初級翻訳・罪と罰 第181話

ドストエフスキー

しかしそれと同時に、官吏の制服に外套をまとい、首に勲章を下げた(それがカチェリーナには愉快でたまらないようで、巡査の心持ちにも影響を与えていました)、五十歳くらいの立派な紳士が近づいてきて、無言のままカチェリーナに緑色の三ルーブリ紙幣を差し出しました。
その紳士の顔には、心からの同情が浮かんでいました。
カチェリーナはそれを受け取ると、うやうやしく、というよりも儀式ばった会釈をしました。
「あなた、どうもありがとうございます」と彼女は高飛車に言い放ちました。
「わたしたちがこんなことをするようになったわけと申しますのは……お金を預かっておいて、ポーレチカ。
ねえ、ご覧なさい。この通り、不幸に沈んでいる哀れな貴婦人をすぐに助けてくださる、高潔で寛大な方がいらっしゃるのよ。
あなた、これが由緒正しい、貴族と言ってもいいような家に親戚や知人を持つ、みなし子だということはお分かりいただけるでしょうね。
それをあの将軍めは食堂に座り込んで、山鳥なんか食べていましてね……わたしが邪魔をしたと言って、地団駄を踏むではありませんか……わたしはこう申したのですよ。
『閣下、亡くなったセミョーン・ザハールイチをよくご存じのはずですから、どうぞみなし子たちをお守りください。
卑劣も卑劣、これ以上ないほど卑劣なやつが、亡くなった夫の娘の顔に泥を塗ったのでございますから……しかもあの人が亡くなったその日に……』ああ、またあの兵隊が! どうぞ助けてください!」と彼女は官吏に向かって叫びました。「どうしてあの兵隊さんは、こうもつきまとってくるのかしら? 町人街でも一人やってきたから、こうして逃げてきたというのに……いいから、お前さん一体なんの用なんだい、このおバカさん!」

「路上でこんな騒ぎを起こすのは禁止されているんですよ。みっともない真似はやめなさい」

「あなたこそ、無作法な人ね! わたしは手風琴(ハンドオルガン)を回して歩く人たちと同じことをしているだけよ。お前さんに何の関係があるっていうの!」

「手風琴回しなら、ちゃんと許可証(鑑札)が必要ですよ。それなのに、あなたは勝手な真似をして人を集めている。……住まいはどこだ?」

「鑑札ですって?」カチェリーナは声を荒らげました。「わたしは今日、主人の葬式を済ませたばかりなのよ! そんなもの、あるわけないでしょう!」

「奥さん、奥さん、どうか落ち着いてください」官吏が口を挟みました。「さあ、行きましょう。わたしが家まで送りますから……こんなに人が集まっている場所では、あまりに格好がつきませんよ……あなたのお体も、ひどくお辛いようですし……」

「余計なお世話です、あなたは何も分かっていない!」カチェリーナは叫びました。「わたしたちはネーフスキイ通りへ行くんですもの――ソーニャ、ソーニャ! あら、あの子は一体どこへ行ったの? また泣いているのね! お前たちはどうしてこうも揃いも揃って……! コーリャ、レーニャ、どこへ行くの?」彼女はぎょっとしたように叫びました。「まあ、なんておバカな子たち! コーリャ、レーニャ、あの子たち一体どこへ行こうっていうの!」

実はこういうことでした。人だかりと、母親の気が狂ったような突飛な振る舞いにおびえきっていたコーリャとレーニャは、巡査が自分たちを捕まえてどこかへ連れて行こうとするのを見て、示し合わせたように手を取り合って駆け出したのです。

哀れなカチェリーナは悲鳴を上げ、そのあとを追いました。息を切らし、泣きながら走る彼女の姿は、見苦しいというより、見ていて痛ましくなるほどでした。ソーニャとポーレチカも慌てて追いかけます。

「連れ戻して、あの子たちを連れ戻してちょうだい、ソーニャ! ああ、なんて馬鹿で恩知らずな子供たちなんでしょう! ポーリャ! 二人を捕まえて……お前たちのためを思えばこそ、わたしは……」

彼女は必死に走るあまり足をもつらせ、そのまま地面に倒れ込んでしまいました。

「まあ、怪我をして血だらけ! ああ、どうしよう!」ソーニャが叫び、彼女のそばに駆け寄りました。

人々がワッと集まり、その周りを取り囲みます。ラスコーリニコフとレベジャートニコフが真っ先に駆けつけました。官吏も急いでやってきます。巡査もあとから来ましたが、面倒なことになりそうだと直感したのか、片手を振って「やれやれ!」とつぶやきました。

「どいた、どいた!」巡査は四方から押し寄せる群衆を追い払おうとしました。

「死にかけてるぞ!」誰かが叫びます。

「気が狂ったんだよ」別の誰かが言います。

「ああ、なんてこと!」一人の女が十字を切りながら言いました。「あの娘と子供たちは捕まったのかしら? ああ、あすこに連れてこられるわ、お姉ちゃんが捕まえたんだよ……あの子たち、すばしっこいねえ!」

しかし、カチェリーナをよく見てみると、彼女はソーニャが思ったように石にぶつかって怪我をしたのではなく、歩道を赤く染めたその鮮血は、彼女の胸から吐き出されたものだと分かりました。

「これは私も知っています、見たことがあります」官吏がラスコーリニコフとレベジャートニコフに向かって、うろたえながら言いました。「これは肺病ですよ。こうして血がどっと出て、喉が詰まるんです。親戚の女がそうでした、つい最近見せられたばかりで……そう、コップ一杯半くらいは……しかも突然……しかし、これは一体どうしたものでしょう、今にも死んでしまいそうですな」

「こちらへ、わたしの部屋へ!」ソーニャが祈るように言いました。「わたしはちょうどこの近くに住んでいるんです!……ほら、あの家、ここから二軒目です……さあ、わたしのところへ、早く、早く!」彼女は集まった人々に飛びかかるような勢いで言いました。「お医者様を呼んでください……ああ、どうしましょう!」

官吏の協力もあって、話はうまくまとまりました。巡査までがカチェリーナを運ぶのを手伝いました。彼女はほとんど意識を失っていましたが、ソーニャの部屋へ運び込まれ、寝台に横たえられました。出血はまだ止まりませんでしたが、本人は少しずつ正気を取り戻しつつあるようでした。

部屋の中には、ソーニャのほかにラスコーリニコフ、レベジャートニコフ、官吏、そして群衆を追い払った巡査が一斉に入ってきました。群衆の中の何人かも、戸口のところまでついてきていました。ポーレチカは、震えながら泣いているコーリャとレーニャの手を引いて戻ってきました。
カペルナウモフ一家の面々も集まってきました。
家の主人は足を引きずり、片目が不自由で、針のように硬い髪と頬ひげがピンと逆立った、なんとも奇妙な見た目の男でした。
いつも誰かに怒鳴られているような顔をした奥さんも、年中何かに驚いているせいで化石のように表情が固まっており、口をぽかんと開けた子供たちも何人か一緒についてきました。
そんな人だかりの中に、突然スヴィドリガイロフが姿を現しました。
ラスコーリニコフは、彼がさっきまで町の群衆の中にいたのを見ていなかったので、どこから現れたのか見当がつかず、驚いた顔で彼を見つめました。
医者や僧侶を呼ぶべきだという話が出ました。

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