永井 荷風

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永井 荷風

初級翻訳・町中の月 第2話

稲荷橋をわたると、斜めに向こうへ電車の通る南高橋がかかっている。電車通りの明かりを避けて、川岸伝いに歩みを進めると、この辺りは倉庫と運送問屋のほかにほとんどお店はないので、日が暮れると昼間の騒がしさとは打って変わって人通りもなく、トラックな...
永井 荷風

初級翻訳・町中の月 第1話

明かりがともり始めるころ、銀座・尾張町の交差点で電車を降りると、夕方の澄みきった空は、まっすぐな広い道路のおかげで遮るものが何もないため、ときどき、建物を見下ろす空のてっぺんに、ほんのり黄色みがかった大きなお月様がぽっかりと浮かんでいるのを...
永井 荷風

初級翻訳・浅草むかしばなし 第1話

浅草公園の昔話といっても、あまりに古いことは大抵忘れてしまいましたから、ここではお話しすることができません。十二階の塔が初めて建てられた時や、六区にアメリカの南北戦争を再現したパノラマ館ができたことも、見に行った記憶はあるのですが、はっきり...
榎物語

初級翻訳・榎物語 第3話

これより前、私はあの百両の大金を、伊豆の湯治場を遊び回った際にも、わずか十両ほどしか使いませんでした。ほとんどそのまま所持していたため、この寺に来た際にも隠し場所に困っていましたが、今も寺の表惣門の脇に立っている大きな榎の木に目をつけました...
榎物語

初級翻訳・榎物語 第2話

そうしているうちに夜はすっかり明け、辺りの寺々から鉦(かね)や木魚の音がしきりに聞こえてきます。街道筋と思われる場所に出ると、百姓たちが大声で話をしながら野菜を積んだ荷車を引いていく姿が見えました。これでようやく二本榎から伊皿子(いさらご)...
榎物語

初級翻訳・榎物語 第1話

東京の郊外、荏原郡(えばらぐん)世田ヶ谷町に、「満行寺(まんぎょうじ)」という小さなお寺があります。そのお寺には、今から三、四代前の住職が亡くなる時に、「わしが死んでも五十年の時が経つまでは、絶対に開けてはならない」と言い残したと伝えられる...
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