初級翻訳・罪と罰 第40話

ドストエフスキー

債権者はあなたの持ち物を売ることも自由だし、あなたに対して法的な制裁を下すこともできるんだ」

「でも、僕は……誰からも借金なんてしていません」

「それはもう、我々の知ったことではありません。我々のもとには、このように債務取り立ての告訴が提出されているんです。つまり九か月前に、あなたが八等官の未亡人ザルニーツィナに渡した百五十ルーブリの借用証書です。これがその後、ザルニーツィナの手から七等官チェバーロフの手に渡り、今や期限切れの不渡り手形になっている。そういうわけで、あなたに答弁を求めているんですよ」

「ああ、それって……下宿のおかみさんのことじゃありませんか?」

「下宿のおかみさんなら、それがどうしたと言うんです!」

事務官は「どうだい、お前、今どんな気分だ?」とでも言いたげな様子で彼を見つめていた。まるで、みんなから包囲攻撃を受け始めたばかりの新参者を眺めるような、哀れみと、同時に「してやったり」という勝利感の混ざった、寛容な微笑を浮かべていた。

しかし、今の彼にとって借用証書がなんだろう。支払い命令がなんだろう! こんな些細なことが、今の自分にとって少しでも心配する価値があるだろうか。いや、少しでも注意を払う価値などあるはずもない! 彼は立ったまま、読んだり、聞いたり、答えたり、自分から質問までしていたけれど、それはすべて機械的な動作に過ぎなかった。

自衛の勝利、そして心を押しつぶしていたあの恐ろしい危険から逃れられたという感覚――ただそれだけが、今の彼の全存在を満たしていた。予見もなければ、分析もなく、未来に対する想像もなければ、推察も、疑惑も、問題も何もない。それはきわめて本能的で、純粋な動物的な歓喜の瞬間だった。

けれど、ちょうどその時、事務所の中で青天の霹靂ともいうべき事件が起こった。

さきほど受けた不敬な扱いにまだ腹の底まで煮えくり返るような気持ちで、真っ赤になって怒っていた警部は、傷つけられたプライドを回復しようと考えたのか、入ってきた時からニタニタと馬鹿げた微笑を浮かべていたあの「派手な婦人」を捕まえると、まるで頭から雷でも落ちたかのように、ガミガミと食ってかかった。

「おい、この……女!」と彼は、ふいにありったけの罵詈雑言を並べ立てながら、喉も裂けよとばかりに怒鳴りつけた。
(喪服の婦人は、もう帰ってしまっていた)。

「昨日の夜、貴様のところのひどい有様はなんだ? ああん? またしても町中が恥をかくような大騒ぎを起こして、また喧嘩に酒盛りだと? 懲治監(牢屋)にでも放り込まれたいのか! おれはもうちゃんと貴様に言ってあるはずだ、十回も注意したはずだ――十一回目には断じて許さないとな! それを貴様はまたしても、またしても! ええ、この……め!」

ラスコーリニコフは、思わず手から書類を取り落としそうになった。彼は怪訝な目つきで、そんなふうに無遠慮に怒鳴りつけられている派手な婦人を眺めていたが、やがて事の次第を理解した。すると、その一連の出来事がひどく愉快にさえ思えてきた。

彼は夢中で耳を傾けた。ありったけの声で笑って、笑って、笑い抜きたいような気分にさえなった……彼の神経が、むやみやたらに踊り狂っていた。

「イリヤー・ペトローヴィッチ」と事務官が気づかわしげに言いかけたが、今は時機ではないと見て言葉を飲み込んだ。猛り狂った警部を押し静めるには、無理やり抑え込むより他に方法がないことを、これまでの経験で知っていたからだ。

一方、派手な婦人の方はというと、最初は雷のような剣幕に震え上がっていたものの、不思議なことに、警部の罵声が激しくなればなるほど、そして言葉数が多くなればなるほど、彼女の顔つきはますます愛想が良くなっていき、目の前の恐ろしい警部に向ける微笑は、いっそう魅惑を増していくのだった。彼女はその場に立ったまま小刻みに足を動かし、ひっきりなしにお辞儀を繰り返しながら、自分の言い分を割り込ませるタイミングを今か今かと待ちわびていたが、ようやくその機会をつかんだ。

「あのですね、署長さま、わたくしのところでは、けっして騒ぎや喧嘩なんていたしませんのよ」

彼女は、豆をまき散らすような早口で、流暢ではあるものの強烈なドイツ訛りのロシア語をべらべらとまくし立て始めた。

「けっして、けっして不体裁なことはございません。あの人たちが酔っぱらってやって来たんですもの。詳しいことはすべてお話しいたしますが、署長さま、わたくしは悪くありません……わたくしの家はとても上品な家でしてね、お客さまへのもてなしだって上品なものですよ、署長さま。わたくしだって、いついかなる時も、けっして不体裁なことはしたくないと心がけておりますのに。それなのに、あの人たちがひどく酔っぱらって来られましてね。そのあと、またお酒を三本も注文なさったんです。そうしたら、そのうちの一人が足を高く上げて、足でピアノを弾きだしたんですよ。上品な家では、そんなことは全くいただけませんでしょう。そうしてとうとう、その馬鹿者がピアノをひどく壊してしまいました。まったく、礼儀というものを知らないんですから。それでわたくしが注意をしましたら、そいつが瓶をつかんで、みんなを後ろから突き飛ばしたじゃありませんか。そこでわたくしは急いで庭番を呼びましたので、カルルがやってきました。するとそいつめ、カルルをつかまえて目を殴ったんです。ヘンリエットもやはり目を殴られました。わたくしなんか、ほっぺたを五回も打たれましたよ。そんなこと、上品な家ではぶしつけすぎますわよねえ、署長さま。で、わたくしは怒鳴ってやりました。するとそいつは、通りに面した窓を開けて、そこに立ちはだかって、豚の子みたいに喚くんです。本当に恥さらしなことに、どうしてまあ往来に向かって、豚の子みたいに鳴けるのでしょう? フイ、フイ、フイ、フイってね! それで、カルルが後ろからそいつの燕尾服をつかんで、窓から引きずり下ろしました。もっともその時、これは本当のことですが、署長さま、上着の裾が破れてしまいましたので。するとそいつめ、弁償金として十五ルーブリ払えと喚くものですから、わたくしは自分でその裾の弁償として五ルーブリ払ったのでございます。本当に下品なお客といったら、署長さま、ありったけの不体裁をしでかして! その上、『おれは貴様のことを長い滑稽小説に書いてやるぞ、どの新聞にもみんな貴様のことを書き立ててやるんだからな』なんて言いましてね」

「すると、そいつは文士なのか?」

「はい、署長さま、本当に下品なお客でございます、署長さま、お上品な家に来て……」

「うむ、よし、よし! たくさんだ! おれはもう貴様にさんざん言って聞かしておいた。よく言ってあるはずだ……」

「イリヤー・ペトローヴィッチ」と事務官がまた意味ありげに声をかけた。

警部はちらりとその方を振り返った。事務官は軽くうなずいて見せた。

「……さあ、名誉あるラヴィーザ・イヴァーノヴナ、これが貴様に聞かせてやるおれの最後のお説教だ。それこそ本当に最後だぞ」と警部は続けた。

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