宮本 百合子

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宮本 百合子

初級翻訳・鼠と鳩麦 第1話

友達と火鉢に向かって手をかざしていたときのことです。友達がふっと何かに気づいたように、こう言いました。「ねえ、ちょっとこれ見て。あなたの爪にこんなものがあるわよ?」左手の中指の爪を指さすので、のぞき込んでみると、薄いピンク色の爪の真ん中あた...
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初級翻訳・黒い驢馬と白い山羊 第1話

八月の十五日は晴れた夜が多いものですが、九月の十五夜は、いつも曇りがちです。でも今年は珍しく雲ひとつない快晴で、令子も縁側に座って月見を楽しみました。澄み切って輝く、ゆったりとした大きな月が、ポプラの木の梢の上にのぼると、月明かりにうっとり...
宮本 百合子

初級翻訳・風に乗って来るコロポックル 第7話

しかし、その親切の裏に何か別の目的が隠れているような気がして、イレンカトムは心が穏やかではありませんでした。ちょうど豊がいない間にこうなってしまったことをいいことに、何かを狙っているのではないだろうか、と思うのです。それに実際、十人いれば十...
宮本 百合子

初級翻訳・風に乗って来るコロポックル 第6話

そんな仕打ちをされながらも、イレンカトムはただ声と気配を相手に、怒ったり怒鳴ったりするだけでした。理屈を言って追い払おうとしても、相手はなかなか負けずにやり返してきます。こうなっては、彼も何とかしなければいられません。一生懸命になって、これ...
宮本 百合子

初級翻訳・風に乗って来るコロポックル 第5話

知らず知らずのうちにブツブツと独り言をこぼしながら、あちらこちらと歩き回る。そして歩き回りながら、眠りもしないでこんなことをしている自分は普通ではないな、と思い始める。一体どうしてこうなってしまったのだろう?彼は炉の火をかき立てて明るくした...
宮本 百合子

初級翻訳・風に乗って来るコロポックル 第4話

もうかなり長い間、同じ狭苦しい町で、同じような人間の顔ばかり見て、同じような道楽をしていても、何の刺激もないからです。場所が変われば、また違った面白い目にも遭うだろう。彼の行動の第一の動機は、ただこれ一つなのです。けれども、彼の心は、単純に...
宮本 百合子

初級翻訳・風に乗って来るコロポックル 第3話

彼にはどうしても、ペケレマットの最期の願いによって、豊が自分の元へ授けられたようにしか思えないのです。そして、今を生きる自分と、霊となったペケレマットとの愛情が、ただ豊という存在の上にだけ注がれ合い、あんなにも美しく生まれてきたのではないか...
宮本 百合子

初級翻訳・風に乗って来るコロポックル 第2話

笑うたびにキラキラと輝く白い歯、丸くて小さな帽子の下で、すばしっこく動く目の素晴らしさ。見ているうちに馬車はだんだんと近づいてきます。そして、彼の立っているところから、一、二町(約100〜200メートル)の距離まで近づいたときのことです。そ...
宮本 百合子

初級翻訳・風に乗って来るコロポックル 第1話

一 彼の名は、イレンカトムといった。「公平な裁き手」という意味を持つその名は、昔から部落でもかなりの権威ある家系にのみ付けられる特別なものだった。だからこそ、彼はその名を受け継ぐと同時に、代々守り抜かれてきた大切な財産もまるごと引き継ぐこと...
宮本 百合子

初級翻訳・電車の見えない電車通り 第3話

なるほど、車庫は白服の男たちでいっぱいで、その周りはなめらかに静まり返っており、ストライキ団は職場以外のそれぞれの場所に固まって気勢を上げています。その状態を、見事な双方の統制と言うのかもしれません。しかし、どの電車の内側や停留場にも貼られ...
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