう、海港のブイに祭ろう。風を祭ろう、浴場の旗に祭ろう。風を祭ろう、鉄工の腕に祭ろう。風を祭ろう、薄衣をまとった女の体に祭ろう。風を祭ろう、ありとあらゆる花に祭ろう。【鋼鉄風景】神は在る、鉄塔の碍子(がいし)の中に。神は在る、クレーン...
北原 白秋

初級翻訳・海豹と雲 第4話

食むんだ、白鷺、沼のぬしよ、あのさざなみの揺り波を。漁師は貧しくて、むなしく水になげき合った。【影】月のひかりはそよかぜの風並みを遠く楽しむ。月のひかりはさざなみにさらに満ちた、金の亀。放て、心を、ひらひらと、空と水とのなまめきに。はかなく...
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