初級翻訳・罪と罰 第84話

ドストエフスキー

たいていのことは人に譲り、同意してしまうようなところがありました。
時には自分の信念に反することすら受け入れてしまうこともありました。
しかし、彼女には決して踏み越えてはならない、正義と戒律、そして信念の境界線がしっかりとあり、どんな事情があっても、その一線だけは決して譲ることがなかったのです。ラズーミヒンが帰ってから、ちょうど二十分が過ぎたころ、コツコツとせわしないノックの音が二つ響きました。
ラズーミヒンが戻ってきたのです。
「中には入りませんよ、時間がないので!」ドアを開けるなり、彼は早口で言いました。
「彼は寝ていますよ。それこそ、死んだようにぐっすりと。
とても静かに眠っています。
どうか十時間くらいはそのまま寝かせておいてやりたいものです。
傍にはナスターシャをつけてあります。
僕が戻るまで絶対に離れないようにと言いつけてきましたから。
次はゾシーモフを連れてきます。
彼が診察して、詳しい報告をしてくれるはずです。
さあ、あなた方もそろそろゆっくりお休みになったほうがいい。
見ての通り、もう精も根も尽き果てているようですから……」
そう言い終えるやいなや、彼は二人のそばを離れ、廊下を飛ぶように駆け去っていきました。

「なんて気さくで、しかも……頼りになる人なんでしょう!」プリヘーリヤは無上の喜びを感じて声を上げました。
「本当に、いい人みたいね!」アヴドーチャは少し熱を帯びた声で答え、またしても部屋の中をあちこちと歩き回りました。

それから一時間ほどしたころ、廊下に足音が響き、再びノックの音が聞こえました。
二人の女性は、今度こそはとラズーミヒンの約束を信じて待っていました。
案の定、彼はゾシーモフを連れてやってきたのです。
ゾシーモフはせっかくの酒宴を途中で投げ出し、ラスコーリニコフの様子を見に行くことに同意してくれました。
もっとも、ゾシーモフは酔っ払ったラズーミヒンの言葉を半分も信用しておらず、かなり疑心暗鬼な気持ちで、しぶしぶやって来たのでした。
ところが、実際に二人の婦人に会うと、彼の自尊心はすぐに満たされたばかりか、なんだか嬉しくなってしまいました。
自分がまるで予言者か何かのように、今か今かと待ちわびられていたことを目の当たりにしたからです。
彼はわずか十分ほどしか座っていませんでしたが、その短い時間でプリヘーリヤをすっかり説得し、安心させてしまいました。
彼は深い同情を込めて話しましたが、態度は終始控えめで、わざとらしいほど真面目でした。
それはまるで、重病人の診察にあたる二十七歳の医師といった風格でした。
また、仕事以外の私的なことには一言も触れず、二人の婦人と個人的に親しくなろうとするような素振りも一切見せませんでした。
部屋に入ったとき、アヴドーチャの目がくらむほどの美しさに気づきましたが、彼はそこにいる間、彼女のほうを一度も見ないように努め、ただプリヘーリヤにだけ話しかけていたのです。
こうした振る舞いすべてが、彼の心にこの上ない満足感を与えていました。

彼は病人の容体について、今のところは非常に順調に向かっていると説明しました。
彼の観察によれば、この病気は、ここ数か月の貧しい生活に加えて、いくつかの精神的な原因が重なっているとのことでした。
つまり、「さまざまな複雑な精神的・物質的な影響や、不安、恐れ、気苦労、あるいは特定の考え……そういったものの積み重ねの結果」だというのです。
アヴドーチャが特に熱心に耳を傾けていることに気づくと、ゾシーモフはさらにこの話を詳しく説明しました。
「何やら発狂の兆候があるとも聞きましたが」というプリヘーリヤの心配そうな、おずおずとした問いかけに、彼は落ち着いた穏やかな笑みを浮かべ、自分の言葉が少し大げさすぎたと答えました。
もちろん、病人に一種の思い込みや、こだわりが強すぎる一面が見られるのは確かです――実際、ゾシーモフ自身、医学的に非常に興味深いこの点に注目してはいるのですが――しかし、病人がこれまでずっと高熱にうなされていたことや、それに……そう、何より親しい家族の到着が彼を力づけ、気持ちを紛らわせて良い影響を与えるはずだと考慮に入れるべきでしょう。
「ただ、彼に新たな精神的ショックを与えないようにさえすればですね」と、彼は意味ありげに付け加えました。

その後、彼は立ち上がると、重々しくも丁寧な挨拶をしました。二人の婦人からの祝福と、燃えるような感謝、そして哀願の言葉を浴び、さらには求めもしないのに差し出されたアヴドーチャの手を握りながら、彼は自分の診察、そして何よりも自分自身の振る舞いにこの上なく満足して、部屋を出て行きました。

「詳しい話は明日にしましょう。
今夜はもうお休みください、今すぐ、必ずですよ!」ゾシーモフと一緒に部屋を出ながら、ラズーミヒンは念を押しました。
「明日はできるだけ早く、報告を持ってうかがいます」
「それにしても、あの娘さん、アヴドーチャ・ロマーノヴナというのか。なんてすばらしい女性なんだ!」外に出るやいなや、ゾシーモフは舌なめずりしそうな勢いで言いました。
「すばらしい? 貴様、今すばらしいと言ったな!」ラズーミヒンは吠えるように叫ぶと、いきなりゾシーモフに飛びかかり、その喉元に手をかけたのです。「もしお前が、万が一にも少しでもずうずうしい真似をしてみろ……いいか? わかったか?」
ラズーミヒンは相手の襟首をつかんで激しく揺さぶり、壁に押し付けながらわめき散らしました。
「わかったのか!」
「おい、放せよ、この酔っ払いめ!」
ゾシーモフは身をよじって抵抗しました。そしてラズーミヒンが手を放すと、彼はしばらくじっと相手の顔を見つめていましたが、急に腹を抱えて笑い出しました。ラズーミヒンは両手をだらりと下げ、雨雲のようにどんよりと沈み込んだ深刻な表情で、ぼんやりと彼の前に立っていたからです。

「もちろん、俺がまぬけなのはわかってる」
ラズーミヒンは陰鬱な顔のまま、そう繰り返しました。
「だが……お前だって……やっぱり……」
「いや、違うよ、君。けっしてそんなことはない。僕はそんな妄想は抱かないからね」

二人は黙ったまま歩き続けました。ようやくラスコーリニコフの下宿近くまで来たとき、ラズーミヒンが恐ろしく心配そうな様子で、急に沈黙を破りました。
「ときに」と彼はゾシーモフに言いました。
「君は愛すべき若者だが、しかし君には、いろんな汚らわしい性質のほかに、女好きという悪い癖がある。しかも、とりわけ醜悪な方のね。僕は知ってるんだ。君は神経質で、ひ弱な意気地なしだ。気まぐれで、脂ぎって太ってきて、節制なんて微塵もできやしない――これはもう醜悪と言わざるを得ない。だって、必ず醜悪な結末を迎えるに決まっているからな。君はすっかり体を甘やかしている。忌憚なく言うが、そんな生活をしていて、どうして立派な献身的な医者になれるのか、僕にはすこぶる疑問だよ。羽根布団で寝て(医者のくせに!)それで夜中に患者のために駆けつける……だが、三年もすれば、君は患者のために起きるようなことはなくなるだろうね……くそっ、腹立たしい、問題はそんなことじゃない。問題はこれだ。

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