初級翻訳・罪と罰 第163話

ドストエフスキー

彼はそこに仁王立ちになったまま、厳しい目つきで部屋中を見回しました。
カチェリーナは彼のそばへと駆け寄りました。

「ピョートル・ペトローヴィッチ!」と彼女は叫びました。
「せめてあなただけでも、私の味方になってください! あの馬鹿女に言ってやってくださいよ。不幸な目に遭っている潔白な婦人に対して、あんなひどい扱いをするなんて許されない。そんなことをすれば裁判沙汰になるぞって……。私は総督様へ直々に訴えるつもりです……あの女はきっと報いを受けるわ……。どうか、亡くなった父がお尽くししたことを思い出して、このみなしごたちを守ってあげてください!」
「まあ、まあ、奥さん……。いやはや、失礼ですが、ちょっと落ち着いてください、奥さん」ルージンは両手で彼女を払いのけました。
「あなたのお父さんとは、ご存じの通り、私はまだ一度もお目にかかる光栄を得ていないんですよ……。まあ、ちょっと、奥さん!(誰かが大きな声で笑いました)それに、私はあなたとアマリヤ・イヴァーノヴナの、いつまで続くかわからない喧嘩に巻き込まれるつもりはありません……。私は自分の用事があって来たんですから。早速ですが、あなたの継娘のソフィヤ……イヴァーノヴナに……確かそうでしたね?……お話ししたいことがありまして。ちょっと通してください……」
ルージンは体を横にしてカチェリーナを避けながら、ソーニャがいる反対側の隅を指して歩いていきました。
カチェリーナは雷にでも打たれたように、その場に立ち尽くしました。
彼女は、どうしてルージンが父との親交を否定したのか、どうしてもわけがわかりませんでした。
一度「親交があった」という思い込みを抱いて以来、彼女はそれを神聖で犯すべからざる事実だと信じ切っていたからです。
ルージンの事務的でそっけなく、侮辱的な威嚇に満ちた口調も、同じように彼女を驚かせました。
また、一座の者たちも、彼が現れると同時に何となく静まり返っていきました。
おまけに、この「事務的で気取った」男は、この場の雰囲気とはあまりにも際立って不釣り合いに感じられました。
それだけでなく、彼が何か重大な用件があって来たことや、彼をこのような集まりに引き出したからには、よほどの理由があるはずだ――それなら、今から何か大変なことが起こるに違いない、何かが始まるに違いないということも、皆にははっきりと予感されました。
ソーニャのそばに立っていたラスコーリニコフは、ルージンを通すために少し脇へ寄りました。
ルージンは、まるでそれに気づかない様子でした。
一分ほどして、敷居の上にレベジャートニコフも姿を現しました。
彼は部屋の中へは入りませんでしたが、一種独特な好奇心、というよりほとんど驚愕に近い表情を浮かべてそこに立ち止まり、じっと耳を澄ませていましたが、どうも何やら合点がいかない様子でした。

「せっかくの楽しそうな時間を邪魔することになるかもしれませんが、その点はお許しください。ですが、事柄はかなり重大なものなのです」と、ルージンは特に誰に向かうともなく、漠然とした口調で切り出しました。
「私はむしろ、皆さんがご列席なさっているのを好都合に思います。アマリヤ・イヴァーノヴナ、あなたは家主という立場ですから、これから始まる私とソフィヤ・イヴァーノヴナとの話を、注意して聞いてくださるようにお願いします。ソフィヤ・イヴァーノヴナ」と、彼は驚き惑っているソーニャの方を向いて言葉を続けました。
「私の友人アンドレイ・セミョーヌイチ・レベジャートニコフの部屋で、あなたが私を訪ねてくださったすぐ後で、私の持ち物である百ルーブリ紙幣が、私のテーブルの上から一枚なくなっていることに気づきました。もしあなたがそのことをご存じで、それが今どこにあるのか教えてくださるなら、私は名誉にかけて、またここにおられる皆さんを証人として誓いますが、それでこの話は終わりにしましょう。ですが、もしそうでない場合には、私はやむを得ず非常手段に訴えなければならなくなります。その時には……あなたは自分自身を恨むしかないのですよ」
部屋の中がしんとなってしまいました。
泣いていた子供までが黙り込みました。
ソーニャは死人のように青い顔をしたまま立ち尽くし、ルージンの顔を見つめるだけで、一言も返事ができませんでした。
彼女はまだ、話の内容がよく飲み込めていないようでした。
数秒が過ぎました。
「さあ、それで、いったいどうなんですか?」と、ルージンはソーニャをじっと見つめながら問いかけました。「わたしは知りません……わたし、少しも知りません……」
ようやくソーニャは、弱々しい声でそう答えました。

「知らない、と? ご存じないのですか?」
ルージンは問い返しましたが、また数秒間、黙り込みました。

「よく考えてごらんなさい、マドモアゼル(お嬢さん)」
彼は厳格ではあるものの、どこか諭すような調子で話し始めました。

「よく分別してごらんなさい。わたしは、あなたがもう少し落ち着いて考える時間を取ることには異存ありません。いいですか、もしわたしに確信がなかったら、もちろん私くらいの経験を積んだ人間が、頭からあなたに罪をなすりつけるような冒険などしませんよ。なぜなら、こうして真正面から公然とあなたを泥棒扱いすれば、たとえそれが勘違いから生じたことだとしても、ある意味で私自身が責任を問われることになりますからね。それくらいのことはちゃんと心得ています。

今日の午前中、私は必要があって、額面三千ルーブリの五分利付債券を現金に換えました。その計算は財布の中にメモしてあります。家へ帰ってから私は――その証人はアンドレイ・セミョーヌイチですが――金の計算を始めました。二千三百ルーブリまで数え終えて、それを財布にしまい、財布はフロックコートの脇ポケットに入れました。テーブルの上には紙幣で五百ルーブリほど残っていました。その中の三枚は、いずれも百ルーブリ紙幣でした。ちょうどその時、あなたが(私の招きに応じて)部屋に入ってこられたのです。

それから、私のところにいた間中、あなたは非常にもじもじしていらした。話の途中に三度も席を立ち、話がまだすっかり済んでいないのに、どういうわけか慌てて出て行こうとなさった。この事実はすべて、アンドレイ・セミョーヌイチが証明してくれますよ。マドモアゼル、おそらくあなた自身も否定はなさらないでしょう、私の言葉を認めてくださるでしょう――私がアンドレイ・セミョーヌイチを通じてあなたを呼んだのは、ひとえにあなたの義母にあたるカチェリーナ・イヴァーノヴナの、孤児同然で頼りない境遇についてお話しし、またこの方のために何か義金募集や、慈善富くじといったものを催したらどんなに有意義だろうかと、ご相談するためだったのです。

あなたは私に感謝して、涙さえお流しになりました(私はすべてをありのままにお話ししているのです。それは第一に、あなたの記憶を呼び覚ますためと、第二には、どんなささいなことでも私の記憶から消えていないということを、あなたに知ってもらうためです)。それから、私はテーブルの上から十ルーブリ紙幣を取って、義母さんの暮らしの足しにと、寸志としてあなたにお渡ししました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました