瓜の涙

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泉 鏡花

初級翻訳・瓜の涙 第5話

湧き水は、誰も知らないこんな静かな時にこそ、いっそう高く、清らかに、そして勢いよく湧き出し、ほとばしっているのだろう。大きなハエがブーンと音を立てて飛んできた。そこへ――       六あんな体の調子では、蝶よりもハエのほうが集まってくるの...
泉 鏡花

初級翻訳・瓜の涙 第4話

その日は何事もなかったかのように、もとの墓地を抜けて帰ったけれど、まるで何かに憑かれたようになって、夜はそのおなじ景色を夢に見た。夢の中では、桜の代わりに桃の梢の上に、妙見宮の屋根の下にそれはそれは明るく明けの明星が輝いていた。翌日も、また...
泉 鏡花

初級翻訳・瓜の涙 第3話

紫色の雲が、大きなお寺の屋根のてっぺんにかかるのは、すごく徳の高い仏教の善男善女でなければ拝むことができない。けれど、この真っ赤な霞はその時期にここを通るイワシ売りやサバ売りなら、誰一人として知らない者はいないほど有名だった。奥深い山には、...
泉 鏡花

初級翻訳・瓜の涙 第2話

お金がない様子なのだから、マッチ一本でさえ粗末にできないというのはわけが分かるけれど、使い終わった焦げた軸をいったい何に使うというのだろう…… いやきっと、この年頃の若者には珍しくない「歴史の英雄(義経)を大切に思う気持ち」が、その由緒ある...
泉 鏡花

初級翻訳・瓜の涙 第1話

一 年はまだ若いのに、よっぽどこのたばこが好きなのだろう、実に美味しそうにたばこを吸いつつ、――しかし、はげしい暑さに参ってしまい、体もすっかり疲れた様子で、炎天下の並木の下でひと休みしている学生がいる。 まだ二十歳そこそこだろうか、久留米...
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