初級翻訳・罪と罰 第87話

ドストエフスキー

どうも恐ろしいおしゃべりだ!」
「いったい誰に話したんだい? 君と僕くらいなものじゃないか?」
「それからポルフィーリイにも」
「ポルフィーリイにしゃべったっていいじゃないか!」
「ときに、君はあの人たち――おふくろと妹を左右する力を、いくらか持っているだろうね? 今日は先生との応対に気をつけさせてくれたまえ……」

「一騒ぎやるだろうよ!」とラズーミヒンは気乗りのしない調子で答えた。「だが、なんで先生はあのルージンにああ食ってかかるんだろう? 金はあるらしいし、あの娘もまんざら嫌いではなさそうだし……だって、先生たちはまるっきり無一物なんだろう? え?」

「君はなんだってそう根掘り葉掘り聞くんだい?」とラズーミヒンはいら立たしげに叫んだ。「無一物か無一物でないか、僕の知ったことじゃないよ! 勝手に自分できくがいい、そしたらわかるだろうよ……」

「ちょっ、君はどうかすると手のつけられない馬鹿になるぜ! 昨日の酔いがまだ残っているんだろう。じゃ、失敬。プラスコーヴィヤ・パーヴロヴナに、よく一夜の宿の礼を述べておいてくれたまえ。戸に鍵をかけてしまって、僕が戸の隙間から『お早う』と挨拶しても、返事もしないんだ。自分じゃ七時にちゃんと起きていたくせに。女中がサモワールを持って、台所から廊下を通って行くのを、僕ちゃんと見たんだから……とにかく、僕は拝顔の栄を得なかったよ……」

かっきり九時に、ラズーミヒンはバカレーエフの下宿を訪ねた。二人の婦人はもうよほど前から、ヒステリイじみるほどじりじりしながら、彼の訪問を待っていた。二人とも七時か、それよりもっと前から起きていたのである。彼は夜を欺く暗い顔をして入っていくと、無器用そうに会釈をして、そのためにすぐ腹を立ててしまった――もちろん、自分自身にである。しかし、それは相手なしの一人相撲だった。

プリヘーリヤはいきなり彼に飛びかかって、その両手を握りしめ、ほとんどそれに接吻しないばかりだった。彼はおずおずとアヴドーチャの方を見た。ところが、その気高い顔にも、この瞬間、感謝と友情の表情と、彼の思いもよらなかった偽りならぬ尊敬が(嘲るような視線と包み切れぬ軽蔑の代わりに)現れていたので、彼は全く頭ごなしに罵倒されでもした方が気楽なほど、かえってきまりの悪い思いをした。

けれど幸い、話題がちゃんと用意してあったので、彼は急いでそれにすがりついた。『病人はまだ目をさまさない』けれど、『経過はきわめていい』と聞いて、プリヘーリヤはその方がかえって好都合だといった。『なぜって、前もってぜひともご相談しておかねばならぬことがありますから』それから、お茶はどうかという質問に続いて、一緒に飲もうという招待があった。二人ともラズーミヒンを待っていたので、まだ飲まずにいたのである。

アヴドーチャはベルを鳴らした。するとそれに応じて、きたならしいごろつきみたいな男が現れた。で、それに茶を命じると、そのうちにやっと茶道具が並べられたが、それは二人の婦人が赤面するほどきたならしい、不体裁なものだった。ラズーミヒンはこっぴどく下宿を罵倒しかけたが、ふとルージンのことを思い出したので、口をつぐんでまごまごしてしまった。すると、プリヘーリヤが次から次へと質問攻めにしてきたので、ラズーミヒンはすっかり嬉しくなってしまいました。

彼は、話の腰を折られたり、問い返されたりしながらも、それらの質問に一つひとつ丁寧に答え、気づけば四十五分間も喋り通していました。最近一年間のラスコーリニコフの生活について、自分の知っている限りの大切な事実をすべて話した上で、今度の病気についての詳細な報告をして話を締めくくったのです。

それでも彼は、まだ話すべきではないと判断したことについては、あえて省略しました。特に警察での騒ぎや、そこから生じた一切の出来事については黙っていたのです。二人はその話を食い入るように聞いていました。彼が話を終えて、これで二人も満足しただろうと思ったときでさえ、二人はまるでまだ話が始まったばかりかのように感じていたのです。

「ねえ、ねえ、一つ聞かせてくださいまし。あなたはどうお考えになります……ああ、ごめんなさい、わたしはまだあなたのお名前を伺っていませんでしたね」と、プリヘーリヤはせき込むように言いました。

「ドミートリイ・プロコーフィッチです」

「それでですね、ドミートリイ・プロコーフィッチ。わたしはたいへん、本当に……知りたくてたまらないんですの。全体に……あの子は今、どんな考え方でいるのでしょう? つまり、その、おわかりになりますかしら、なんと申し上げたらいいんでしょう。平たく言いますと、あの子は何が好きで、何が嫌いなのでしょう? いつもあんなにいらいらしているのでしょうか? あの子はいったいどんな望みを持っているのでしょう、つまり、言ってみれば何を空想しているんでしょうか? 今、あの子の気持ちを動かしている特別な力は何なのでしょう? 一口に言えば、わたしが知りたいのは……」

「まあ、お母さんたら、そんな一度におっしゃったら、返事なんかできやしないじゃありませんか」とドゥーニャが注意しました。

「ああ、情けない。だってわたしは全く、あの子があんな風になっていようとは、夢にも思いがけなかったですもの、ドミートリイ・プロコーフィッチ」

「そりゃ実際、ごもっとも千万ですよ」とドミートリイ・プロコーフィッチは答えました。

「僕には母がいませんでしてね。その代わり、伯父が毎年やってきますが、来るたびに僕を見違えるんですよ。顔さえ見間違えるくらいです。しかも、相当に賢い人間なんですがね。ましてや、あなた方は三年も離れていらっしゃったのですから、ずいぶん変わってしまうのも無理はありません。いや、あなた方にこんなことを言っても仕様がありませんね! 僕はロジオンと一年半ほど付き合いがありますが、彼は気難しくて、陰気で、高慢で、気位の高い男です。特に近ごろでは(あるいは、もっと前からかもしれませんが)、疑い深くなって、そのうえ心気症(ヒポコンデリイ)ですよ。ですが同時に、おおらかで善良でもあります。ただ感情を外に出すのが嫌いで、本当の気持ちを見せるくらいなら、むしろ残忍なことをするような素振りを見せるんです。でも、たまにその心気症のようなところがまるでなくなって、ただもう冷淡で、人情味がないかと思われるほど無感覚になることもあります。実際、あの男の内部には、まるで違った二つの性格が入り混じっているようですよ。ときにはひどく無口になることもあります! いつも忙しくて暇がない、いつもみんなが邪魔をする、というような顔をしながら、実際はごろごろ寝ていて何もしないんですからね。皮肉屋というわけではありませんが、何も機知が足りないからではなく、そんなくだらないことをしている暇がない、といった風なんです。人の話を最後まで聞くということがない。現在、みんなが面白がっているようなことには、決して興味を持ったことがありません。自分を恐ろしく高く評価していますが、そうする権利も多少ないことはなさそうです。

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