初級翻訳・罪と罰 第32話

ドストエフスキー

この前話したでしょう」
彼女は手を差し出しました。
「まあ、お前さん、何だか知らないけれど、随分と顔色が悪いじゃないか? ほら、手もそんなに震えて、何か恐ろしいことでもあったのかい?」
「熱があるんですよ」
彼は突き放すように答えました。
「それに……青くもなりますよ。食べるものもろくに食べていないんですから」
彼は一語ずつ、噛みしめるように付け加えました。
気力がまたしても尽きかけていましたが、この言い訳はもっともらしく聞こえたようです。
老婆は質草を受け取りました。
「で、これは何です?」
もう一度じろりとラスコーリニコフを見回し、手で重さを量りながら彼女は尋ねました。
「ちょっとした……シガレットケースです。銀の……まあ見てください」
「だって、どう見ても銀には見えないがね……それにしても、ひどく厳重に縛ったもんだねえ」
紐を解こうとしながら、彼女は明かりの入る窓の方へ向き直りました(この蒸し暑い日だというのに、窓はすべて閉め切られていました)。
彼女はしばらくの間、完全に彼を放り出して、くるりと背中を向けました。
彼は外套のボタンを外し、斧を輪っかから外しましたが、まだ完全には取り出さず、服の下から右手でしっかりと押さえていました。
しかし、その手は恐ろしいほど力が抜けていて、一瞬ごとにしびれ、こわばっていくのが自分でも分かりました。斧を取り出したはいいが、もし落としてしまったら……そう思うと怖くなりました。その時、ふいに頭がぐらりと揺れたような気がしました。
「まあ、どうしてこんなに絡みつかせたんだろうね!」
老婆がいまいましそうに言い、彼の方へ少し身をひねりました。
もう一瞬も待てません。
彼は斧を完全に引き抜くと、意識がはっきりしないまま、両手で振り上げました。
そして、ほとんど力を入れず、機械的な動作で、老婆の頭上へ斧の背を打ち下ろしました。
その時は力など全くないように思えましたが、一度打ち下ろしてみると、たちまち彼の全身に力がみなぎってきました。
老婆はいつも通り、何も被っていませんでした。
白髪まじりの薄い色の髪には、例の癖で油がこてこてに塗られ、ネズミのしっぽのように編まれており、それが角櫛の破片で後ろ頭に留められていました。
斧はちょうど脳天に命中しました。彼女の背が低かったからです。
彼女は「きゃっ」と小さく叫びました。本当に弱々しい声でした。
そして、両手を頭に上げたものの、そのまま床の上へ崩れ落ちました。
片手にはまだ、取り上げようとした質草を持ったままです。
その時、彼は力任せに、さらに一、二度、同じく斧の背で脳天を打ち続けました。
血がコップをひっくり返したようにほとばしり出ました。
体は仰向けに倒れました。
彼は一歩後ずさりし、倒れた老婆の顔を覗き込みました。
彼女は、もう息絶えていました。老婆の目は今にも飛び出しそうにむき出しになっており、額と顔全体はしわで埋め尽くされ、ひきつけを起こしたようにゆがんでいました。
彼は斧を死体のそばの床に置くと、流れる血で汚れないよう細心の注意を払いながら、いきなり彼女のポケットへ手を突っ込みました。あの日、彼女が鍵を取り出したあの右ポケットです。
彼の理性は今、完全に冴え渡っていました。さっきまでの混乱やめまいなど、どこへやら消え失せています。
それでも、手だけは震え続けていました。
後になって思い出したことですが、この時、彼は驚くほど慎重で、絶えず血で自分を汚すまいと必死になっていたのです。
……鍵はすぐに見つかりました。
全部、あの時のように鋼の輪に通されて、一まとめになっていました。
彼はそれをひっつかむと、すぐさま寝室へ駆け込みました。
そこはとても小さな部屋で、聖像を安置した大きな棚があり、反対側の壁際には、絹の布切れをはぎ合わせて作った綿入れ布団がかけられた、大きくてさっぱりとした寝台が据えられていました。
もう一方の壁際にはタンスがありました。
不思議なことに、鍵をタンスの鍵穴に合わせようとして、そのジャラジャラという音を聞いた瞬間、全身に電気が走るような震えが襲いました。
彼はふいに、何もかも投げ出して逃げ出したいという衝動に駆られました。
しかし、それはほんの一瞬のことです。
逃げ出すには、もう遅すぎました。
そのとき、さらに恐ろしい考えが頭をよぎり、彼は自分をあざ笑うように、にやりと笑いました。
「もしかしたら、まだ老婆は生きていて、息を吹き返すんじゃないか?」
そんな気がしたのです。
彼は鍵とタンスを放り出し、死体の方へ駆け戻ると、斧をひっつかんで、もう一度老婆の上に振りかざしました。しかし、結局打ち下ろすことはできませんでした。
死んでいるのは間違いありません。
ちかづいてかがみ込み、さらによく老婆を観察してみると、頭蓋骨が粉々に砕け、さらに少し横にずれているのがはっきりと分かりました。
彼は指で触れてみようとしましたが、大急ぎで手を引っ込めました。
そんなことをしなくても、一目見れば明らかでした。
その間にも、血は大きな水たまりのように広がっています。
ふと、老婆の首に紐がかかっているのに気づき、ぐっと引っ張ってみましたが、堅くてなかなかちぎれません。
おまけに、血でべとべとになっていました。
そのまま懐から引き出そうとしましたが、何かが引っかかってうまくいきません。
彼はじれったくなって再び斧を振り上げ、死体のそばで紐を叩き切ろうとしました。しかし、それをする勇気もなく、二分ほどごそごそと格闘したあげく、死体には触れないようにしながら、自分の手と斧を血だらけにして、ようやく紐を切り離しました。
果たして彼の予想は的中していました。財布です。
紐には木製と銅製の十字架が二つ、それにエナメルの聖像がついていました。
そしてそれらと一緒に、鋼の縁と小さな環がついた、脂ぎったヤギ革の小さな財布がぶら下がっていたのです。
財布は中身でパンパンに膨らんでいました。
ラスコーリニコフは中身を確認もせず、それをポケットにねじ込むと、十字架を老婆の胸の上に放り投げ、再び斧をひっつかんで寝台の方へ駆け戻りました。
彼はひどく焦っていて、鍵を握りしめるとまたもやいじくり回し始めましたが、なぜかうまくいきません。鍵がどうしても鍵穴にはまらないのです。
手がひどく震えているわけでもないのに、何度も何度も間違えてばかりいました。たとえば、合い鍵ではないと分かっているのに、それだと知りながら強引に押し込もうとするような具合です。
そのうちふと気がついて考えを巡らせました。他の小さな鍵に混じってぶら下がっている、ギザギザのついた大きな鍵は、どう考えてもタンス用ではない(これは前にも頭をよぎったことでした)。きっと長持ちの鍵に違いない。
そして、その長持ちの中にこそ、すべてが詰まっているはずだ。
彼はタンスを諦め、すぐさま寝台の下へ潜り込みました。
年寄りはたいてい、長持ちを寝台の下に置くものだと知っていたからです。
案の定、そこには長さ一アルシン(約七十センチ)以上もあり、そり蓋がついて、赤いヤギ革を張り、鋼鉄の鋲を一面に打った、かなり立派なトランクが置かれていました。

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