『パーセンテージ』! 全くうまい言葉だ――それは何とも気休めになる、科学的な言葉だよ。
パーセンテージ、こう一言言ってしまえば、もう心配することはない。
これがもし別の言葉だったら、そうだな……多少は胸が痛むかもしれないが……。しかし、もしドゥーネチカが、その『パーセンテージ』の中に入ってしまったら!……この方でなければ、別のパーセンテージに?」
「だが、俺はいったいどこへ行こうとしていたんだ?」と、ふいに彼は考えました。
「おかしいな。
俺は何か用があって外に出たはずだ。
手紙を読んでから、出かけたんだ……あ、そうか、ヴァシーリエフスキイ島のラズーミヒンのところへ行こうとしていたんだっけ。
そう、今ようやく……思い出した。」「だが、なんの用であの男のところへ行くんだ? どうして今度に限って、ラズーミヒンの所へ行こうなんて考えが、おれの頭に浮かんだんだろう? これは不思議だ」
彼は自分でも驚いてしまいました。
ラズーミヒンは、大学時代の友だちの一人でした。
ここで注意しておかなければならないのは、ラスコーリニコフが大学にいた頃、友だちと呼べるような人間はほとんどいなかったということです。
彼はすべての人を避けて、誰の家にも行かず、人を招くのも嫌がっていました。
もっとも、ほかの学生たちも、すぐに彼から顔をそむけてしまったのですが。
彼はみんなが集まる会合や、仲間同士の会話、遊びなどには一切関わりませんでした。
彼は寝る間も惜しんで必死に勉強しました。
そのためにみんなから尊敬はされていましたが、誰一人として彼を好く者はいませんでした。
彼は非常に貧乏でありながら、なぜか傲慢で、人付き合いが悪く、心の中に何かを隠しているように見えました。
一部の友人たちには、彼が仲間のみんなを子供扱いして、高い所から見下ろしているように思われていたのです。
さらに、彼らの発達具合も、考え方も、信念も、すべて自分の方が上だと言わんばかりに、彼らの信念や趣味をどこか低レベルなものとして扱っているように感じられました。
しかし、ラズーミヒンとはどういうわけか、馬が合ったのです。
馬が合ったというよりは、ほかの誰よりも遠慮がなく、打ち解け合っていたと言うべきでしょう。
もっとも、ラズーミヒンとはそれ以外の関係を築くわけにもいきませんでしたが。
彼は珍しいほど快活で、さっぱりしていて、単純なくらい善良な青年でした。
とはいうものの、その単純さの下には、深みと誠実さが隠れていました。
彼の親友は皆それを分かっていて、彼を愛していました。
彼は実際、時々お人よしすぎることもありましたが、なかなかの賢い男でした。
見た目も非常に特徴的でした――背が高くてやせていて、髪は真っ黒、いつも無精ヒゲを伸ばしていました。
彼はときどき乱暴なことをすることもあり、力持ちとして知られていました。
ある夜のパーティーでは、六尺(約180センチ)もある大男の巡査を、一撃で倒したことさえあります。
お酒はいくらでも飲めましたが、全く飲まずにいることもできました。
時には勘忍袋の緒が切れるほどの悪ふざけをしましたが、全くふざけずにいることもできたのです。
それから、もう一つラズーミヒンの特徴がありました。どんな失敗をしてもビクともせず、どんなに困った状況でも決してへこたれないという点です。
彼はたとえ屋根の上に住むことになっても平気でしょうし、地獄のような飢えや、突き刺すような寒さも耐えることができました。
彼は恐ろしく貧乏でした。
そして完全に自分の力だけで、どんな仕事か分からないようなことをして金を稼ぎ、生活を支えていました。
彼は働こうと思えば、いくらでも金が出てくるような方法を知っていたのです。
ある年などは、一冬じゅう自分の部屋を暖めずに過ごし、「寒いほうがよく眠れるから、かえって気持ちがいい」と豪語したほどでした。
現在、彼はやむを得ず大学を離れていますが、それも長い間のことではなく、また学業を続けられるように、事態を回復しようと懸命に頑張っていました。
ラスコーリニコフはもう四ヶ月も彼のところへ行っていませんし、ラズーミヒンの方も、彼がどこに住んでいるのかさえ知りませんでした。
二ヶ月ほど前、二人は道で出会ったのですが、ラスコーリニコフはそっぽを向いて、相手に見つからないように、わざわざ道の反対側へ移ったのです。
ラズーミヒンの方も気づいていましたが、親友を煩わせたくないと思い、そのまま素通りしてあげました。
「そうだ、おれはついこの間も、ラズーミヒンのところへ仕事を頼みに行こうとしたんだっけ。
家庭教師の口か、それとも何かほかのことでも見つけてもらおうと思って……」とラスコーリニコフは考えました。
「だが今となって、あの男の力でどうしておれが助けられるというんだ! よし仮に家庭教師の口が見つかって、やつの手元に一カペイカでもあれば、その最後の一カペイカまで分けてくれるとしよう。
それで、家庭教師に行くための靴も買えるし、服も直せるとしよう……ふむ……ところで、その先は? わずかな端金でいったい何ができるんだ? 今のおれに必要なのはそんなものだろうか? いや、ラズーミヒンのところへ行こうとしたのは、全くお門違いだった」
彼が今なんのためにラズーミヒンのもとへ向かっていたのかという疑問は、彼自身が感じていたよりも、ずっと激しく彼を困惑させました。
彼は不安を感じながら、この一見きわめて平凡な行動の中に、自分にとっての不吉な予兆となるような何かを探り出そうとしました。
「ふん、いったいおれはラズーミヒン一人だけの力で、すべてを立て直そうとしたのか? いっさいの解決をラズーミヒンに求めていたのか!」と彼は驚いて自問しました。
彼は考え込んで、額をこすりました。
すると不思議なことに、長い沈黙のあとに、偶然、思いがけず、ほとんど勝手に、一つの恐ろしい考えが頭に浮かんだのです。「ふむ……ラズーミヒンのところへ……」
彼は突然、まるで最後の決断を下したかのような、すっかり落ち着き払った調子でそう言いました。
「ラズーミヒンのところへは行こう、それは当然だ……だが――今じゃない。あいつのところへ行くのは……例の計画を片付けた翌日にしよう。すべてが終わり、何もかもが新しくやり直せるようになったその時に……」
そう言いかけて、彼はふいにはっと我に返りました。
「例の計画の後で!」
ベンチから飛び上がるようにして、彼は叫びました。
「しかし、本当にあんなことをやるのか? 実際、自分にそんなことができるのか?」
彼はベンチを離れて歩き出しました。ほとんど駆け出すような速さでした。
彼はもと来た道を引き返そうとしましたが、家へ帰るのが急にたまらなく嫌になりました。あの狭い片隅で、まるで押し入れのようなあの恐ろしい小部屋で、もう一か月以上も「あれ」が熟成されてきたのです。
彼はあてもなく足の向くままに歩き出しました。
神経の高ぶりは、熱病のような戦慄へと変わっていました。彼は悪寒さえ感じました。この暑さの中で、体が震えてきたのです。
コメント