初級翻訳・罪と罰 第28話

ドストエフスキー

そんな風に考えていたら、歴史に名を残すような大人物なんて一人も出てこなかったはずだ。人はよく『義務だ、良心だ』と言う。僕はそれらを否定するつもりはない。だが、われわれはそれをどう解釈していると思う? 待て、もう一つ問題を出すぞ」

「いや、待て待て。今度は僕から問題を出す番だ。いいか!」

「よし、言ってみろ!」

「君は今、さも正論のように熱弁をふるったが、じゃあ聞くぞ。君自身がその婆さんを殺せるのか?」

「もちろん、殺せるわけがない! 僕は正義のために言っただけで……僕自身には何の関係もないことだ……」

「だがね、僕に言わせれば、君が自分で実行する覚悟がないのなら、正義も何もあったもんじゃない! さあ、行くぞ。もう一勝負だ!」

ラスコーリニコフは異常な興奮に襲われていた。もちろん、これらはどれも、言い回しや論点は違えど、彼自身がこれまで何度も耳にしてきた、ありふれた若者たちの議論に過ぎない。しかし、今まさに彼自身の頭の中に同じような思想が芽生え始めたこのタイミングで、なぜわざわざこんな話を聞かされる巡り合わせになったのか。しかも、たった今、老婆の家から自分の思想の種を抱えて出てきたばかりのこの瞬間に、まるで狙ったかのように老婆の噂話に行き当たるとは。彼はこの奇妙な一致がどうしても不思議でならなかった。

この安っぽい食堂での無駄話が、のちに彼の運命を大きく左右する出来事の引き金になろうとは、その時は知る由もなかった。それはまるで、一種の宿命であり、何かの啓示のようにさえ感じられた。

……

乾草広場から帰宅した彼は、長椅子の上に身を投げ出したまま、一時間ほど身動きもせず座り込んでいた。やがて部屋は暗くなっていったが、蝋燭をつける気力も起きなかった。その時、自分が何を考えていたのか、あとになって思い出そうとしてもどうしても分からなかった。やがて彼は、先ほどと同じ熱気と悪寒を感じ始めた。そして、長椅子の上なら横になることもできるのだと気づき、それがたまらなく嬉しかった。間もなく、重い鉛のような眠気が、まるで上から押しつぶすように彼を襲った。
彼はいつもとは比べものにならないほど長い時間、夢も見ずにぐっすりと眠り続けた。
翌朝の十時、部屋に入ってきたナスターシャが、ようやく彼をゆすり起こした。
彼女は紅茶とパンを持ってきたが、紅茶はまたしても出がらしで、いつものように彼女自身の使い古した急須に入っていた。
「よくまあ、そんなに寝ていられるものだね!」と彼女は、呆れ果てたという様子で大声を出した。
「いつもいつも、寝てばかりじゃないか!」
彼はやっとの思いで身を起こした。
頭がズキズキと痛む。
立ち上がって小部屋の中をぐるりと向きを変えたものの、そのまままた長椅子の上に倒れ込んでしまった。
「また寝るのかい!」ナスターシャが叫んだ。
「いったいあんた、病気なのかい? どうなんだい?」
彼は何も答えなかった。
「お茶はいらないのかい?」
「あとで……」彼は目を閉じ、壁の方を向いたまま、やっとのことでそう言った。
ナスターシャはしばらく彼のそばに立っていた。
「本当に病気かもしれないね」彼女はそうつぶやくと、くるりと背を向けて出て行った。
午後二時になると、彼女はスープを持って再びやってきた。
彼はさっきと同じように眠っていた。
紅茶は手つかずのままだった。
ナスターシャはとうとう腹を立て、意地になって彼をゆすり始めた。
「いつまでぐうたら寝ているんだい!」忌々しそうに彼を睨みつけながら、彼女は怒鳴った。
彼は身を起こして座ったが、一言も口をきかず、ただ床をじっと見つめていた。
「具合が悪いの? どうなの?」とナスターシャが聞いたが、またしても返事はなかった。
「少し外へ出てみたらどうだい」と、しばらく黙ったあとで彼女は言った。
「風にでも当たってくればいいんだよ。何か食べるかい?」
「あとで」と、彼は弱々しい声で言った。
「もう行ってくれ!」と手を振る。
彼女はなおしばらくそこに立ったまま、気の毒そうに彼を見つめていたが、やがて部屋を出て行った。
しばらくして、彼は目を上げると、長いこと紅茶とスープを見つめていた。
やがてパンを手に取り、匙を持って食事を始めた。
食欲など全くなかったが、三さじか四さじ、機械的に口に運んだ。
頭痛は少しだけ薄らいでいた。
食事を終えると再び長椅子に横たわったが、もう眠ることはできなかった。うつぶせになって顔を枕に埋めたまま、身動きもせずじっとしていた。
彼の目には、絶えず幻のような光景が浮かんでいた。
それはどれも、ひどく奇妙な夢だった。
一番よく見たのは、どこかアフリカかエジプトのような、オアシスにいる夢だ。
旅の一団が休息していて、ラクダが大人しく寝そべっている。あたりには椰子の木がぐるりと茂っていた。みんなが食事をしている間、彼はそばをさらさらと流れる小川にいきなり口をつけて、夢中で水をがぶがぶと飲んでいる。
なんとも言えないほど涼しい。
すばらしいコバルト色をした冷たい水が、色とりどりの石や、金をちりばめた清らかな砂の上を流れていく……そのとき、突然時計の音がはっきりと聞こえた。
彼は身震いして我に返った。
頭を持ち上げ、窓の外を見ながら時刻を考え合わせた。
すると、すっかり正気に戻り、まるで誰かに引きずられるように、いきなり長椅子からはね起きた。
それから、爪先立ちで戸口に近づき、ドアをそっと開けて、下の階段に聞き耳を立てた。
心臓が恐ろしいほど激しく鼓動していた。
けれど階段は、誰も彼もが寝静まっているかのように、しんとしていた。
彼は昨日からこんなにも無防備に眠りこけ、何一つ準備もせずにいたことが、不思議で、信じられないことに思えた……しかも、時計はもう六時を打ったのかもしれない……。
その瞬間、突拍子もない熱病のような、妙にせわしない活動性が、眠気や放心に代わって彼を捕らえた。
もっとも、準備といっても大したことではない。
彼は万事をとくと考え合わせ、何一つ忘れないように、ありったけの力を振り絞って集中した。
しかし、心臓はいつまでも激しく打ち続け、息をするのも苦しいほどだった。
まず第一に、輪を作ってそれを外套へ縫いつけなければならない――ほんの一分ばかりの仕事だ。
彼は枕の下に手を突っ込み、その下に詰め込んである肌着の中から、ひどくボロボロで洗濯もしていない古シャツを一枚探し出した。
その布から幅一寸、長さ八寸くらいの紐を裂き取ると、それを二重に合わせる。分厚い木綿で作ったゆったりした夏用の外套(彼が持っている唯一のコートだ)を脱ぎ、内側の左の脇の下へ、その紐の両端を縫いつけにかかった。
縫っている間も彼の手はわなわなと震えたが、彼は必死に自分を抑えつけた。再び外套を着込んだとき、外からは何も見えないようにすることができた。
針と糸はすでにずっと前から用意してあり、紙に包まれてテーブルの上に転がっていた。その「輪」というのは、彼が斧を運ぶために自分で考え出した、実に巧妙な仕掛けだった。
斧を手にぶら下げて町を歩くわけにはいかないし、かといってコートの下に隠すにしても、手でしっかり押さえていなければならない。

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