初級翻訳・罪と罰 第37話

ドストエフスキー

彼はそばのテーブルにあった外套――暖かくはあるものの、もうぼろぼろになった学生時代の古い冬外套を機械的に引き寄せ、頭からかぶりました。
すると、眠気と混乱が再び彼を襲いました。
彼は前後不覚に陥りました。
五分もたたないうちに、彼はまたしても飛び起きました。
そして、すぐさま夢中になって自分の服のほうへ駆け寄りました。
『ああ、また寝てしまったのか。まだ何もできていないじゃないか! そうだ、その通りだ。脇の下の血の跡だってまだ取っていないんだ! 忘れていた、こんな大事なことを忘れるなんて! とんでもない証拠じゃないか!』彼は血のついた部分をちぎり取り、急いでそれをずたずたに引き裂きながら、枕の下の洗濯物の中にぐいぐいと押し込みました。
『ぼろの切れ端なら、どんなことがあっても疑われる心配はない。そうに違いない、そうに違いない!』と彼は部屋の真ん中に立ったまま繰り返しました。
そして、痛いほど注意を張り詰め、まだ何か忘れたものはないかと、再び床の隅々まで見回し始めました。
すべてが、記憶や単純な判断力さえもが自分を見捨てようとしているのだと確信し、たまらないほど苦しくなりました。
『どうしたんだ、もうそろそろ始まっているのか? これは罰が当たっているのか? それ、それ、この通りじゃないか!』実際、彼がズボンから切り落とした房の切れ端が、そのまま部屋の真ん中の床に落ちていたのです。誰か入ってきたら、すぐに見つかってしまう! 「ああ、一体おれはどうしたんだ?」彼は再び途方に暮れた様子で、思わずそう叫びました。
その時、ある奇妙な考えが頭をよぎりました。もしかすると、自分の服はすっかり血だらけで、シミだらけなのかもしれない。それなのに、熱で頭がぼんやりして、判断力もバラバラになって……知力が曇っているせいで……自分だけがそれに気づかず、見えていないだけなのではないか……。そう思うと、ふいに財布にも血がついていたことを思い出しました。
「あっ! ということは、ポケットにも血がついているに違いない。あの時、まだベタベタしていた財布を無理やりねじ込んだんだから!」彼はすぐにポケットを裏返してみました。すると――案の定――ポケットの裏にも血の跡がありました。シミです!
「ということは、まだ完全に理性を失ったわけじゃないな。自分で気づいて察することができたんだから、つまり、判断力も記憶もまだ確かにあるということだ!」彼は勝ち誇ったような気分で、胸いっぱいに深く息を吐き出しながら、喜ばしげに考えました。
「あれはただの熱病による衰弱だ。ちょっと熱に浮かされているだけなんだ」そう言って、彼はズボンの左ポケットの裏地をすっかり引きちぎりました。その時、差し込んできた太陽の光が、左の長靴を照らしました。すると、長靴から少しのぞいていた靴下に、何やら証拠らしきものが見えたような気がしました。彼は靴を脱ぎました。
「やっぱり証拠だ! 靴下のつま先が、まるで血だらけじゃないか」きっとあの時、うっかり血だまりへ踏み込んでしまったに違いない……。「だが、今度はこいつをどうしたものか? この靴下や、房の切れ端や、ポケットをどこへ捨てればいいんだ?」
彼はそれらすべてを両手にかき集め、部屋の真ん中に突っ立っていました。
「ストーブの中へ隠すか? いや、ストーブの中は真っ先に調べられるだろう。焼いてしまうか? だが、何で火をつけるんだ? マッチもないじゃないか。いや、それよりどこかへ行って、全部捨ててしまうほうがいい。そうだ! 捨てるのが一番だ!」また長椅子に腰を下ろしながら、彼は考えました。
「すぐ、今すぐ、一刻の猶予もない!」けれどそうする代わりに、彼の頭はまたしても枕の上へ傾いてしまいました。
またしても堪え難い悪寒が、体を氷のように冷え込ませました。彼はまた外套を頭からすっぽりとかぶりました。こうして長い間、何時間も何時間も、一つの考えが途切れ途切れに彼の夢を訪れました。
「今すぐ、一刻も早くどこかへ行って、何もかも捨ててしまおう。二度と人の目には触れないように、少しでも早く、一刻も早く!」彼は何度も長椅子から身をもぎ離して起き上がろうとしましたが、もう力が入らず、できませんでした。
激しくドアをたたく音が、ようやく完全に彼の目を覚まさせました。
「開けなさいよ、生きてるの? 死んでるの? いつもグウタラ寝てばかりいてさ」拳でドアをたたきながら、ナスターシャがわめきました。
「毎日毎日、朝から晩まで犬みたいに寝てばかり! 全く、犬なんだから! いい加減に開けなさいよ! もう十時過ぎだよ」
「いないのかもしれねえぜ」と男の声が言いました。
『あっ、あれは庭番の声だ……何の用だろう?』
彼はがばとはね起き、長椅子の上に座りました。心臓が痛いほど激しく打ち始めました。
「だって、この鍵をかけたのは誰なの?」とナスターシャが言い返しました。
「まあ、鍵なんかかけるようになって! 自分自身が盗まれそうで心配なのかしら! 開けなさいよ、この唐変木、起きなさいよ!」
『やつらは何の用があるんだ? どうして庭番まで? 何もかもバレちまったんだ。抵抗すべきか、開けるべきか? ああ、どうにでもなれ……』
彼は半身を起こして前へ身を乗り出し、鍵をはずしました。彼の部屋は、ベッドから起き上がらなくても鍵に手が届くほどの広さでした。案の定、ドアの外には庭番とナスターシャが立っていました。ナスターシャは、何やら妙な顔をして彼をじろりと見回しました。彼は、挑むような自暴自棄の表情で庭番を見つめました。庭番は無言のまま、二つ折りにされて安っぽい封蝋(ふうろう)で封印された、灰色の紙切れを差し出しました。
「差し紙でございます、役所からです」と彼は紙を渡しながら言いました。
「何の役所だい?……」
「つまり、警察からの呼び出しですよ、役所へね。何の役所なんて、分かりきってるでしょう」
「警察へ?……何のために?……」
「そんなこと、わしが知るもんか。来いって言ってるんだから、行けばいいんですよ」
庭番は彼をじろじろと見回し、あたりを確認してから、きびすを返して行こうとしました。
「なんだか本当に病気になっちまったみたいだね?」ラスコーリニコフから目を離さずに、ナスターシャがそう言いました。庭番も少し振り返りました。
「昨日から熱があるんだからね」とナスターシャが付け加えました。
彼は返事をせず、まだ封も切っていない紙切れを手に持ったままでした。「それなら、もう起きないほうがいいよ」
彼が長椅子から足を下ろそうとするのを見て、不憫に思ったのか、ナスターシャはそう言葉を続けた。
「病気なら行くことはないさ――大丈夫だよ。あんた、その手に持っているもの、いったい何だい?」

彼は何気なく自分の手を見て、ハッとした。右手に、例の房の切れ端と、靴下の先、そして引きちぎったポケットの裏地を握りしめていたのだ。そのまま寝ていたらしい。
あとになって思い返せば、彼は熱に浮かされ、夢うつつの中で、それらをしっかりと握りしめたまま、再び眠りに落ちていたのだった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました