火の子供

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原 民喜

初級翻訳・火の子供 第5話

……だが、友は燃料も乏しい住居で、雑草を食べて飢えをしのぎながら、ついにこの友は惨めさの底で、今、新しい一人の子供を得たのだ。新しい人間の子供を……。風景は僕を噛む 僕は風景を噛むああ 噛みあう二つの お前と僕僕は日没前の時刻が、僕をここへ...
原 民喜

初級翻訳・火の子供 第4話

だから、もし彼が死んでしまえば、人類の生存以来続いてきた一つの点線が、彼のところでパタリと途切れてしまうことになる。この空白の想定は、彼を何か慄然とさせるのだった。体験することに憧れていた少年の僕も、その先には底なしの深い穴がぽっかりと口を...
原 民喜

初級翻訳・火の子供 第3話

しんとした、静かで狭いお部屋だった。少年だった僕には、そのお部屋の上の屋根をパッとめくった先に広がっている、果てしない宇宙の世界が、胸の奥にじーんと響いてくるような気がした。あの頃からすでに、何か不思議なものが僕を引きつけて、僕のことをのぞ...
原 民喜

初級翻訳・火の子供 第2話

僕は、あの原爆の光線で焼かれて死んだ人間たちが、人間というよりは塑像(そぞう)か何かのようで、無機質なもののような神秘な表情をしていたのを思い出す。めちゃくちゃに膨れ上がった肉塊の中から、紡錘形(ぼうすいけい)や円筒形が、無言で盛り上がって...
原 民喜

初級翻訳・火の子供 第1話

〈一九四九年 神田〉僕は通りがかりに、映画館の前にならぶ行列を眺めていた。水色の清楚なコートを着たお嬢さんの後ろ姿が、なんとなく僕の目に留まった。順番を待っている人の姿には、どうしても寂しさがつきまとうものだが、そのお嬢さんの肩のあたりにも...
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