堀 辰雄

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堀 辰雄

初級翻訳・豆自伝 第1話

私が四歳の五月の端午の節句のとき、お隣から出た火事で、私の五月のぼりも五月人形もみんな燃えてしまった。その火事のあまりの恐ろしさが、私にものすごく強いショックを与えたせいで、それまでのいろんな記憶が、跡形もなく消えてしまったらしい。子供のこ...
堀 辰雄

初級翻訳・水族館 第5話

そしてついに、この悲劇の最後としては、少しばかり残酷な出来事が起きてしまいました。それは、集まった人混みの中のひとりが、どこから持ってきたのか、突然、花火のようなものを打ち上げたのです。おや、花火かな? 最初は誰もがそう思いましたが、しかし...
堀 辰雄

初級翻訳・水族館 第4話

そうこうするうちに、私達が奇妙で見知らぬ一画に迷い込んでしまったことに気づきました。私達の前方には、全面ガラス張りの、異様に大きな建物がそびえ立っていました。しかも、そのガラスはほとんど全部割れているのです。その穴だらけの建物の向こう側には...
堀 辰雄

初級翻訳・水族館 第3話

そして隣の部屋から聞こえてくる奇妙な物音の中で、苦しみに押しつぶされそうになりながら、私への手紙を書き綴ったのでした。――しかし私には、彼に対してどんな助言もしてやることができませんでした。彼の物語が終わった後、私たちはただ黙り込んでいまし...
堀 辰雄

初級翻訳・水族館 第2話

そこで私は、非常に疲れていてもう一歩も動きたくないほどでしたが、激しい好奇心に駆られて、再び家を出たのです。私の家は向島にありました。向島から駒形までは歩いて行くよりほかありません。それに、その方が一番早かったのです。私は、人の気配のない川...
堀 辰雄

初級翻訳・水族館 第1話

1 みなさん、このなんとも説明しがたい「浅草公園」という場所の魅力を、できるだけ完璧に理解してもらうためには、私が知っているかぎりの浅草についての千もの事実を並べるよりも、私の空想の中に生まれた一つの不思議な物語を語る方が、ずっといい方法だ...
堀 辰雄

初級翻訳・日時計の天使 第2話

)それからリルケは、ついにパリを離れてイタリアへ行き、ヴィアレッジョに二ヶ月近く滞在してから、ようやく妻や友だちの待つヴォルプスヴェデへと帰っていった。そして今度は妻のクララといっしょに再びイタリアへ行き、ローマに半年ほど住んでいたんだけど...
堀 辰雄

初級翻訳・日時計の天使 第1話

一九〇六年一月二十五日、ライネル・マリア・リルケは、ロダン先生ご夫婦といっしょに、シャルトル大聖堂を見学しに行きました。そのシャルトルへの旅の様子は、リルケが妻のクララに向けて、その日のうちにシャルトルで書いた手紙と、その翌日にパリから出し...
四葉の苜蓿

初級翻訳・四葉の苜蓿 第3話

その曲が長い余韻のうちに終わろうとする刹那、突然、奇妙な音が混じりました。 それは聴衆には何がなし、一種異様な戦慄を与えました。 …… が、次の瞬間には、何事もなかったかのように聴衆は拍手し出していました。 少女は何か少し呆気にとられたよう...
四葉の苜蓿

初級翻訳・四葉の苜蓿 第2話

ですが、人一倍勘の悪い私などには、そんな幸福の合図なんて気づきそうもありません。 そういえば、四葉のクローバーを探すのが上手な少女を昔知っていたっけ……。その少女は若くして亡くなりました。 しかし、その早すぎる死でさえ、彼女がそれほど四葉の...
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