初級翻訳・罪と罰 第3話

ドストエフスキー

こんなもの、いくらの値打ちもありゃしないよ」「この前だって、指輪に二枚も出してあげたじゃないか。あれだって宝石屋へ行けば、新品が一枚半で買える代物だよ」

「四ルーブリ貸してください。ちゃんと受け出しますから。親父の形見なんです。じきに金が入るはずですから」

「一ルーブリ半、そこから利子を天引きするよ。それで良ければ貸してやる」

「一ルーブリ半だって!」青年は叫びました。

「嫌ならいいよ」

老婆はそう言うと、時計を突き返してきました。青年はそれを受け取りました。すっかり腹を立てて、このまま帰ってしまおうかと思いましたが、他に当てもなく、そもそも別の目的もあってここへ来たのだと思い出し、すぐに思い直しました。

「貸してください」彼はぶっきらぼうに言いました。

老婆はポケットに手を突っ込んで鍵を探りながら、カーテンで仕切られた奥の部屋へ入っていきました。青年は部屋の真ん中に取り残されると、好奇心いっぱいの目で聞き耳を立て、あれこれと考えを巡らせました。老婆が箪笥を開ける音が聞こえます。

『きっと上の引き出しに違いない』と彼は考えました。『ということは、鍵は右のポケットか。全部一束にして鉄の輪に通しているんだな……あの中に、他のどれよりも三倍は大きい、ぎざぎざの歯をした鍵があった。あれは箪笥の鍵じゃない……他にも何か手箱か、長持みたいなものがあるはずだ……ふん、こいつは面白い。長持にはたいていあんな鍵がついているものだ……だが、なんてさもしい生活なんだ……』

老婆が戻ってきました。

「さてと――一か月十カペイカとして、一ルーブリ半なら十五カペイカ、ひと月分先引きするよ。それから前の二ルーブリの分も同じ割合で、さらに二十カペイカ差し引くから、全部で三十五カペイカ。つまり、今この時計と引き換えに渡すのは、一ルーブリ十五カペイカだ。さあ、受け取りな」

「へえ! たったの一ルーブリ十五カペイカなんですか!」

「ああ、そうだよ」

青年は文句も言わずに金を受け取りました。彼はじっと老婆を見つめながら、まだ何か言い足りないことがあるような顔で、すぐには帰ろうとしませんでした。もっとも、自分でも何の用があるのか分かっているようには見えませんでした。

「もしかしたら、アリョーナ・イヴァーノヴナ、近いうちにもう一品持ってくるかもしれません……銀の……立派な……巻き煙草入れです……友達から取り返せたら……」

彼はしどろもどろになり、言葉を切りました。

「まあ、それはまたその時の話にしましょう」

「じゃあ、さようなら……ところで、おばあさんはいつも一人なんですか? 妹さんは留守ですか?」

控室へ出ながら、彼はできるだけ自然な調子を装って尋ねました。

「妹に何か用かね?」

「いいえ、別に。ちょっと聞いてみただけです。それじゃあ、さようなら、アリョーナ・イヴァーノヴナ!」

ラスコーリニコフはすっかり動揺しながら、そこを出ました。心の乱れは刻一刻と強まっていきました。階段を降りながら、彼は突然何かに打たれたように、何度も足を止めました。ようやく通りに出たとき、彼はたまらず口に出して叫びました。

『ああ、なんてことだ! なんて汚らわしいんだ! いったい、俺は……いや、こんなの無意味だ、くだらない!』と彼はきっぱりと言い捨てました。『なぜこんな恐ろしい考えが頭に浮かんだんだ! なんて俺の心は汚らわしいことを考えつくようにできているんだ! 何よりもまず――汚らわしい、きたない、ああ、嫌だ! だが、俺はまるひと月……』

けれど、言葉や叫びでは、自分の興奮を抑えきれませんでした。老婆のところへ向かう道中からずっと彼の心を圧迫し、濁らせていた言いようのない嫌悪感が、今は巨大な塊となって姿を現し、彼は息苦しさに身の置き場もありませんでした。

まるで酔っ払いのように、行き交う人にも気づかず、一人一人にぶつかりながら歩道を歩き、次の通りに出たところでようやく我に返りました。あたりを見回すと、とある酒場の脇に立っていました。そこへ入るには、歩道から石段を降りて地下室へ向かうようになっていました。ちょうどその時、二人の酔っ払いが肩を寄せ合い、罵り合いながら外へ出てきました。

迷うことなく、ラスコーリニコフは地下へと降りていきました。これまで一度も酒場に入ったことはありませんでしたが、今はめまいがするうえに、焼けつくような喉の渇きに悩まされており、冷たいビールを一杯あおらずにはいられなかったのです。その上、突然襲ってきた疲れの原因は、空腹のせいだったのだと気づいたからでもあります。
彼は暗くて汚れた片隅の、ベタベタするテーブルの前に腰を下ろしてビールを注文し、のどを鳴らして最初の一杯を飲みほしました。
すると、たちまち気分が落ち着いて、考えがはっきりしてきました。
「こんなこと、何もかも馬鹿げてる」彼は、ある希望を感じながらひとりごちました。
「悩むことなんて何ひとつありゃしない! ただ体の調子が悪いだけなんだ! たった一杯のビールと、乾パンひとかけらで――もうこの通り、すぐに頭は確かになるし、意識もはっきりする、意志だって強くなる! ちっ、何もかも実に馬鹿らしい!」
しかし、こうして馬鹿にするように吐き捨ててみたものの、彼は何か恐ろしい重荷から解放されたみたいに、急に表情が晴れやかになりました。
そして、人恋しい気分で店の中にいる人々を見回しました。
けれど彼は、この瞬間でさえ、こうして物事をいい方に考えようとする感受性も、やっぱり病気の一種なんだろうと、かすかに予感していました。

この時、酒場にはあまり人がいませんでした。
さっき階段で出会った二人の酔っ払いのあとから、女を一人連れて手風琴(アコーディオン)を持った五人組が一度にどやどやと出て行ったので、あとは静かでゆったりとした空気が流れていました。
あとに残っていたのは――ビールを前に座っている、ほろ酔い加減の町人風の男と、スペイン風の帽子をかぶり、灰色の顎ひげを生やした、大柄で太った連れの男でした。
連れの男はひどく酔っぱらっていて、ベンチの上でうとうとしながら、ときどき夢の中で何かに気づいたのか、急に指をパチンと鳴らしたり、両手を広げたりしました。ベンチから起き上がることもせず、上半身だけをピョコンと跳ね上げるような格好をしています。
それと一緒に、歌詞を思い出そうとあせりながら、めちゃくちゃな歌をうたうのです。
「まるまる一年、女房を可愛がったよう……
まあるまる一年、女房を可愛がったよう!……」

かと思うと、急にまた目をさまして、

「ポジャーチェスカヤを歩いていると
もとの馴染(なじみ)に出会った……」

けれど、誰一人として彼のこの上機嫌に共感する者はいませんでした。
無口な連れの男は、こうした急な興奮を、むしろ敵意を含んだ疑わしい目つきで眺めていました。
そこにはもう一人、退職した役人らしい男がいました。
瓶を前にして、ときどきグイッと一口飲んではあたりを見回し、一人ぽつねんと座っています。
彼もどうやら、何かに興奮しているようでした。

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