田中 貢太郎

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田中 貢太郎

初級翻訳・魔王物語 第5話

「……ならば、正太夫の遺体はどこにあるのです?」権八は平太郎の手をしっかりと掴んだまま、左右を見回しました。「貴殿の背後にある。私は友を殺してしまったのだ、もう生きてはおられん」権八は首を曲げて背後を見ました。そこには、何も見えませんでした...
田中 貢太郎

初級翻訳・魔王物語 第4話

むっくり起き上がるやいなや、犬が走るようにして逃げ帰りました。翌日、作平は源之丞の家へ行き、起きてきたばかりの源之丞の顔を見るなり言いました。「昨夜はありがとうございました。あの時拝借した提灯は、松原で大入道に出くわしてしまい、捨てて帰って...
田中 貢太郎

初級翻訳・魔王物語 第3話

新八郎は恐ろしくなり、布団の中にもぐり込んで朝まで震えていました。翌日、平太郎は新八郎を送っていき、一日そこで遊んで夕方になって帰ってみると、近所の若い男たちが五、六人来ていて、「今晩は、お相手をしてやろうと思って来たのだ」と言いました。平...
田中 貢太郎

初級翻訳・魔王物語 第2話

「おい、どうした、どうした」と声をかけると、僕はやっと我に返ったように起き上がり、「夢でございましたか。今、大入道が飛び込んできて、私の上に乗っかってぐいぐい押しつけてきたので、息ができなくなりました」と言って、まだ恐ろしそうにきょろきょろ...
田中 貢太郎

初級翻訳・魔王物語 第1話

一日本には怪談がたくさんありますが、その多くは仏教の教えに基づいた「因果応報」の物語か、さもなければ狐や狸が化かすような妖怪話ばかりで、独立した悪魔が登場するような物語はあまり見かけません。そんな中で、備後国(びんごのくに)に伝わる「魔王」...
田中 貢太郎

初級翻訳・青い紐 第3話

ここへ何をしに来たんだ」哲郎は、女に連れられて階下の人に知られないようにこっそり来たことを思い出しました。彼はこうなれば、女に事情を説明してもらうほかに手立てはないと考えました。彼は起き上がってあたりを見回しましたが、女の姿はありませんでし...
田中 貢太郎

初級翻訳・青い紐 第2話

その時、背後からやってきて、彼の左側をすれすれに追い越していこうとする影がありました。それは、いかにも若々しく小柄な女でした。女は振り返るように、ちらりと白い顔を彼に見せました。女は長い襟巻(マフラー)をしていました。哲郎はすぐさま、この女...
田中 貢太郎

初級翻訳・青い紐 第1話

桃山哲郎は、銀座の尾張町の角にあるカフェでウイスキーを飲んでいました。彼は有楽町の線路沿いにある別のカフェで開かれた仲間との集まりで、まだ飲み足りない分をここで満たしているところでした。もう客足もまばらで、店内のストーブのすぐそばにあるテー...
田中 貢太郎

初級翻訳・追っかけて来る飛行機 第1話

それは昭和六年の夏の夜のことであった。大連(だいれん)で夜間飛行の練習をしていたときのことだ。計器盤(けいきばん)のあたりを照らすライトの光で、その黒く塗られた計器盤のガラスに、自分が乗っている飛行機のうしろから、もう一台の飛行機が同じ方向...
田中 貢太郎

初級翻訳・車屋の小供 第1話

明治時代のまだはじめの頃、せなかに武者の絵がかっこよく描かれた人力車が、東京のまち中を元気に走り回っていたころのお話です。 その人力車をひいている車夫(しゃふ)の中に、奥さんを亡くしてしまい、足手まといになってしまう幼い男の子を隣の家に預け...
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