初級翻訳・罪と罰 第81話

ドストエフスキー

しかも、自分の思いを強調するためか、一言ごとに二人の手を、まるで万力で締め付けるかのように、痛いほど強く握りしめました。そして、遠慮のかけらもなく、アヴドーチャ・ロマーノヴナを食い入るように見つめ続けるのでした。

二人はそのあまりの痛さに、ときおり彼の大きくてごつごつした手から手を振りほどこうとしましたが、彼は気づく様子もなく、それどころか、かえって強く引き寄せる始末でした。もし今二人が彼に向かって「私たちのために階段から飛び降りなさい」と言ったなら、彼は少しも疑うことなく、文句なしにすぐ実行したに違いありません。

ロージャのことが心配でたまらないプリヘーリヤは、この青年がひどく常軌を逸した様子で、むやみに手を締め付けていることには気づいていました。しかし、彼女にとってこの男は神様のように頼もしく感じられたので、その突飛な振る舞いを気に留める余裕もありませんでした。

けれど、同じ不安に駆られながらも、アヴドーチャの方は、もともと気の小さい方ではありませんでしたが、この荒々しく情熱的な兄の友人のまなざしを、驚きというよりは恐怖に近い感情で受け止めていました。ナスターシャの話で植え付けられた、この不思議な男に対する絶大な信頼がなかったら、きっと母の手を引いてその場から逃げ出していたことでしょう。とはいえ彼女も、自分たちがこの男から逃げ出すわけにはいかないことを悟っていました。

やがて十分ほど経つと、彼女は目に見えて落ち着きを取り戻しました。ラズーミヒンには、どんな気分の時でも、自分のすべてを一瞬でさらけ出してしまうという特性がありました。そのため、誰でもすぐに彼の人となりを見抜くことができたのです。

「おかみさんのところなんてダメです、そんなの愚の骨頂ですよ!」彼はプリヘーリヤを説き伏せようと叫びました。「よしんばあなたが母親だとしても、ここに残られたらロージャは気が狂ったようになってしまいます。そうなったら、どんなことになるか分かりませんよ! こうしましょう。今からそこにナスターシャを置いておきますから、僕があなた方をお送りします。二人きりで町を歩くなんてことはできません。このペテルブルグという街は、そういう点では……いや、そんなことはどうでもいい! それから、あなた方のところからすぐここへ戻ってきて、十五分も経てば、誓ってまた報告をしに来ます。ロージャがどうしているか、眠っているかどうか、そういった情報をね。それから……いいですか、それから一走り僕の家へ行って――家には客がいてみんな酔っ払っているんですが――ゾシーモフを連れてきます。ロージャを診ている医者ですよ。今僕のところにいますが、彼は酔っていませんから。この男は決して酔わないんです! この男をロージャのところへ連れて行って、それからすぐにまたあなた方のところへ飛んで帰ってきます」つまり、あなた方は一時間のうちに、ロージャについて二つの報告を受け取れるわけです。――それも、お医者さんからの報告ですよ。
いいですか、主治医の報告ですよ。
これはもう、僕なんかの話とはわけが違いますからね! もし病人の様子が悪ければ、誓ってすぐあなた方をここへご案内します。
もし様子が良いようだったら、そのままゆっくりおやすみなさい。
僕は一晩中、入り口の間に泊まりますよ。
ロージャは気がつきゃしません。
そして、ゾシーモフはあのおかみさんのところに泊まらせます。
手近にいてもらうためにね。
さあ、どうです、この際あなた方と医者と、どちらがいいでしょう? ねえ、お医者さんの方が役に立つでしょう、役に立つでしょう。
だから、これでお帰りなさい! おかみさんのところへ行くのはダメです。
僕はいいけれど、あなた方はダメですよ。
入れてくれやしませんから。
というのは……というのは、あの女が頭の弱い人間だからです……あの女はアヴドーチャ・ロマーノヴナのことで、僕を妬くに決まってます。
それから、あなたに対してもそうですが……アヴドーチャ・ロマーノヴナに対しては間違いありません。
あれは全く、全く予想もつかない性格の女ですよ! もっとも、僕だってやっぱり馬鹿だなあ……なに、どうだっていいや! さあ、行きましょう! あなた方は僕を信じてくださいますか? ええ、僕を信じてくださいますか、それともダメですか?」

「帰りましょうよ、お母さん」とアヴドーチャは言った。
「この方はきっと約束通りにしてくださるわ。
だって、現に兄さんを生き返らせてくだすったんですもの。
それに、もしお医者さまが本当に泊まるのを承知してくださるなら、それに越したことはないじゃありませんか?」

「そうだ、あなたは……あなたは……僕を理解してくださる。
あなたは――天使だから!」とラズーミヒンは有頂天になって叫んだ。
「行きましょう! ナスターシャ! 大急ぎで上って行って、病人の傍についていてくれ、灯を持ってだよ。
僕は十五分たったら帰ってくる……」

プリヘーリヤはまだ十分納得していなかったが、それ以上反対もしなかった。
ラズーミヒンは二人に腕を貸して階段を連れて降りた。
とはいえ、彼は母親に不安を感じさせていた。
『そりゃ気さくないい人だけれど、約束したことがみんな実行できるのかしら? だってこんなに酔っ払っているんだもの……』

「ああ、わかった、あなたは僕がこんなだらしない姿なのを、気にしていらっしゃるんですね!」ラズーミヒンはそれと察して、彼女の懸念をさえぎった。
彼は持ちまえの並みはずれた大股で、歩道をかっぽして行ったので、二人の女はやっとのことで彼のあとについて行ったが、彼はそれに気もつかなかった。

「ばかばかしい! というのは……僕が間のぬけた酔っ払い面をしてることですよ。
しかし、問題はそんなことじゃありません。
僕はなるほど酔っていますが、それはお酒のせいじゃありません。
これはあなた方を見たとたんに僕の頭へガツンと来たんです……だが、僕のことなんか唾でも引っかけてください! 気にとめないでください。
僕は口から出まかせを言っているんです。
僕はあなた方に値しない……僕はとうていあなた方に値しない人間です! あなた方をお送りしたら、さっそくここの濠(ほり)ばたで、水を二桶も頭から浴びてきます。
そうしたらもう平気です……ああ、僕がどんなにあなた方を愛しているか、それをあなた方が知ってくだすったらなあ!……笑わないでください、そして怒らないでください! ほかの者なら誰をお怒りになってもいいが、僕だけは怒らないでください! 僕はロージャの友人ですから、したがってあなた方の友人です。
僕はそうしたいんです……僕はそれを予期していました……去年、なんだかこう、そうした瞬間があったんです……もっとも、けっして予感なんかしたわけじゃありません。
だってあなたは、まるで天から降ってきたようなんですものね。
僕は今晩おそらく夜っぴて寝られないでしょう……そのゾシーモフという男も、さっきロージャが気が狂ったんじゃないかと、心配していましたっけ……ね、だからロージャをいらいらさせちゃいけないんですよ……」

「え、なんとおっしゃるんです!」と母は叫んだ。

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