発見された時には、まだ暖か味があったんだ! もし彼らが、あるいはミコライ一人が、殺人犯をおかして、しかもその際トランクをこわして強盗を働いたとか、あるいは何かで強盗の幇助をしたとすれば、一つ、たった一つだけ君に質問さしてもらいたい――いったいぜんたい今いった心理状態が、つまりきゃっきゃっわめいたり、大声で笑ったり、門の下で子供らしいつかみ合いをするというようなことが、斧だの、血だの、凶暴無比な悪知恵だの、ああした細心の注意だの、強奪などというものと、はたして一致するものかどうか? たったいま人を殺したばかりで、せいぜい五分か十分しかたたないのに――だってそういうことになるだろう、まだ死体が暖かいんだからね――急に死体もおっぽり出したうえ、部屋をあけっ放しにしといて、今そちらへ向けて人がぞろぞろ通って行ったのを承知しながら、獲物をほうり出したまま、道のまんなかで子供のようにころげ回ったり、げらげら笑ったり、みんなの注意をひいたりする。
しかも、それには陳述の一致した証人が十人もいるんだからね!」
「もちろん、変だ。
むろん不可能な話だ、がしかし……」
「いや、しかしじゃないよ。」もし同じ日の同じ時刻にミコライの手に入った耳輪が、実際には彼にとって不利な、重大な物的証拠になるとすれば――もっともその証拠は、彼の説明次第でいくらでも言い逃れができるから、まだ争う余地はあるけれど――もしそうだとすれば、彼をかばうための事実も、同じように考慮に入れるべきじゃないか。ましてや、それは否定しようのない事実なんだからね。
ところで、君はどう思う。
わが国の法律の考え方として、そうした事実を――単に「心理的にありえない」とか「当時の精神状態がどうだった」ということに基づく事実を――決定的な証拠として受け入れてくれるだろうか? たとえどんなものであろうとも、有罪を裏付けるあらゆる物的証拠をひっくり返してしまうような事実として、認めてくれるだろうか。いや、認めるだけの広い心を持っているだろうか? とんでもない、認めやしないさ。絶対にだ。箱は見つかったし、本人は首を吊ろうとしたんだもの。「やましいことがなけりゃ、そんなことするはずがない!」というわけさ。
つまり、これが僕を熱くさせる重大な問題なんだ! 少しはわかってくれよ!」
「うん、君が熱くなってる理由は、よくわかったよ。
だが待てよ、聞くのを忘れていたが、耳輪が入っていた箱が、本当に婆さんのトランクから盗まれたものだってことは、どうやって証明されたんだい?」
「それは証明済みさ」とラズーミヒンは眉をひそめて、少し面倒くさそうに答えた。
「コッホがその品に見覚えがあって、質屋に預けたのは誰かを教えたんだ。すると、その質屋の男が、確かに自分たちのところのものだと、きっぱり証言したのさ」
「それはまずいな。じゃあもう一つ――コッホとペストリャコフが部屋へ上がって行ったとき、誰かミコライを見た人間はいなかったのか? その点を証明できるものはあるのかい?」
「そこなんだよ、君。誰も見た者がいないんだ」とラズーミヒンはいらだった様子で答えた。
「そいつが本当に困るんだ。コッホとペストリャコフですら、上へ行くときには二人に気づかなかったんだからな。もっとも、彼らの証言は、この場合あまり役には立たないんだけどね。『部屋のドアが開いているのは見ました。たしか中で作業をしていたんでしょう。でも、通り過ぎるときに特に注意を払わなかったので、職人が中にいたかどうかは覚えていません』と、こう言うんだ」
「ふむ……! してみると、弁解の材料は『お互いになぐり合って、きゃっきゃと笑っていた』ということだけか。
まあ、仮にそれが強力な証拠だとしよう。しかし……じゃあもう一度聞くがね――君自身はこの出来事全体をどう説明するんだ? 耳輪を拾ったことをどう説明する? 彼が言った通りに拾ったものとしてだよ」
「どう説明するって? 何も説明することなんてないじゃないか。わかりきった話だ! 少なくとも、事件がどう進んだかは明瞭で、ちゃんと証明されているよ。
つまり、箱がそれを証明しているのさ。犯人はほかでもない、真犯人がその耳輪を落としていったんだ。
犯人は、コッホとペストリャコフがドアを叩いていたとき、四階のあの部屋にいて、鍵をかけて息を殺していたんだ。
ところが、コッホがあほな真似をして下へ降りて行ったので、その隙に犯人は飛び出して、同じく下へ駆け降りた。ほかに逃げ道がないからね。
それから奴は階段の途中で、コッホとペストリャコフ、それに庭番の目を避けて、空いていたアパートに隠れたんだ。それはちょうど、ミトレイとミコライが駆け出して行った時と同じタイミングなのさ。
そこで犯人は、三人が上へ行ってしまう間、ドアの陰に立っていて、足音が消えるのを待ってから、悠々と下へ降りて行った。
それはちょうど、ミトレイとミコライが通りへ駆け出したあとで、居合わせた人たちも散ってしまい、門の下に誰もいなかった時なんだ。もっとも、誰かが見ていたかもしれないが、特に気にも留めなかっただろう。人が通るなんて珍しいことじゃないからね。
箱は、奴がドアの陰に立っているうちにポケットから落としたものさ。落としたことにも気づかなかったんだ。それどころじゃない状況だったからな。
つまりその箱こそ、犯人がそこに立っていたことを明白に証明しているじゃないか。そこがこの手品の種なのさ!」
「うまい! いや、君、実にうまい推理だ。だが、それはあまりにうますぎるね!」
「どうして、え、どうしてだい?」
「だってさ、何もかもがあまりにパズルのピースが合いすぎている……あまりにしっくりきすぎていて……まるで芝居の台本みたいじゃないか」
「ちょっ、君は!」とラズーミヒンが叫んだとき、ちょうどドアが開いて、そこにいた誰も知らない、新顔の男が入ってきた。
五
それはもう若くはない、鼻持ちならないほど澄ました顔をした紳士で、用心深そうで気難しそうな表情をしていた。彼はまず、隠しきれない不快な驚きを顔に浮かべながらあたりを見回し、「一体全体、どこへ足を踏み入れてしまったんだ?」と、顔の表情だけで問いかけるようにして入り口に立ち止まりました。
彼は、ありえないものを見たような驚き、というよりはむしろ憤慨の色をわざとらしく見せつけながら、天井が低くて狭苦しいラスコーリニコフの「船室」のような部屋をじろじろと見回しました。
それから同じ驚きの表情のまま、服もろくに着ておらず、髪の毛はぼうぼうに乱れ、顔も洗わずにみすぼらしく汚れた長椅子に横たわったまま、じっと自分を凝視している当のラスコーリニコフに目を移し、そのままじろりと見つめました。
続いて、椅子から立とうともせず、同じく怪しげで人を食ったような態度で、まともに彼の目を見すえているラズーミヒンの、ひげも剃らず髪もとかしていないぼうぼうの姿を、ゆっくりとじろじろ眺め始めました。
緊張した沈黙が一分ほど続きましたが、やがて予想通り、その場に小さな変化が訪れました。
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