山彦乙女

スポンサーリンク
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第51話

……ふたりの目の前はすぐに崖になっていて、その下には深い森に覆われた谷(そこはすっぽりと霧に包まれていた)が広がっていた。谷の向こう側には、甲斐駒ヶ岳の連峰の一部が、思いのほかものすごく間近に迫ってそびえ立っていた。あまりの雄大さに、彼は少...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第50話

花世はすっかり気まずそうな様子で、話題をあちこちにそらしながら、自分で持ってきたお弁当の包みを開き、もちろん半之助にも無理やり分け与えながらきれいに平らげてしまった。そして、ついにあきらめたのだろう、雨のことには一切触れず、十時すぎに半之助...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第49話

村人たちは口数が少なく、無表情で、おまけにすごく不愛想に見える。それは長い間、ほかの地域と関わらない閉ざされた生活をしてきたからだろう。だけど気持ちはとてもピュアで、細かいところまでよく気がつく優しい心を持っていた。それこそ針や糸の心配まで...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第48話

「そこもとは一つ木の安倍の縁者だろう、南部坂の昌雲寺で会ったことがあるぞ」「それがどうした」「刀をひけ、われわれは安倍の友人だ」「寄るな」千之助は叫び返した、「安倍には恨みがある、きさまたちのしんしゃくも受けぬ、抜け」抜け、と叫んだとき、千...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第47話

木の下が真っ暗になるほどびっしりと生い茂り、そのあいだにヤマザクラの若い木だろうか、恥じらうように白く花を咲かせかけなのが、二、三本見えた。「いったいどうしたんです、何がそんなにおかしいんですか」「――水がね、濁っている」平四郎は口ごもった...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第46話

あたしはこの伏岩(ふしいわ)といっしょに死んで、恐ろしい亡霊になって、徳川の天下を呪い殺してやるんだから!」「そんなこと言わないで、お姉さま!」二人はその場所までやって来ていた。松明を手にした姉の袖にしがみつき(姉妹はまだ天女のような羽衣の...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第45話

古い死体だし、顔が変わってしまっているのではないか?いや、この乾いた空気と地質のせいか、驚くほど大きな変化はないようだった。もちろん、叔父とは十二歳のときに会ったきりだったので、記憶はかなりあいまいだ。たとえその顔が少しも変わっていなかった...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第44話

手も足も、ちぎれそうなくらいに疲れ切っていた。激しく息をきらし、胸が締め付けられるような心臓の鼓動に苦しみながら、半之助はまもなく、その急な坂道を登り切った。すると、いきなり目の前に、雪の宮殿のような景色が現れた。登り切ったその場所は、もち...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第43話

そのとき、松のたいまつを持った武者たちが林の中に追い込んできて、大声で何かおっかないことを叫びました。すると、あの不気味なヒューストンといううなり声をあげて、彼の左右へと、次から次へ矢が飛んできたのです。斜面の傾斜はとても急で、若い木がたく...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第42話

約半刻まえ、彼は甘利沢の下の山道で、この武者たちの深夜の行列を眺め、ひそかにそのあとを跟けて来て、杉の樹立の蔭からこの珍しい儀式を見まもっていたのである。……腹巻を着けた老人によって神殿の扉が開かれ、神燈がともされ、祝詞があげられた。半之助...
スポンサーリンク