初級翻訳・罪と罰 第93話

ドストエフスキー

つまり、その男を家まで運ぶのを手伝ったときに、血まみれになったんだ。……ところで、お母さん。僕は昨日、一つ申し訳ないことをしてしまった。実際、正気じゃなかったんだ。お母さんが送ってくれたお金を、昨日全部使い果たしてしまったんだよ……その男の奥さんにね。葬儀の費用として渡したんだ。今は未亡人になった、肺病を患うあわれな女性でね……小さい孤児が三人、お腹をすかせていて……家の中は空っぽだった。まだ他に娘も一人いるんだけれど……。実際、その光景を見たら、お母さんだって同じことをしたかもしれないよ……。もっとも、僕にそんな権利があったわけじゃない。特にお母さんがどうやってそのお金を工面してくれたか、知っているんだからね。人を助けるには、まずその権利を得なきゃいけない。そうじゃないと、――ひもじいなら犬でも殺せ、ってことになるからね!」
彼はからからと笑い出しました。
「そうだろう、ねえ、ドゥーニャ?」

「いいえ、そんなことはないわ」ドゥーニャはきっぱりと言いました。

「へえ! じゃあ、お前も……何か考えがあるんだな!」
彼はほとんど憎しみを込めたような眼差しで妹を見つめ、あざ笑うような微笑を浮かべながらつぶやきました。
「僕もそれを計算に入れなきゃいけなかったんだな……まあいいさ、結構なことだ。それはお前のためになるよ……そして、ある一線を越えることになる。それはね、越えなければ不幸になるけれど、越えてしまえば、もっと不幸になるかもしれない、そんな一線なんだ……もっとも、こんな話はみんなくだらない!」
つい本心とは裏腹に夢中になってしまった自分をいまいましく思いながら、彼はイライラした様子で付け加えました。
「僕はただ、お母さんに許してほしいと、それだけを言いたかったんだ」
彼は角のある、ぶっきらぼうな言い方でこう締めくくりました。

「もういいのよ、ロージャ。私はね、お前がすることなら何でも立派なことだと信じているから!」
母親はとても嬉しそうに言いました。

「信じない方がいいですよ」
彼は口元をゆがめて笑い、母親の言葉を遮りました。

そのあと、沈黙が流れました。会話も、沈黙も、和解も、許し合いも、すべてがどこか張り詰めていて、その場にいる誰もがそれを感じていました。

『どうも、みんながおれを恐れているようだ』
ラスコーリニコフは上目遣いに母と妹を見ながら、心の中で考えました。実際、プリヘーリヤは黙っていればいるほど、ますますおじけづいていくようでした。
『離れている間は、おれも二人に対して深い愛情を抱いていたはずなのに』
そんな考えが彼の頭をよぎりました。

「ねえ、ロージャ、マルファ・ペトローヴナが亡くなったのよ!」
母親が突然、そう切り出しました。

「マルファ・ペトローヴナって、誰のことですか?」

「あら、まあ! スヴィドリガイロフさんの奥さんのマルファ・ペトローヴナよ! この前の手紙で、あんなに詳しく知らせてあげたじゃないの」

「ああ……覚えています……じゃあ、死んだんですか? え、本当に?」
彼は急に目が覚めたかのように、ガタッと身震いをしました。「本当に死んだんですか? どうしてまた?」

「それがね、あまりに突然のことだったんですよ!」とプリヘーリヤは、息子が興味を示してくれたことに元気づけられ、せき込むようにして言いました。
「ちょうど私がお前に手紙を出した、まさにその日だったんです! 世間の噂では、あの恐ろしい夫が、どうやらその原因を作ったらしいんですよ。なんでも、奥さんのことをひどく殴りつけたとかでね!」

「じゃあ、その夫婦はいつもそんな関係だったのかい?」と、彼は妹の方を向いて尋ねました。

「いいえ、まるで逆よ。あの人は奥さんに対していつも我慢強くて、丁寧なくらいだったわ。たいていの場合、奥さんの気性を大目に見すぎていたくらい。まる七年の間ずっとね……それなのに、どうしたのか急に堪忍袋の緒が切れたみたいだったの」

「ふうん。七年も辛抱したのなら、それほど恐ろしい男でもないじゃないか! ドゥーネチカ、お前はあの男をかばっているのかい?」

「嘘よ、そんなの嘘よ! あれは本当に恐ろしい人なの。私には、あれ以上恐ろしい人なんて想像もできないわ」とドゥーニャは震え上がらんばかりの様子で言い、眉をひそめたまま考え込みました。

「それは朝のうちの出来事だったんだよ」とプリヘーリヤはせかせかと話を続けました。「そのあとで奥さんは、昼の食事を済ませるとすぐに、町へ行く馬車の支度を言いつけたの。だって、あの人はそんな時、決まって町へ行くことにしていたからね。食事の時だって、とてもおいしそうに食べていたという話だったし……」

「殴られたばかりなのに?」

「もっとも、あの人にはいつもそうした……癖があったんだけどね。で、昼食を済ませると、町へ行くのが遅くならないようにと、さっそく水浴び場へ向かったそうだよ。実は、あの人は何かそんな水浴療法をしていたらしくてね。あそこには冷たい泉があって、毎日決まって入っていたそうなんだよ。ところが、水に入った途端に、いきなり発作が起きたんだね!」

「そりゃそうでしょうとも!」とゾシーモフが口を挟みました。「で、あの男は本当に細君をひどく殴ったんですか?」

「そんなこと、どうでもいいじゃありませんか」とドゥーニャが遮りました。

「ふむ! しかし、お母さんも物好きですね。こんなくだらない話をするなんて」と、ふいにラスコーリニコフはいら立たしげに、つい口がすべったという調子で言いました。

「まあ、お前。私、もう何を話せばいいのか分からなくなってしまってね」とプリヘーリヤは思わず本音を漏らしました。

「一体どうしたんです、あなた方はみんな僕を怖がってでもいるんですか?」と、彼はひねくれたような微笑を浮かべて言いました。

「そりゃ全くその通りよ」ドゥーニャは厳しい目つきでまっすぐに兄を見つめて言いました。「お母さんは階段を上る時から、びくびくして十字を切っていたくらいなんですもの」

彼の顔が、けいれんしたようにゆがみました。

「ああ、ドゥーニャ、お前何を言うんだね? ロージャ、お願いだから怒らないでね。ドゥーニャ、なんだってお前はそんなことを!」とプリヘーリヤはあわてふためいて言いました。「私はね、ここへ来る途中も、汽車の中でずっと考えてばかりいたんだよ――お前に会った時のことや、お互いにどんな話をしようかとかね。そう思うと、うれしくてうれしくて、道中の長さなんて忘れてしまうくらいだったのよ! まあ、私は何を言っているのかしら! 私は今だって幸せなのに、ドゥーニャ、本当にお前は余計なことを……私は今、お前の顔を見ているだけでも、うれしくてたまらないんだよ、ロージャ……」

「もういいですよ、お母さん」彼は母の方を見ようともせず、その手を握りしめながら、当惑したようにつぶやきました。「まだ話はいくらでもできますよ!」

そう言ったかと思うと、彼は急にどぎまぎして、さっと顔色を変えました。
またしても、あの間の恐ろしい感覚が、死のように冷たく彼の胸を走り抜けたのです。自分がいま、恐ろしい嘘をついたことが急にハッキリと分かりました。

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