初級翻訳・罪と罰 第125話

ドストエフスキー

わたしの見たところでは、ご子息はあなたご自身の通信を基礎にして、わざとばかばかしいくらい言葉の意味を誇張し、まるでわたしが何か悪だくみでもしているかのように非難なさいました。
プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナ、どうかわたしの誤解を解いて、安心させてくだされば、わたしはそれをもって幸福といたします。つまり、わたしの言ったことをどんな形で、ロジオン・ロマーヌイチ宛ての手紙にお伝えになったのか、一つ聞かせていただきたいものです」

「わたしはもう覚えておりませんので」とプリヘーリヤはしどろもどろになりました。
「わたしは自分で伺ったとおりに書いてやりましたので、ロージャがあなたになんとお伝えしたか存じませんが……ことによったら、あれが本当に何か大げさに申したのかもしれません」

「しかし、あなたの暗示がなかったら、ご子息もそこまで誇張なさるわけがないでしょう」

「ピョートル・ペトローヴィッチ」とプリヘーリヤはきっぱりと言いました。
「わたしとドゥーニャとが、あなたのお言葉を大して悪い方へ受け取らなかったのは、わたしたちが今こうしてあなたのもとへ来ていることが証拠でございます」

「そうですよ、お母さん!」とドゥーニャも賛成するように言いました。

「してみると、この件もやはりわたしが悪いということになるんですな!」とルージンはむっとしました。

「ピョートル・ペトローヴィッチ、あなたはそういう風に、何もかもロージャをお責めになりますけれど、あなただって、先ほどのお手紙に、あの子のことで嘘を書いていらっしゃるじゃありませんか」とプリヘーリヤは急に元気づいて、こう付け加えました。

「わたしが何か嘘を書いたなんて、そんな覚えはありませんな」

「あなたはこう書いておられるのです」ルージンの方をふり向こうともせず、ラスコーリニコフはずけずけと言い放ちました。
「僕が昨日金を渡したのは、まさに轢死者の寡婦だったのです。それを寡婦ではなく、娘にやったのだなんて書いておられる(その娘というのは、僕、昨日まで見たこともなかったんですよ)。あなたがそれを書かれたのは、僕を家族と喧嘩させるためで、そのために陋劣(ろうれつ)きわまる文句で、自分の知りもしない娘の素行を書き添えたんです。それはみな、卑しい陰口というものです」

「失礼ですが」憤怒に身を震わせながら、ルージンは答えました。
「あの手紙であなたの性格や行為にまで言い及んだのは、ただそれによって、ご令妹とご母堂の依頼を履行したまでです。つまり、あなたをお訪ねした時の模様はどうだったか、あなたがわたしにどんな印象を与えられたか、そういうようなことを細かく知らせてほしいとのことだったのです。ところで、いま指摘された手紙の文面に関しては、そこに一行でも事実と相違する点があったら、見せていただきましょう。つまり、あなたが金を使われなかったかどうか、あの家族はたとえ不仕合わせだとは言え、汚らわしい人間は一人もいなかったかどうか、というような点に関してですな」

「が、僕に言わせると、あなたなんかありたけの美点をかき集めても、あなたがいま石を投げているあの不幸な娘の、小指ほどの価値もありゃしない」

「すると、あなたはあの女をご母堂や、ご令妹と一座させるだけの決心がおありですな?」

「それはもう実行しましたよ。もし知りたいとおっしゃれば申しますがね。僕は今日あの娘を、母とドゥーニャと並んで座らせましたよ」

「ロージャ!」とプリヘーリヤは叫びました。
ドゥーネチカは顔を赤らめ、ラズーミヒンは眉を寄せました。
ルージンは毒々しく、高慢ちきにニヤリと笑いました。

「アヴドーチャ・ロマーノヴナ」と彼は言いました。
「ごらんのとおりですから、これじゃ話の折り合うわけがありません。わたしはもうこれで永久に万事終了したもの、事情は明らかになったものと考えさせていただきます。もはやこの上、親子兄妹対面のお楽しみや、秘密の伝達のお邪魔をしないように、遠慮することといたしましょう(と彼は椅子から立ち上がり、帽子を取りました)。けれど、帰りがけにあえて注意させていただきますが、こんな出会い、いや、あいまいな妥協は、ごめんこうむりたいものですな。プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナ、あなたには特にこの点をお願いしておきます。ましてあの手紙はほかの誰でもない、あなたに宛てたものなんですからな」

プリヘーリヤも少々むっとして言い返しました。
「あなたはなんですか、わたしたちをご自分の権力で、自由にしようとしていらっしゃるようですね、ピョートル・ペトローヴィッチ。どうしてあなたのお望みどおりにしなかったかというわけは、もうドゥーニャが申し上げた通りです。あの子には、いい考えがあったのですから。それにあなたのお手紙は、まるで命令でも下すような書き方ではありませんか。いったいわたしたちは、あなたのお望みを、一から十まで命令のように守らなければならないのでしょうか? それどころか、はっきり申し上げますけれど、あなたは今、わたしたちに対して誰よりも優しく、寛大でなければならない立場のはずです。だって、わたしたちは何もかも捨てて、ただあなただけを頼りにここまで出てきたのですもの。そう考えると、わたしたちは以前から、大方あなたの手の中、あなたの権力の下に置かれているようなものではありませんか」

「いや、そうばかりとも言えませんよ、プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナ。ことに今しがた、マルファ・ペトローヴナの遺言状によって、三千ルーブリの遺産があることが明らかになった後ですからな。しかも、あなた方のわたしに対する態度が急に変わったのを見ても、非常にタイミングの良い幸運だったようですね」と、彼は嫌味たっぷりに言い足した。

「そのお言葉からすると、あなたは本当に、わたしたちの頼りない身の上を当てにしていらしたのだと解釈してもよさそうですね」と、ドゥーニャがいらだたしげに言った。

「けれども、今は少なくとも、そんなことを当てにするわけにはいきません。それに、アルカージイ・イヴァーヌイチ・スヴィドリガイロフ氏の秘密の申し出を伝達するお邪魔をしたくもありませんからな。あの男は、ご令兄にその全権を委任したのでしょう。わたしの見るところでは、その申し出はあなたにとって重大な意味、いや、もしかすると、きわめて愉快な意味を持っているのかもしれませんな」

「まあ、なんてことをおっしゃるの!」とプリヘーリヤが叫んだ。
ラズーミヒンは椅子の上でじっとしていられず、体を揺らした。

「お前、そんなことを言われて恥ずかしくないのかい、ドゥーニャ?」とラスコーリニコフが尋ねた。

「恥ずかしいわ、兄さん」とドゥーニャは答えた。
彼女は怒りでさっと顔を青ざめさせると、ルージンの方を向き、きっぱりと言い放った。
「ピョートル・ペトローヴィッチ、とっとと出て行ってください!」

ルージンは、事態がこのような結末を迎えるとは夢にも思っていなかったらしい。彼は、自分自身の力と、二人の女性が頼りない境遇にあるという状況に、あまりに希望をかけすぎていたのだ。今起きたことが、まだ現実のこととは信じられない様子だった。

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