それはそうと、ソーニャはどこにいるんだろう? どこへ行ってしまったんだろう? ああ、そう言っているところへあの娘がまいりました、やっとのことで! どうしたの、ソーニャ、どこへ行ってたの? ほかならぬお父さんのお弔いだというのに、そんなにだらしなくしてちゃおかしいじゃないの。ロジオン・ロマーヌイチ、どうぞこの娘をあなたの隣へ座らせてやってくださいまし。さあ、ここがお前の席だよ、ソーネチカ……なんでも好きなものをおとり。まあ魚の煮凝りでもおとりな、それがいいよ。いまプリンを持ってくるからね。
それはそうと、子供たちにはやったかしら。ポーレチカ、お前たちの方には皆あるかえ? ごほん、ごほん、ごほん! ああ、よしよし。いい子をしてるんですよ、ソーニャ。それからおまえ、コーリャ、あんよをばたばたさせるんじゃありませんよ。坊ちゃんらしくお行儀よく座ってらっしゃい。え、なんだってソーネチカ?」
ソーニャはさっそく大急ぎで、みんなに聞こえるように苦心しながら、自分が当人に代わってこしらえ上げ、さらに修飾を施した、とびきり丁寧な言葉づかいで、ルージンの謝辞を彼女に伝えました。それからまた、ルージンがじきじきに差し向かいで用件の話もしたいし、今後とるべき方法について打ち合わせもしたいから、暇ができしだいさっそくお訪ねするという伝言も申し添えました。
ソーニャは、この報告がカチェリーナの心をやわらげ、落ち着かせるばかりでなく、その自尊心を喜ばせ、かつ何よりもその誇りを満足させるにちがいないということを、よく承知していました。彼女はラスコーリニコフの傍に腰をおろすと、あわただしく彼におじぎをして、ちらりと好奇の視線を投げかけました。もっとも、そのあとの時間はずっと、彼女は彼の方を見ようともせず、話しかけようともせず、妙に避けているようでした。
彼女はカチェリーナのご機嫌をとろうと、その顔ばかりじっと見つめていましたが、どこか心ここにあらずといった様子でした。
ソーニャもカチェリーナも、手持ちの服がなくて、喪服を着ることはできませんでした。
ソーニャは何か肉桂(にっき)色をした地味な服を着ており、カチェリーナは持っている中で一番ましな、縞模様のサラサの服を着ていました。
ルージンについての報告は、何事もなく、するすると無事に終わりました。
大げさな様子でソーニャの報告を聞き終えたカチェリーナは、同じように大げさな口調で、ピョートル・ペトローヴィッチのご機嫌はどうだったかと尋ねました。
そして、わざとみんなに聞こえるような声で、ラスコーリニコフにこうささやきました。ルージンが彼女の家族を深く慕ってくれていて、亡くなった父親とも古い友人ではあるけれど、あのような尊敬すべき立派な紳士が、こんな「風変わりな集まり」に顔を出すなんて、もし本当に来ていたら、それこそ不思議でたまらなかっただろう、と。
「ですからね、ロジオン・ロマーヌイチ、あなたがこんなひどい有様にもかかわらず、こんなささやかなおもてなしを快く受けてくださったことを、本当にありがたく思っているんですよ」と彼女は、先ほどよりも大きな声で付け加えました。
「もっとも、亡くなった主人のことをあれほど可愛がってくださったからこそ、約束を守ってくださったのだとは存じますが」
それから彼女は、もう一度誇らしげで品格のある態度で客席を見回しましたが、ふいに主婦としての心遣いを見せて、テーブル越しに耳の遠い老人の方を向き、「焼肉はいかがですか? リスボン酒は注がれましたか?」と大きな声で問いかけました。
老人は返事をしませんでした。
隣の人たちが面白がってつついたりしましたが、何を言われているのか、老人は長いこと理解できませんでした。
彼は口をぽかんと開けたまま、あたりをキョロキョロと見回すばかりでした。
その様子が、集まった人たちのうきうきした気分をさらに盛り上げました。
「なんてまぬけなんでしょう! ご覧なさい! 一体全体、なんのためにあんな人を連れてきたのかしら? ところで、ピョートル・ペトローヴィッチのことは、わたしはずっと信用していたんですよ」とカチェリーナはラスコーリニコフに向かって言葉を続けました。
「もちろん、比べるまでもありませんけれど……」彼女は鋭い声でそう言い放つと、突然ものすごく厳しい顔つきになってアマリヤの方を向き直りました。
アマリヤは、その迫力に思わずひるんでしまったほどです。
「まったく、あの二人みたいな気取ったお引きずり(※だらしない女)とは比べものになりませんよ。
あの母娘なんて、わたしの父だったら、台所の料理女にだって雇いませんわ。
まあ、亡くなった夫なら、あの人は底なしの善人でしたから、雇ってあげるという光栄を授けてやったかもしれませんけれどね」
「そうとも、一杯やるのがお好きでしたな。これが好物でしたな。なかなかの酒豪で!」と、十二杯目のウォートカを飲み干しながら、食糧管理の役人だった男が突然わめき立てました。
「亡くなった主人は、なるほどそういう欠点を持っておりました。それはもう世間にも知られていることです」とカチェリーナは、いきなりその男に食ってかかりました。
「けれど、主人は心が清らかで潔白な人でした。自分の家族を心から愛し、大切にしていました。ただ一ついけなかったのは、人が良すぎるために、その辺のゴロツキをいちいち信用して、正体もわからないような、自分の靴底の値打ちすらないような人間と一緒にお酒を飲んでしまうことでした! でもね、ロジオン・ロマーヌイチ、聞いてくださいな。あの人のポケットに、ニワトリの形をした生姜(しょうが)餅が入っていたんですよ。
死んだように酔っ払って歩いていても、子供たちへのお土産は忘れなかったんですからね」
「ニワ、トリ? あなた、ニワ、トリとおっしゃったのですか?」と食糧管理の男がどなりました。
カチェリーナはそれには全く返事もしませんでした。
彼女は何やら考え込み、ほっとため息をつきました。
「ねえ、あなたもやはりみんなと同じように、わたしがあの人を厳しく扱いすぎたとお考えになるのでしょうね」と彼女はラスコーリニコフに向かって言葉を続けました。
「ところが、それは間違いなんです! 主人はわたしを尊敬してくれました。それはもう、すごく尊敬してくれました! 優しい心の人でしたからねえ! ですから、時々あの人が気の毒でたまらなくなることがありました! よくじっと腰かけたまま、隅っこからわたしの顔色をうかがっていましたが、そんな時には気の毒でたまらなくなって、優しくしてあげようかとも思うのですが、すぐ心の中で『いいえ、優しくしたら、また酔いつぶれてしまうわ』と思い直したものなんです」「とにかく、うるさく言っておかないと、少しも気を引き締めさせることができませんからね」
「へえ、そうですとも。よく横びんをむしり取られるようなことがありましたなあ、一度や二度じゃありませんよ」と、またもや食糧管理の役人が大声でわめき、ウォートカをもう一杯、喉の奥へ流し込みました。
「横びんをむしるなんてものじゃありませんわ。
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