初級翻訳・走れメロス 第4話

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遅れてはならない。愛と誠実さの力を、今こそ見せつけるんだ。

格好なんてどうでもいい。メロスは今や、ほとんど裸同然の姿だった。息も絶え絶えで、二度、三度と口から血が噴き出した。

見えた。はるか向こうに小さく、シラクスの街の塔が見える。塔は夕日を受けてキラキラと光っている。
「ああ、メロス様!」
うめくような声が、風と共に聞こえた。
「誰だ!」
メロスは走りながら尋ねた。
「フィロストラトスでございます。あなたのお友達、セリヌンティウス様の弟子です!」
その若い石工も、メロスの後を追いかけながら叫んだ。
「もう、駄目です。無駄です。走るのをやめてください。もう、あの方をお助けすることはできません」
「いや、まだ陽は沈んでいない!」
「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。ああ、あなたは遅かった。恨みます。ほんの少し、もう少しだけでも早かったなら!」
「いや、まだ陽は沈んでいない!」
メロスは胸が張り裂けそうな思いで、赤く大きな夕日だけを見つめていた。走るほかない。
「やめてください、走るのを! 今はご自身の命を大切にしてください。あの方はあなたを信じていました。刑場に引き出されても平気な顔をしていました。王様がさんざんあの方をからかっても、『メロスは必ず来ます』とだけ答えて、強い信念を持ち続けていたんです」
「それだからこそ、走るんだ。信じられているから走るんだ。間に合うかどうかは問題じゃない。人の命だって問題じゃないんだ。私は今、なんだか、もっと恐ろしくて大きな何かのために走っているんだ。ついて来い、フィロストラトス!」
「ああ、あなたは気が狂ったのか。それなら、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わないこともないかもしれない。走るがいい!」

言うまでもない。まだ陽は沈んでいない。最後の力を振り絞って、メロスは走った。メロスの頭はからっぽだ。何一つ考えていない。ただ、わけのわからない大きな力に引きずられるようにして走った。

陽はゆらゆらと地平線に沈み、まさに最後の一片の残光も消えようとしたそのとき、メロスは疾風のごとく刑場に飛び込んだ。間に合った。
「待て! その人を殺してはならない。メロスが帰ってきた。約束どおり、今、帰ってきたぞ!」
大声で群衆に向かって叫んだつもりだったが、喉が潰れていて、かすれた声がわずかに出ただけだった。群衆は、誰一人として彼の到着に気づかない。

すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスが、ゆっくりと釣り上げられていく。メロスはそれを見て、最後の勇気を振り絞った。さっき濁流を泳いだときのように群衆をかきわけ、かきわけして、
「私だ、刑吏! 殺されるのは私だ! メロスだ! 彼を人質にした私は、ここにいる!」
とかすれた声で精一杯叫びながら、ついに磔台に駆け上がり、釣り上げられていく友の両足にがぶりと噛みついた。

群衆はどよめいた。「あっぱれ!」と、口々に許してやれと叫んだ。セリヌンティウスの縄は、こうして解かれたのである。

「セリヌンティウス」
メロスは目に涙を浮かべて言った。
「私を殴ってくれ。力いっぱい、頬を殴ってくれ。私は途中で一度、悪い夢を見てしまった。君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱き合う資格さえないんだ。殴ってくれ!」

セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場いっぱいに響くほどの音を立てて、メロスの右頬を殴った。殴り終えると優しく微笑んで言った。
「メロス、今度は私を殴れ。同じくらい大きな音で、私の頬を殴ってくれ。私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらりと君を疑った。生まれて初めて君を疑ったんだ。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱き合うことができない」

メロスは腕に力を込めて、セリヌンティウスの頬を殴った。
「ありがとう、友よ」「二人同時にそう言って、力いっぱい抱き合いました。そして、うれし涙をボロボロとこぼして、声を上げて泣き出しました。
群衆の中からも、すすり泣く声が聞こえてきます。

暴君ディオニスは、群衆の後ろから二人の様子をじっと見つめていましたが、やがて静かに二人に歩み寄ると、顔を少し赤らめてこう言いました。
「おまえたちの望みは叶った。
おまえたちは、わしの心に打ち勝ったのだ。
信実とは、決して空虚な妄想ではなかったのだな。
どうか、わしをも仲間に入れてくれないか。
どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえたちの仲間の一人に加えてほしい」

どっと群衆の中から、歓声が沸き起こりました。
「万歳、王様万歳!」

ひとりの少女が、真っ赤なマントをメロスに差し出しました。
メロスは、どうしていいか分からず戸惑いました。
親友のセリヌンティウスは、気を利かせてこう教えてあげました。
「メロス、君は今、すっぽんぽんじゃないか。
早くそのマントを着るがいい。
この可愛い娘さんは、メロスの裸をみんなに見られるのが、たまらなく悔しいんだよ」

勇者は、顔を真っ赤にして照れました。

(古伝説と、シラーの詩より。)

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