初級翻訳・罪と罰 第47話

ドストエフスキー

そして、今こうして思い出したことも、決して偶然ではないような気がした。自分が以前と同じこの場所に立ち止まっている、ただその事実だけでも、なんだか奇妙で、ありえないことのように思えた。まるで、以前と同じように物事を考えたり、つい先ほどまで興味をもっていたのと同じ題目や光景に、今もまだ興味をもつことができるかのように……彼は自分でもおかしいような気がしたが、同時に胸が痛いほど締めつけられるのを感じた。

足元にある深い水底に、以前の思想も、以前の問題も、以前のテーマも、以前の印象も、目の前に広がるこの景色全体も、そして彼自身も――何もかもが、見え隠れしながらそこに沈んでいるような気がした。彼は自分がどこか高いところへ飛んでいき、あらゆるものがみるみるうちに消えていくような感覚に襲われた……彼は思わず無意識に手を動かした拍子に、ふと拳の中に握りしめていた二十カペイカの感触に気がついた。彼は拳を開いてじっと銀貨を見つめていたが、大きく手をひと振りして、それを水の中へ投げ込んでしまった。

それからくるりと背を向け、帰路についた。彼はこの瞬間、まるでカミソリか何かで、自分という人間を、周囲のあらゆる人や物から、ぶっつりと切り離してしまったような気分だった。

家にたどり着いたときには、もう夕方になっていた。結局、かれこれ六時間も歩き回っていたことになる。どこをどう歩いて帰ってきたのか――彼にはさっぱり記憶がなかった。服を脱ぐと、へとへとに使い果たされた馬のように全身をわなわなと震わせながら、長椅子の上に横になった。外套をひっかぶると、たちまち意識が途絶えた。

たそがれの色がすっかり濃くなったころ、彼は恐ろしい叫び声に飛び起きた。大変だ、一体なんという叫び声だろう! こんな不自然な物音や、咆哮や、悲鳴や、歯ぎしりや、泣き声や、激しく叩く音や、罵詈雑言は、これまで一度も聞いたことも見たこともなかった。これほど獣のような暴行の音や、激しい怒りの発作は、想像することさえできなかった。彼は恐ろしさに身を起こし、ひっきりなしに怯え、悩みもだえながら寝床の上に座っていた。

しかし、つかみ合いの音や、悲鳴や、罵る声は、ますます激しくなっていく。やがて驚いたことに、彼はふとこの家の大家のおかみの声を聞き分けた。彼女はうなったり、金切り声で叫んだり、なにやら必死に言い訳をしている。あわててせき込み、言葉を詰まらせながら、祈るような調子でしゃべっているので、何を言っているのかは聞き取れなかったが――もちろん、階段で情け容赦なく殴られているのだから、叩くのをやめてくれと懇願しているに違いなかった。男が怒鳴り声を上げている。その声は、憎しみと憤怒のあまり聞いているだけで恐ろしく、しわがれた音を立てるばかりだったが、それでも喉を詰まらせるようにして、何か早口でわけのわからないことをまくしたてていた。

その時、突然ラスコーリニコフは木の葉のように震え出した。彼はその声の主に気づいたのである。
それは、副署長の声だった。
イリヤー・ペトローヴィッチがここにやって来て、大家のおかみを殴っているのだ! 足蹴にしたり、頭を階段の手すりにぶつけたりしている――それは明らかだった。
物音や、悲鳴や、打たれる音でそれとわかった。一体これはどういうことだ? 世界がひっくり返ったとでもいうのか? どの階の住人も、階段のほうへ群がってくるのが聞こえる。
人声や叫び声が響き渡る。
階段を上ってくる足音、靴をゴトゴト鳴らす音、ドアがバタンと閉まる音。
方々から人が駆けつけてくる。
「だが、一体なんのために? なんのためにあんなことをするんだ? どうしてあんなことができるんだ?」
ラスコーリニコフは、自分がいよいよ頭がおかしくなったのだと本気で考えながら、何度もそう繰り返した。
しかし、そんなはずはない。あまりに現実の音として聞こえすぎている……。もしこれが現実なら、彼らはここへもすぐにやって来るに違いない。
「だって……確かにこれは昨日のあのことから……昨日の件が原因なんだ……ああ、大変なことになった!」
彼は戸に鍵をかけようとしたが、指先に力が全く入らなかった。……それに、そんなことをしても無駄だ! 氷のような恐怖が彼の魂を包み込み、苦しめ抜いたあげく、彼の体を石のように硬直させてしまった。……けれどもやがて、まるまる十分間も続いた騒動は、ようやく少しずつ静まっていった。

おかみはため息をついたり、うなったりしている。副署長はまだ脅したり罵ったりしていたが……やがて、ついに彼も黙り込んだらしい。
ああ、もう彼の声は聞こえない。
「本当に行ってしまったのか? ありがたい!」
そうだ、現におかみも相変わらずうなったり泣いたりしながら、奥へ去っていく……。ついに居間のドアがパタンと閉まった。見物していた群衆も階段を降りて、それぞれの住まいへ散っていく――ため息をついたり、言い争ったり、叫び合ったりしているが、その声はわめき声に近いほど高くなったかと思うと、ささやくように低くなっていった。
きっと、大勢が集まっていたに違いない。
建物中の人間が駆けつけたようだった。
「だが、どうしてこれが現実なんだ! それに、どうしてあいつがわざわざここへやってきたんだ!」

ラスコーリニコフはぐったりと長椅子の上に倒れ込んだが、もう目を閉じることができなかった。
かつて経験したこともないような、底知れぬ恐怖と、言葉にできない苦痛の中で、三十分ほど意識を失うように倒れていた。
ふいに、あざやかな光が部屋をぱっと照らした――ナスターシャが蝋燭とスープの皿を持って入ってきたのだ。
彼女は注意深く彼を見回し、彼が起きていたのを確認すると、蝋燭をテーブルに置き、持ってきたものを並べ始めた。パンと塩と、皿と、スプーンだ。
「あんた、昨日から何も食べてないんだろう。一日中ふらふら歩き回って、しかも熱で体じゅう震わせてるんだから」
「ナスターシャ……どうしてかみさんは殴られたんだい?」
彼女は穴のあくほど彼を見つめた。
「誰が殴られたって?」
「今しがた……三十分ほど前に、イリヤー・ペトローヴィッチが、あの警察の副署長が、階段の上で……。なぜあの男はあんなにおかみを打ちのめしたんだ! それに……なんのために来たんだい?」
ナスターシャは黙って眉をひそめ、じろじろと彼を見回した。いつまでも見つめている。
彼はその長い凝視に耐えられず、不愉快でたまらなくなった。それどころか、恐ろしくさえなってきた。
「ナスターシャ、どうして黙ってるんだい?」
彼はとうとう、弱々しい声で怯えながら言った。
「それは血だよ」
やがて彼女は、小さな声で独り言のように答えた。
「血!……何の血だ!……」
彼は真っ青になり、壁の方へじりじりと後ずさりしながらつぶやいた。
ナスターシャは無言のまま彼を見つめ続けた。
「誰もかみさんなんて殴っちゃいないよ」
彼女は、きっぱりとした厳しい調子で言い切った。
彼は息を止めるほど緊張して彼女を見つめていた。
「おれはこの耳で聞いたんだ……寝てやしなかった……ずっと座っていたんだ」
彼は前よりもさらにおずおずと言った。

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