森 鴎外

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山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第11話

鳥だって命あるものだから、早く早く逃げなさい、私が追いかけなくてもいいように」正道はうっとりとしたようになって、この言葉にすっかり聞きほれてしまいました。そのうち、体の内側が煮えかえるように熱くなり、まるで獣のような叫び声が口から飛び出しそ...
山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第10話

山城の朱雀野(すざくの)まで来ると、律師は権現堂(ごんげんどう)でちょっと休み、厨子王に別れを告げました。「お前の身を守ってくださるご本尊を大事にして行け。お父上やお母上の消息も、きっと分かるはずだ」そう言い聞かせると、律師はクルリと踵を返...
山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第9話

泉が湧き出ているところまで来ると、姉は背負い子(しょいこ)に添えてあった木の椀を取り出し、冷たい清水を汲んだ。「これがお前の新しい門出を祝うお酒だよ」そう言って一口飲んでから、それを弟に差し出した。弟はその椀の水をゴクッと飲み干した。「それ...
山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第8話

ただ手を引き合っている手に、ぐっと力を込めるだけである。これから山に登ろうとする場所に、大きな沼があった。沼のほとりには、去年見たときと同じように、枯れた葦(あし)が縦横に乱れて生い茂っていたが、道端の草には黄ばんだ葉の合間に、もう青い新芽...
山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第7話

三日が過ぎると、また家の中での通常の仕事が始まりました。安寿は今日も糸を紡いでいます。厨子王は、もくもくと藁(わら)を叩いて柔らかくしていました。もうすっかり夜になって小萩がやってきても、手伝ってもらう必要がないほど、安寿は上手に糸車を回せ...
山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第6話

全部、出まかせのたわ言でございます!」すると厨子王も言いました。「姉えさんの言う通りです。いつでも二人で、そんな『できないこと』ばかり口にして、父母が恋しい気持ちをごまかしているだけなのです」三郎は二人の顔をじっと見比べ、しばらくの間黙り込...
山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第5話

ところどころ紫色の岩がむき出しになっている場所を通り過ぎて、やや広い平地に出ると、そこに雑木が生い茂っています。厨子王は雑木林の中にぽつんと立ち尽くし、あたりをきょろきょろと見回しました。しかし、柴をいったいどうやって刈ったらよいものか、し...
山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第4話

「水の底の魚や貝には聞こえても、あの女たちには聞こえやしないよ。女子どもなんて、佐渡へでも連れていって、粟(あわ)畑の鳥追いでもさせられるのがオチさ」姉の安寿と弟の厨子王は、しっかりと抱き合いながら泣き続けました。故郷を離れるときも、遠い旅...
山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第3話

しかし大夫はそれを押しとどめ、「宿代はもらわない、だがお金の入っていた大切な袋のほうは預かっておこう」と言いました。どんなものでも大切な貴重品は、宿に着けば宿の主人に、船に乗れば船の主人に預けるものなのだ、というのです。子どもたちの母親は、...
山椒大夫

初級翻訳・山椒大夫 第2話

万が一の用心のために持っていた食べ物もありました。女中はその食べ物を親子の前に置いて言いました。「ここでは焚き火をすることはできません。もし悪い人に見つかっては大変ですからね。あの塩浜の持ち主という人の家まで行って、お湯をもらってまいりまし...
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