夏目 漱石

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夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第10話

「帆を張れば、舟も行くようだ。帆柱には、何を掲げて……」「赤だっ」とウィリアムは盾の中に向かって叫ぶ。「白い帆が山影を横切って、岸へと近づいてくる。」「三本の帆柱の左右はどうなっているか分からないが、中央の帆柱の上に春風を受けてたなびいてい...
夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第9話

ただ、視線を遠くへ放てば、木の幹が近づいたり遠ざかったりしながら黒く並ぶ間から、澄み渡った秋の空が鏡のように光っており、それは心洗われる眺めだ。時折、その鏡のような空を、蜘蛛の糸が流れていく様子まで横から見て取れる。地面は一面の苔に覆われて...
夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第8話

城を覆う空の一部が、櫓を中心として大きな赤い円を描き、その円は不規則に海の方へと動いていく。火の粉を梨地に散らした蒔絵(まきえ)のように、一瞬の休みもなく、あるいは消え、あるいは輝きながら、動いていく円の内側は、一点として止まっている場所が...
夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第7話

三日、二日と過ぎ、いよいよ戦の日を迎えたときは、手を動かす暇すらないほど、あわただしく時間が襲いかかってくるように感じられた。「飛ばせ!」とシワルドがウィリアムを振り返って叫ぶ。並んで走る馬のくつわの間から鼻息が荒く立ち上がり、二人の兜が、...
夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第6話

「鳴かぬ烏(からす)が闇に飲み込まれるまではな……」と言って、六尺一寸の大きな体を伸ばし、自分の胸板を叩いた。「この霧深い国を去るつもりはないのか。あの金色の髪の持ち主と一緒なら、満更(まんざら)嫌な話でもないだろう?」シワルドは丸テーブル...
夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第5話

手のひらに乗せて眺めていたかと思うと、今度はそれを丁寧に、部屋の隅に置いてある三本脚の丸いテーブルの上に置いた。ウィリアムはもう一度懐に手を入れ、胸の隠しから何か書き付けのようなものを取り出した。扉のところまで行って、横に差し込んである鉄の...
夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第4話

しかし、クララの前にひざまずく機会は、もう二度とないだろう。あるときは野に出て、タンポポの綿毛を吹き比べた。花が散ったあとに残る、柔らかい毛を束ねたような透明な球をとって、ふっと吹く。残った種の数で占いをするのだ。「願いが叶うかな、叶わない...
夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第3話

幅広の刃の鍔のすぐ下に、「pro gloria et patria(名誉と祖国のために)」という銘が刻まれている。水を打ったように静まり返った室内で、ルーファスが抜きかけた剣を鞘に収める音だけが、高く響いた。これ以来、両家の交流は長く途絶え...
夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第2話

「ゴーゴンを見た者は石に変わる」とは当時のことわざですが、この盾をじっと見つめる者は誰しも、その言葉がただの例えではないことを悟るでしょう。盾には傷があります。右の肩から左へ斜めに切りつけた、刀の跡が見えるのです。真珠を並べたような鋲の一つ...
夏目 漱石

初級翻訳・幻影の盾 第1話

「一心不乱」という言葉を、目には見えない怪力の力を借りて、霧のようにぼんやりとした背景の中に浮かび上がらせたい――そんな思いから、この物語を考えつきました。この趣向を日本の物語として書かなかったのは、このテーマとわが国の風俗がうまく溶け合わ...
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