芥川 竜之介

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芥川 竜之介

初級翻訳・野呂松人形 第2話

僕はその人形を見て、改めて「異国人(エトランジェ)」のような、どこかよそよそしい不思議な感覚を深く抱いた。アナトール・フランスの書いたものに、こんな一節がある。――時代と場所の制限を離れた美なんてものは、どこにも存在しない。自分が芸術作品を...
芥川 竜之介

初級翻訳・野呂松人形 第1話

野呂松人形を使ってみないかという招待が、突然届いた。招待してくれたのは、面識のない人だった。けれど、手紙の文面から、その人が僕の友人の知り合いだということがわかった。「K氏も御出の事と存じ候えば」などと書いてある。Kが僕の友人であることは、...
芥川 竜之介

初級翻訳・酒虫 第3話

眼にはいるのは、それだけであるが、同時に、劉の想像には、その瓶のうす暗い内部に、黄金のやうな色をした酒のなみ/\と湛へてゐる容子が、浮んで来た。思はず、ひびの出来た唇を、乾いた舌で舐めまはして見たが、唾の湧く気色は、更にない。汗さへ今では、...
芥川 竜之介

初級翻訳・酒虫 第2話

見ると、背が高く、まるで紫石稜(しせきりょう:美しい宝石のような石)のような鋭い目を光らせた、見慣れない格好のお坊さんである。黄色の法衣を着て、その肩には、クルクルと縮れた長い髪をうるさそうに垂らしている。その男は、赤い柄のついたハエたたき...
芥川 竜之介

初級翻訳・酒虫 第1話

一 近年にないすさまじい暑さである。どこを見渡しても、泥で固めた家々の屋根瓦が、鉛のようにどんよりと日の光を照らし返し、その下にかけられたツバメの巣さえ、この様子では中にいるヒナや卵がそのまま蒸し焼きになってしまうのではないかと思えるほどだ...
芋粥

初級翻訳・芋粥 第6話

最後にその山の芋が一つも筵の上に見えなくなった時、芋の匂いと甘葛の匂いを含んだ幾筋もの湯気の柱が、もうもうと晴れた朝の空へ舞い上がっていくのを見ました。これを目の当たりにした彼が、今、提に入れられた芋粥を前にして、まだ口をつける前から満腹を...
芋粥

初級翻訳・芋粥 第5話

明日、巳の刻(午前十時頃)に高島のあたりまで男どもを迎えにやり、鞍を置いた馬を二頭、引かせて参れ』と、こうおっしゃるのです」「それはまた、珍しいことでございますな」五位は利仁の顔と家来の顔とを、いかにももっともらしく見比べながら、両方に満足...
芋粥

初級翻訳・芋粥 第4話

東山だと思えば山科、山科だと思えば三井寺。あげくが越前の敦賀とは、一体どういうことでございますか。最初からそうおっしゃるなら、下人なりとも連れてまいりましたものを。――敦賀とは、とんでもない」五位は、今にも泣き出しそうな顔で、ぶつぶつとつぶ...
芋粥

初級翻訳・芋粥 第3話

彼はその言葉を聞くと、慌てて答えました。「いや……ありがとうございます」このやり取りを聞いていた者たちは、一斉に吹き出しました。「いや……ありがとうございます」――こう言って、五位の返事を真似る者までいます。橙(だいだい)や黄色い橘を盛った...
芋粥

初級翻訳・芋粥 第2話

水干はまだ、肩が少し落ちていて、紐の色が怪しくなっている程度ですが、指貫のほうは、裾(すそ)の傷み方がひどいものでした。その指貫の中から、下着もはかずに細い足が出ているのを見ると、口の悪い同僚でなくとも、痩せた公卿(くぎょう)の車を引いてい...
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