山彦乙女

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山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第41話

そこから流れ落ちる水が合流して甘利沢となり、釜無川へと注いでいくのですが、その三つの谷の中で一番北側の森の中に、彼は自分の拠点(居どころ)を定めました。斜面が急で二つの山肌にはさまれているため、森の幅はあまり広くありません。それに二百歩ほど...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第40話

しかし、すぐに笑いながら答えました。「それは貴女が自分で言い出したことでしょう、私にはそんな人は一人もいませんよ」「あら、そうだったかしら」花世はふと首をかしげ、自分の言葉に気づいたのか、恥ずかしそうにふっと微笑んで納得しました。「そうだわ...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第39話

ちゃんと聞いていなかったのね?」「聞いていましたよ」「じゃあ、あなたもう甘利山に登ったの?」半之助は首を横に振りました。「あらいやだ! じゃあ、ここへ来てからどこにも行かないで、ずっとじっとこうしていたのね? なにかしら、ものすごく大変な怠...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第38話

「ほっ、ほう、ほっ、ほう」かなり遠いらしい、郭公に似ているが、よく聞くと女性の声である。それは、つぎつぎにやまびこを呼んで、一種の幽玄な反響の尾を、ながくひいた。半之助はちょっと立ち停った。しかしもう慣れているとみえて、両手で口を囲って、「...
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初級翻訳・山彦乙女 第37話

「荷駄は通してよい、静まれ!」その声は驚くほどよく通った。お互いに殺意を込めて刀を抜き合い、まさに激しい戦いが始まろうかという、まさにその一番危ういタイミングだった。平四郎の声に応じるように、駕籠の前に立っていた登世もまた、手にした小さな扇...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第36話

柳沢侯は元禄十一年にお手本となる老中首席には任じられたけれど、決して大老ではないはずだ。いつ大老に任命されたのか、教えてもらおうか」「それは、そんなことは……」来太の喉がごくりと鳴った。「つまり、柳沢侯は、将軍家の一門に連なり、お名前をいた...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第35話

関所の番人である「関守(せきもり)」は小橋甚兵衛(こばしじんべえ)という与力で、この人と激しく言い合っているのは、次高来太(つぎたからいた)だった。「これは、これは」杉戸のすき間からのぞき見て、主馬は低く驚きの声をあげた。「みじん流の先生が...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第34話

廊下を足音が来て停り、障子の向うで「お客さまで、ございます」と女中の云うのが聞えた。「新町さまと仰しゃいます」「ああ、とおして呉れ」 平四郎は、筆の尖を唇で揃えながら答えた。すぐに青山主馬が入って来た。新町とは彼の仮の名であろう、羽折も袴も...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第33話

かんば沢へ入っていったというのは確からしいものの、そのほかのことはすべて謎のままで、遺体さえも見つけることができなかったのです。「何かがそこにあったんだ」半之助はこう呟きながら、雨雲が低く垂れ込めた空を見上げました。「しかも、それはただごと...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第32話

剪定(せんてい)をしない果物の木が、実を成るがままに成らせた結果、その重さに耐えきれず自分で折れてしまうように、人間が作り上げた社会も、その矛盾と人間離れした仕組みのせいで、このままでは破滅するまで進んでしまうに違いない。――人間として、本...
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