初級翻訳・罪と罰 第134話

ドストエフスキー

今日この日まで、彼女が一思いに命を絶つことを思いとどまらせてきた力とは、いったい何なのだろう? 彼はそう考えた。
その時、初めて彼は悟ったのである。あの哀れな幼いみなしごたちや、半狂乱になって頭を壁に打ちつけるような、あの惨めな肺病やみのカチェリーナが、彼女にとってどれほど大きな存在であるかを。

とはいえ、これだけの気性を備え、それなりに教育も受けているソーニャが、今のままの生活に一生甘んじられるはずがないことも、彼にははっきりと分かっていた。
なぜ彼女がこれほど長い間、このような境遇に耐えてこられたのか? もし自ら命を絶つことができないのだとしたら、どうして発狂せずにいられたのか?――それは彼にとって、どうしても解けない謎だった。
もちろん、ソーニャのような境遇は、不幸にして決して珍しい例外というわけではなく、社会の中で時折見かける現象である。
その点は彼も理解していた。
けれども、この偶然の運命と、彼女が受けたわずかな教育、そしてそれまで送ってきた人生を考えれば、この忌まわしい道へ足を踏み入れた第一歩で、彼女はとっくに壊れてしまってもおかしくなかったはずなのだ。

一体、何が彼女を引き止めているのだろう? まさか、そんな不潔な生活の味をしめたわけではあるまい! そんなことは決してない。この汚辱はただ機械的に彼女の体に触れただけで、真の淫らな心など、一滴も彼女の魂にはしみ込んでいない。
彼はそれを見抜いていた。
彼女は、今こうして彼の目の前に立っているではないか……。

『彼女がたどるべき道は三つある』と彼は考えた。
『川に身を投げるか、精神病院へ送られるか、それとも……最後の手段として、理性を麻痺させ心を石のように固め、淫らな世界へどっぷりと浸かってしまうかだ』
最後の想像は、彼にとって何よりも忌まわしいものだった。
しかし、彼はあまりに懐疑的で、若く、抽象的な考えに偏りがちだった。だからこそ、この最後の解決策、すなわち淫らな道へ落ちていくことこそが、何よりも起こりうる現実だと信じずにはいられなかった。

『だが、本当にそうだろうか』と彼は心の中で叫んだ。
『これまで心の純粋さを守り抜いてきたこの少女が、最後にはあの悪臭漂う汚らわしい穴の中へ、自分から進んで引きずり込まれていくというのか! 一体その緩やかな堕落は、すでに始まっているというのか? そして、今まで彼女がそれを我慢できていたのも、この悪行がそれほど嫌悪すべきものに思えなくなってきたからだというのか? いや、いや、そんなはずはない!』と、彼は先ほどソーニャが叫んだ言葉をなぞるように、心の中で叫んだ。

『いや、今まで彼女を死から引き止めていたのは、罪に対する恐れだ。そして、あの家族たちのことだ……。もし彼女がまだ狂っていないのだとしたら……いや、そもそも彼女が狂っていないなどと、誰が言える? 一体彼女に正常な判断力があるだろうか? まともな判断力がある人間が、さっきのような言葉を口にできるだろうか? 一体、彼女のような考え方ができるだろうか? 滅亡の深淵のふちに――自分を飲み込もうとしている臭い穴の上に立っていながら、危険を知らせる声を聞こうともせず、手を振って耳をふさいでいるなんてことが、果たしてできるだろうか? もしかしたら、何か奇跡でも起きるのを待っているのではあるまいか! いや、きっとそうに違いない。
果たしてこうした言動の数々は、発狂の兆候と言わずして何と言おうか?』

彼はしつこいまでに、この考えに固執しようとした。
この結論こそが、何よりも彼の心にしっくりと収まったからだ。
彼はさらに目を凝らし、彼女の顔を見つめた。
「それで、ソーニャ。お前は一心に神様にお祈りをしているのかい?」と彼は尋ねた。
ソーニャは黙っていた。
彼はその傍らに立ち、返事を待った。

「もし神様がいなかったら、わたしはどうなっていたでしょう?」
彼女は力を込め、早口でささやくと、急にきらきらと輝きだした瞳を彼に向け、その手をぎゅっと固く握りしめた。
『ああ、やはりそうだった!』と彼は思った。

「それで、神様はそのお礼に何をしてくださるんだい?」
彼はどこまでも追求するように尋ねた。
ソーニャは答えに困ったように、長い間黙り込んだ。
その弱々しい胸は、興奮のために激しく波打っていた。「どうか黙っててください! 聞かないでください! あなたにそんなことを尋ねる資格なんてありません!」
彼女は急にそう叫ぶと、鋭く、怒りに満ちた目つきで彼を射抜いた。
『やっぱりそうだったんだ! そうなんだ!』と、彼は執拗なまでに心の中でくり返した。
「神様が、なんでもみんなしてくださいます!」
彼女はふたたび目を伏せ、早口でそうささやいた。
『これだ、これが答えだ! この言葉こそが、彼女の謎を解く鍵なんだ!』
彼はむさぼるような好奇心を抱いて、じっと彼女を見つめながら、心の中でそう決めつけた。
新しく、不思議で、どこか病的な感情がこみ上げてくる。彼は、彼女の青白くやせこけた、骨ばった顔や、さっきまで激しい炎のように燃え立っていたかと思えば、今は厳格で力強い感情に輝いている、あのつつましやかな青い瞳をまじまじと見つめた。そして、憤りと激昂にまだかすかに震えている彼女の小柄な体を。
見れば見るほど、彼女のすべてが、彼には不思議で、まるで現実離れした存在のように思えてきた。
『狂信者だ。まさに狂信者だよ』彼は心の中でそう繰り返した。
その時、タンスの上に本が一冊置かれているのが目に入った。
部屋を歩き回るたびにずっと気になっていたのだが、彼はとうとうそれを手に取ってみた。
それはロシア語に翻訳された『新約聖書』だった。
古く、使い古されて皮の表紙がすっかり擦り切れている。
「これは、どこで手に入れたんだ?」
彼は部屋の端から声をかけた。ソーニャはテーブルから三歩ほど離れた場所に、さっきと同じ姿勢でじっと立っていた。
「誰かが持ってきてくれましたの」
彼女は彼の方を見ようともせず、気の乗らない口調で答えた。
「誰が持ってきたんだ?」
「リザヴェータが持ってきてくれました。わたしが頼んだものですから」
『リザヴェータだって? 奇妙だな……』
ソーニャを取り巻くすべてのものが、刻一刻と彼にとって不可解で、奇妙なものに変わっていく。
彼は本をろうそくのそばへ持っていき、ページをめくりはじめた。
「ラザロのことはどこに書いてある?」
彼は唐突に尋ねた。ソーニャは頑ななまでにうつむいたままで、返事をしない。彼女はテーブルに対して少し斜めに立っていた。
「ラザロが生き返る話だよ。ソーニャ、どこか捜し出してくれないか」
彼女は横目で彼をちらりと見た。
「そんな、適当なところには載っていませんわ……第四福音書です!」
彼女は彼の方へ近づこうともせず、きびしい声でつぶやいた。
「捜して、読んで聞かせてくれ」
彼はそう言って腰を下ろし、テーブルに肘をついて片手で頭を抱えた。聞く態勢を整えながら、気難しい顔をして横を向いた。
『三週間もしたら、別荘へ行ってもらうことになるだろう。僕もそちらへ行くことになりそうだからね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました