初級翻訳・罪と罰 第110話

ドストエフスキー

要点はですね、あなたはあの時階段を通りすがりに……失礼ですが、あなたが行かれたのは七時過ぎだったようですね?」
「七時過ぎです」とラスコーリニコフは答えましたが、同時に「こんなことは言わなくてもよかったのに」と、すぐさま不快に感じました。
「で、七時過ぎに階段をお通りになったとき、せめてあなたくらいご覧にならなかったですかね――二階の開けっ放しになったアパートの中に――ね、覚えておいででしょう? 二人の職人がいたのを――あるいはその中の一人だけでも? そこでペンキを塗っていたんですが、お気づきになりませんでしたか? これは彼らにとって、極めて重大なことなんですよ!」
「ペンキ屋! いや、見ませんでした……」とラスコーリニコフは記憶をかき回すように、ゆっくりと答えました。
と同時に、自分の全神経を張り詰めさせ、少しも早く罠のありかを見破らなければならない、何か見落としはしないかと、心臓がしびれるような思いがしました。
「いや、見ていません。
それに、そんな開けっ放しのアパートなんて、なんだか記憶にありませんよ……ああ、そうだ、四階のところで(彼はもう完全に罠を見破り、心の中で勝ち誇りました)――一人の役人が引っ越していたのを覚えています……アリョーナ・イヴァーノヴナの向かい側の住まい……覚えていますよ……それならはっきり覚えています……兵隊上がりの人夫が、長椅子みたいなものを担ぎ出して、僕を壁へ押しつけたんです……が、ペンキ屋は、いや、そんなものがいたような覚えはありません……それに、開けっ放しのアパートなんてものは、どこにもなかったようです。
そうです、ありませんでした……」
「おい、君は何を言ってるんだ」ラズーミヒンは我に返り、事情を考え合わせたという風に、いきなりこう叫びました。
「だって、ペンキ屋が塗っていたのは、殺人の当日じゃないか? ところが、この男が行ったのは三日前だぜ。
君は何を聞いているんだ?」
「ふう! すっかりごっちゃにしてしまった!」ポルフィーリイは額を叩きました。
「いまいましい、私はこの事件で頭の調子が狂ってしまったよ!」と、彼は謝罪でもするように、ラスコーリニコフの方へ振り返りました。
「私はただ、誰かあのアパートで、七時過ぎに二人を見た者はいないかと、そればかり一生懸命考えているものだから、あなたに聞いたら分かるかもしれないと、ついそんな気がしたようなわけで……すっかりごっちゃにしてしまった!」
「それなら、もっと気をつけなきゃダメだよ」ラズーミヒンは気難しげに注意しました。
最後の会話は、すでに控室で交わされていました。ポルフィーリイは、これ以上ないほど親切な笑顔で二人を玄関まで見送りました。
二人は暗く、不機嫌そうな表情のまま外へ出ましたが、しばらくの間、どちらも一言も口をききませんでした。
ラスコーリニコフは、ようやく深く息をつきました……。

「……僕は信じない! そんなの信じられるもんか!」
すっかり動揺してしまったラズーミヒンは、必死になってラスコーリニコフの推理を否定しようと繰り返していました。
彼らはもう、バカレーエフの下宿の近くまで来ていました。
そこでは、母のプリヘーリヤと妹のドゥーニャが、今か今かと待ちわびているはずです。
ラズーミヒンは、ラスコーリニコフがこの件を初めて口にしたことにすっかり混乱し、興奮してしまっていたため、話に夢中になるたびに道の真ん中で立ち止まってしまいました。
「信じなくていいさ」
ラスコーリニコフは、冷ややかで無造作な薄笑いを浮かべて答えました。
「君はいつものことだけど、何も気づいていなかったみたいだな。僕はやつの一言一言を秤(はかり)にかけて、重さを量っていたんだよ」
「君は疑り深いから、そんなふうに何でも量ろうとするんだ……ふむ……だが、確かにポルフィーリイの様子はかなりおかしかった。それは僕も認めるよ。特にあのザミョートフなんて畜生が!……君の言う通りだ、あいつには何か臭うものがあった。しかし、なぜだ? なぜそんなことをするんだ?」
「一晩のうちに作戦を変えたのさ」
「いや、逆だよ、逆! もしやつらがそんな馬鹿げた考えを持っているなら、全力でそれを隠して、自分の手札を見せないように慎重になるはずだ。あとで急所を突くためにね……ところが今はどうだ――あんなやり方はずうずうしすぎるし、脇が甘すぎるよ!」
「もし彼らが決定的な証拠、つまり正真正銘の事実を握っているか、あるいは少しでも筋の通った容疑を持っているなら、より大きな勝利を狙って、勝負を隠し通そうとしたかもしれない(もっとも、本当ならとっくに家宅捜索をしているはずだがね!)。ところが、やつらには事実がない。一つだってないんだ。すべては蜃気楼のようなもので、どちらにでも解釈できるような、ふわふわした憶測ばかりだ。だからこそ、あんなに厚かましい態度で僕を動揺させようと必死なんだよ。
だが、もしかすると証拠がないことに業を煮やして、いら立ち紛れにやけくそになっているだけかもしれない。あるいは、何か別の思惑があるのかもな……あの男はかなり頭が切れるようだからね……もしかすると、何かを知っているふりをして僕をおどかそうとしたのかもしれない……そこには確かに、それなりの心理が働いているよ……だが、そんなことを説明するのは虫唾が走る。もうその話はやめてくれ!」
「まったくひどい侮辱だ、侮辱だよ! 君の気持ちは痛いほどわかる! しかし……こうしてはっきり言葉にした以上(ついに本音をぶちまけられたのは、本当によかった!)、僕も正直に言うが、ずっと前からやつらがそんな疑いを抱いていることには気づいていたんだ。ずっと、この数日間ずっとね。
もちろん、ほんのわずかな疑念で、かすかにうごめいている程度だったが。しかし、たとえうごめいている程度にせよ、一体なぜそんな失礼な考えを起こしたんだ! どこに、一体どこにそんな根拠があるというんだ? 僕がどれほど憤慨しているか、君には想像もつかないだろう! 一体どういうことだ? 貧乏と心気症に悩み抜いている不遇な大学生が、熱に浮かされるような恐ろしい大病になる前日、あるいはもう病気が始まっていたかもしれない時にだ(いいかい!)、この疑り深く自尊心の強い、自分の価値を誰よりも理解している男が、半年も部屋に引きこもって誰にも会わず、ぼろをまとって底の抜けた靴を履いて、どこの馬の骨とも知れない警官どもの前に立ち、その侮辱をじっと耐えているなんて。
そこへ追い打ちをかけるような借金の話――七等官チェバーロフに渡った期限切れの手形を鼻先に突きつけられる。それに、腐ったペンキのにおい、摂氏三十度を超える暑さ、締め切ったむんむんする空気、人混み、前日に訪ねたばかりの人間が殺されたという話――こういったものが、空腹の体へ一気に押し寄せたんだからな! 卒倒しない方がおかしいだろう! ところがやつらは、これを根拠にしようってんだから! ちくしょう! もちろん腹立たしいのは当然だ、僕だってよくわかる。
だがね、ロージャ、もし僕が君の立場なら、やつらを面と向かって笑い飛ばしてやる。いや、いっそその顔に痰(たん)をひっかけてやるよ。せいぜい粘っこいのをね。

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