竜と虎

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山本 周五郎

初級翻訳・竜と虎 第4話

「いいえ、まだですわ。矢矧川(やはぎがわ)の工事が終わりましたら、内祝言をいたしますの。もう間もなくだと申しますけれど」「仲人は誰でした。内田殿でしたか」「……西郡さま」幸枝は青ざめた顔をしっかりと上げました。「貴方さまは、初めにこの縁談を...
山本 周五郎

初級翻訳・竜と虎 第3話

「自分からは言いにくいから、拙者に是非とも取り次いでくれと頼まれ、よんどころなくお願いに上がったのですが、承知していただけませんでしょうか」「すると、嫁に欲しいという当人は誰だ」「八木次郎太でございます」市郎兵衛の顔が、みるみるうちに赤くな...
山本 周五郎

初級翻訳・竜と虎 第2話

でも、本当はお頼りにしているのですけれど」幸枝は慎ましく言いながら、至を見上げた。少しも憂いのない、初夏の空のような明るい瞳だった。しかもその明るい瞳の奥には、かなり以前から至にだけ訴えかけていた淡い感情が、ためらいがちに動き始めていた。「...
山本 周五郎

初級翻訳・竜と虎 第1話

一「気が合わない」というのは、本当に不思議なものだ。西郡至(にしごおり いたる)は、学問も優秀で、岡崎藩の中でも剣術の腕前は指折りだった。家柄も三百石の書院番という立派なもので、見た目も人目を引くし、人付き合いが悪いわけでもない。それどころ...
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