金魚撩乱

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岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第14話

ゆらりと離れては、また開く。大きさは、両手の親指と人差し指で大きく囲んだくらいの、白牡丹の花ほどもありましょうか。それが、一匹の金魚だったのです。その白牡丹のような薄絹のひれには、さらにスミレ色、朱色、藤色、薄青などの模様があり、さらに墨色...
岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第13話

昭和七年の晩秋、京浜地方に大暴風雨があり、東京市内は坪当たり三石一斗という記録的な雨量で、谷窪の大溝も溢れ出し、せっかく仕立て上げた種金魚の片割れを流してしまいました。同じく昭和十年の秋の豪雨は、坪当たり一石三斗で、この時もほとんど流しかけ...
岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第12話

「何も悪いことはありませんけれど、谷窪の家の人たちから見えるでしょう。あの人はまだ独身なんですもの」「金魚の技師の復一君のことかね」「そうです」すると夫は少し興奮した様子で、軽蔑するように言いました。「君もその人と結婚すればよかったんだろう...
岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第11話

翌年の花の季節が巡ってくると、雄魚たちの胸びれには、春の宵空のように潤んだ目のような「追星(おいぼし)」が現れた。すると魚たちの本能が、彼ら自身も抑えきれないような素振りを見せ始める。艦隊のように堂々とした隊列で泳ぎ回ったり、闘鶏のように互...
岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第10話

そればかりでなく、お願いしておきますが、僕には最高級の金魚を作る専門の仕事をさせてください。これなら、命と引き換えにするつもりでやりますから」「僕は妻もいりませんし、子孫を残す気もありません。素晴らしく豊麗な金魚の新種を創り出す――これが僕...
岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第9話

すでに七、八歳になっているため、中年を過ぎたような落ち着きがあり、その魅力は垢抜けていました。しばらく眺め入ったあと、復一はガラス鉢に元のように蓋を戻します。そして自分の席に戻るとき、先ほどキャリコが泳いでいたのと同じような体のひねり方を、...
岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第8話

そして実際は、わずかな期間で終わってしまった秀江との関係を、今はまだ続いているかのように誇張して手紙に書きながら、復一は自分がいよいよ真剣に真佐子との「戦い」を始めたのだと感じ、一人で興奮していたのです。真佐子にわずかでも女としての要素があ...
岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第7話

宵闇の中で、平らな砂浜の渚には、夜になるほど再び巻き起こるらしい白波が、遠近感を失って「ざーっ、ざーっ」と鳴る音とともに、復一の意識の境界線を揺らしました。明かりと暗闇の狭間にある、もうひとつの世界へ、復一は誘い込まれていくようでした。する...
岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第6話

種の存続を努めながら、売れ残った魚で、たいして生活力もなさそうな復一親子三人を、どうにか養ってきただけの「駄金魚」。そんなものを、何か実用的な木っ端か何かのようにしか思っていなかったのです。もっとも、復一の養父は中年の域に達していたからか、...
岡本 かの子

初級翻訳・金魚撩乱 第5話

いずれ二、三年のうちに普通に結婚して、順当にお母さんになっていくんでしょうね」「……結婚って、そんなに簡単なものじゃないだろう」「でも、世界中の人を調べて回るわけにはいかないし、考え通りの結婚なんて、そうそうどこにでもあるものじゃないでしょ...
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