初級翻訳・罪と罰 第89話

ドストエフスキー

「では、あなたもピョートル・ペトローヴィッチに対して、そのようなご意見をお持ちなのですか?」プリヘーリヤは聞かずにはいられませんでした。
「娘さんの将来の夫になる方ですから、他の意見などあるはずがありません」ラズーミヒンは、きっぱりと情熱的に答えました。
「それに、単なる世間話でお義理を言っているわけではありません。……その、つまりですね。アヴドーチャ・ロマーノヴナが、ご自分の意志で選ばれた方なのですから。もし昨日、僕がその方の粗探しをしたような態度をとったとしたら、それは僕がひどく酔っ払っていて……そのうえ、すっかり舞い上がっていたからです。そうです、夢中だったんです。のぼせあがって、完全に頭がどうかしていました。今日になってみると、恥ずかしくてたまりません!」
彼は顔を真っ赤にして黙り込みました。
アヴドーチャもパッと顔を赤くしましたが、何も言いませんでした。
彼女は、ルージンの話が出てからというもの、一言も口をきいていなかったのです。
その間、プリヘーリヤは娘の助言も得られず、見るからにどうすればいいのか迷っている様子でした。
とうとう彼女は、何度も娘の顔を見ながら、口ごもるようにして、今どうしても気にかかっていることがあると打ち明けました。
「あのね、ドミートリイ・プロコーフィッチ」彼女は話し始めました。
「この方には何もかも隠さず話すことにしているの。ねえ、ドゥーネチカ?」
「もちろんですわ、お母様」アヴドーチャは力強い声で答えました。
「実はこういうわけなんです」苦しみを打ち明けてもいいという許可を得て、重荷を下ろしたかのように、彼女は急いで話し始めました。
「今日、朝早くにピョートル・ペトローヴィッチから手紙が届いたんです。昨日、到着したことを知らせた返事なんですよ。本当はあの人が駅まで迎えに来てくれるはずだったのに、そうせずに、ボーイのような男に下宿の住所を書いたメモを持たせて、案内させたんです。自分は今日、朝のうちにうかがいます、という伝言だったのに……今日になっても本人が来る代わりに、この手紙が届いたというわけです。お話しするよりも、読んでもらったほうが早いですね。この中に、とても心配なことが書かれていて……何のことかは、すぐにわかりますわ。……ねえ、包み隠さず意見を聞かせてくれませんか、ドミートリイ・プロコーフィッチ! あなたは誰よりもロージャの性格をよく知っているから、一番いいアドバイスをくれると思うの。断っておきますけれど、ドゥーネチカはもう最初からすっかり決心しているんです。でも、わたしは……わたしはまだどうしていいかわからず、途方に暮れていて……それで、あなたがいらっしゃるのを、待ちわびていたようなものなんです」
ラズーミヒンは、昨日の日付が書かれた手紙を開いて、次のように読み上げました。

『プリヘーリヤ・アレクサンドロヴナ様。
拝啓。昨日はどうしても外せない用事ができてしまい、駅までお迎えに上がれず、大変申し訳ありませんでした。代わりに使いの者を一人、お送りいたしました。
さて、明日も同様に、大審院の方へどうしても行かなければならない用事が入ってしまいました。また、あなた様とアヴドーチャ・ロマーノヴナ、そして息子さんの親子三人が、久しぶりに水入らずで過ごされるところを邪魔するのも気が引けますので、せっかくですがお会いするのは控えさせていただきます。』ですので、あなたへの訪問とご挨拶は明日に延期させていただくよりほかありません。時間は明日の午後八時といたします。
ただし、この際どうしても、無理を承知でお願いしたいことが一つあります。ほかのことではありませんが、明日お会いする際には、ロジオン・ロマーヌイチ(ラスコーリニコフのこと)を同席させないよう、取り計らっていただきたいのです。
実は昨日、彼を病床に見舞ったところ、私に対してあまりにひどい無礼を働かれましたので。
なお、そのほかにも例の件について、ぜひ親しく詳しくご相談し、あわせてあなた様からのご説明も伺いたいと思っております。
念のためあらかじめお断りしておきますが、万が一私の希望に反して、明日のお宿にてロジオン・ロマーヌイチと鉢合わせするようなことがあれば、私はやむを得ず即刻退去いたします。その際は自業自得と心得ておいてください。
このようなことを申し上げるのは、昨日見舞った際にはあれほどひどい病気に見受けられたロジオン・ロマーヌイチが、二時間後には急に全快されているという次第ですので、外出のついでに、お宿へも立ち寄るのではないかと懸念しているからにほかなりません。
これは私自身が直接目撃して確かめた事実ですが、昨夜、馬車にひかれて非業の死を遂げたある酔っ払いの住処にて、ご子息はあやしげな仕事をしているその娘に対し、葬儀費用と称して二十五ルーブリもの大金を渡しておりました。
私はこのお金を工面するために、あなた様がどれほどの苦労をされたことかと思えば、ただ驚くばかりです。
末筆ながら、アヴドーチャ・ロマーノヴナへ、私の並々ならぬ尊敬の念をお伝えください。また、あなた様に対する私の恭順なる心をお汲み取りいただければ幸いです。
それでは、敬具
P・ルージン』

「こうなっては、いったいどうしたものかしら、ドミートリイ・プロコーフィッチ?」プリヘーリヤは泣き出しそうな顔で言いました。
「どうしてわたしの口から、ロージャに来るななんて言えるでしょう? あの子は昨日もあんなに激しく、ピョートル・ペトローヴィッチと縁を切れなんて言っていたのに、今度は向こうから部屋に入れるなと言ってくるなんて! いいえ、あの子はこんな手紙を見たら、意地でもやってくるに違いありません……そうなったら、一体どうなってしまうんでしょう?」
「いえ、アヴドーチャ・ロマーノヴナのご決心通りになさるのが一番ですよ」ラズーミヒンは落ち着き払って、すぐさま答えました。
「まあ、とんでもない! 娘が言うには……娘はまた途方もないことを言い出すんです。しかも理由も話さないで! この子が言うには、ロージャにも今日の八時にわざと来てもらって、二人を顔合わせさせた方がいいんですって。
いえ、その方がいいというわけじゃなくて、なぜかどうしてもそうしなくちゃいけないんですって……けれど、わたしロージャにはこの手紙を見せたくないんですの。
あなたにもお力を貸していただいて、なんとかうまくごまかして、あの子を来させないようにしたいと思うんですよ……だって、あの子はあんなにすぐカッとなる性格でしょう……それに、わたし何が何やらさっぱりわかりませんの……一体どんな酔っ払いが死んだのやら、娘が何ものやら、どうしてあの子がその娘になけなしの金を全部やってしまったやら……だってあの金は……」
「並大抵の苦労で貯めたものじゃないんですからね、お母さん」とアヴドーチャが付け加えました。
「あの男は昨日、正気じゃなかったんですよ」ラズーミヒンは考え込むような調子で話し始めました。

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