初級翻訳・罪と罰 第96話

ドストエフスキー

わたしたちは……先ほどご相談したんだよ」とプリヘーリヤはまごまごしながら言い出しました。
「それはつまり裁判所式の文体なんだよ」とラズーミヒンがさえぎりました。
「裁判所の文書は今でもそういう風に書くものなんだ」

「裁判所式? そうだ、裁判所式なんだ、事務家風なんだ……まるっきりの無学というのでもないが、非常に文学的というのでもない。
つまり事務家風なんだ!」

「ピョートル・ペトローヴィッチは、ご自分が貧しい教育を受けてきたことを、隠してなんかいらっしゃいません。
かえって、独力で自分の道をひらいたのを、誇りとしていらっしゃるくらいですわ」兄の新しい調子にむっとして、アヴドーチャは言いました。

「けっこうだ、誇りにしてるとすりゃ、それだけの理由があるんだろうよ――僕は反対なんかしないよ。
ねえ、ドゥーニャ、僕がこの手紙に対して、こんな瑣末な批評しかしなかったので、お前はどうやら憤慨したらしいね。
そして、何かいまいましさ半分にお前をいじめるつもりで、わざとこんなつまらない事を言い出した、とでも考えてるかもしれないが、それどころじゃない、この手紙の文体に関連して、この場合断じて余計なことと言えないような事が、頭に浮かんだのだ。」「手紙の中に、『自業自得』という、ことさら目立つように書かれた非常に意味深長な言葉があるじゃないか。それだけじゃない。僕が行けばすぐ帰ってしまうという威嚇まである。この『帰る』という威嚇は、つまり『言うことを聞かなければ、お前たち二人も捨ててしまうぞ』というのと同じことだ。ペテルブルグまで呼び出しておいて、今さら捨ててしまおうというんだよ。さて、お前はどう思う? ルージンという男にこんな書き方をされて、もしこれが(と彼はラズーミヒンを指さした)、またはゾシーモフか、あるいは我々の中の誰かに書かれた手紙だったとしたら、お前は同じように腹を立てることができるかい?」

「い、いいえ」ドゥーネチカは活気づきながら答えました。「わたしもよくわかったわ。この手紙の書き方はあまりに思慮が足りないけれど、単に文章が下手なだけかもしれないって……。全く兄さんの批評は鋭いわ。思いがけないくらい……」

「これは裁判所式の書き方なんだよ。ところが、裁判所式で書こうとすると、どうしてもこうするほかなくなる。だから、もしかするとあの男が自分で思った以上に、無作法な響きになってしまったのかもしれないね。だが、僕はもう少しお前の迷いを解いてやらなくちゃならない。この手紙には、もう一つ問題がある。それは僕に対する誹謗(ひぼう)だ。しかも、かなり卑劣なものだよ。僕は昨日、途方に暮れているやもめに金をやった。だが『葬儀費と称して』じゃない、実際に葬式の費用として渡したんだ。それから、あの娘――やつのいうところの『いかがわしき生業(なりわい)を営みおる女』には、僕は昨日生まれて初めて会ったんだが、金はその娘の手に渡したんじゃなくて、正にそのやもめの手に渡したんだ。それやこれやを見ると、あの男が僕を中傷して、お前たちと仲違いさせようという、あまりにせっかちで浅はかなもくろみが見え透いている。しかも、やっぱり裁判所式の書き方なんだよ。つまり、腹の内が見え透いた、せっかちで、知恵のない書き方なのさ。やつはなかなかりこうな男だが、りこうに立ち回るには、りこうさだけじゃ足りないんだ。これだけで、あの男の人物はおよそわかってしまうから……あの男がお前を本当に尊重しているとは、どうも思えないよ。こんなことを言うのも、要するに参考のためだ。心からお前のためを思えばこそだよ……」

ドゥーネチカは返事をしませんでした。決心はもうさっきからついていたので、彼女はただ夜が来るのを待つばかりでした。

「で、ロージャ、お前はいったいどうするつもりなの?」思いがけない彼の新しい事務的な口調に、ますます不安を募らせたプリヘーリヤが問いかけました。

「そりゃどういう意味だい、『どうする』って?」

「だってほら、ピョートル・ペトローヴィッチがこの通り、今晩お前が来ないように……もし来れば、すぐ帰ってしまうと書いているじゃないの。だからお前どうするの……来るつもり?」

「それはもう、もちろん僕が決めることじゃなくて、第一にあなた方が決めるべきことですよ。もしルージンのそうした要求を、侮辱だと思わないのならね。それから第二には、ドゥーニャの心次第です。もし彼女がやっぱり侮辱を感じないのなら。僕はあなた方のお好きなようにしますから」彼はそっけない調子で言い足しました。

「ドゥーネチカはもうちゃんと決心してね、わたしもそれに同意なんだよ」プリヘーリヤが急いで口を挟みました。

「わたしはね、ロージャ。ぜひともその席へ兄さんに来ていただくように、折り入ってお願いしようと決心したのよ」ドゥーニャが言いました。

「来てほしいのか?」

「来て」

「わたしもあなたにお願いしますわ。今夜八時に、わたしたちのところへいらしてくださいませんか」彼女はラズーミヒンに向かって言いました。「お母さん、わたしこの方にも来ていただきますわ」

「けっこうだとも、ドゥーネチカ。さあ、これでお前たちの相談が決まったから」プリヘーリヤが言い添えました。「思い切ってそういうことにしてしまおうよ。わたしもその方が気が楽だから。わたしは面をかぶったり、嘘をついたりするのが嫌いでね。いっそ何もかも本当のことを言ってしまおうよ……もうこうなったら、ピョートル・ペトローヴィッチが怒ろうと怒るまいと、どうだっていいさ!」

そのとき、ドアが静かに開いて、一人の娘がおずおずとあたりを見回しながら、部屋の中へ入ってきました。一同は驚きと好奇の念を抱きながら、そちらを振り向きました。ラスコーリニコフは一目見たとき、彼女が誰なのかわかりませんでした。それはソフィヤ・セミョーノヴナ・マルメラードヴァでした。彼は昨日この娘を初めて見たばかりでしたが、あの時の状況や環境、そして当人の身なりといった要素のせいで、彼の記憶にはまるで違った顔かたちが焼き付いていたのです。今見ると、彼女はむしろみすぼらしいほど地味な服装をした、まだうら若い子供のような娘で、つつましく礼儀正しい物腰をしていました。その顔立ちは晴れやかでしたが、どこかおびえているようなところがありました。
彼女は思い切って粗末な普段着を身につけ、頭には流行遅れの古びた帽子をかぶっていましたが、手には昨日と同じようにパラソルを持っていました。
部屋の中が思いがけずたくさんの人でいっぱいなのを見て、彼女はまごついたというよりも、すっかり度を失ってしまい、まるで小さな子供のようにおどおどしながら、すぐ引き返そうとするような素振りさえ見せました。

「ああ……あなたですか!……」
ラスコーリニコフはなみなみならぬ驚きようを見せましたが、急に自分でもどうしていいか分からず、言葉を濁してしまいました。
彼はその瞬間、母や妹がルージンの手紙によって、『いかがわしい仕事をしている女』の存在を、多少なりとも知っているはずだということを、ふと思い出しました。

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