年じゅう腰をかけっぱなしなものですから、五分間でも歩き回れるのが、うれしくてたまらないんですよ……痔がありますんでね……いつも体操で治療しようと思っているんですが。
なんでも噂で聞くと、五等官や四等官の連中、いや三等官あたりの役人までが、進んで縄跳びをやってるそうですよ。
全くどうも今日は科学万能の時代ですからな……さよう……ところで、ここの職務だとか、尋問だとか、そうしたいろんな形式的なことになると……現にあなたも今ご自分で『尋問』ということをおっしゃったが……そりゃ実際、あなた、ロジオン・ロマーヌイチ、この尋問ってやつは、どうかすると尋問される者よりか、尋問者の方をまごつかせるものですよ……それはあなたがいま実に正鵠(せいこく)を射た、皮肉な観察をお述べになったとおりです」
(ラスコーリニコフはそんなことなど何も言っていないのである)
「混乱してしまいますよ! 実際、混乱してしまいますよ! いつもいつも同じことばかり、太鼓でも叩くように言っているんですからな! このごろ改革が始まりかけていますから、われわれもせめて名称だけでも変えてもらえるだろうと、嘱望しているしだいです、へ、へ、へ! ところが、法律家的方法となると(あなたの巧みな表現を借りるとですな)、もう完全にあなたのご意見に賛成です。」「ねえ、そうじゃありませんか? どんな被告だって、たとえどんなに頭の固い百姓上がりの被告だって、そんなことはちゃんと心得ているものですよ。
たとえば、最初は全然関係ないような質問をたくさん浴びせかけて――あなたの的確な表現をお借りするならね――そのあとで突然、斧を振り下ろすように真上からガツンと一撃を食らわせる。へ、へ、へ! まさに『真上から』ですね、あなたの巧みな例えに従えば! へ! へ! それくらいのことは、みんな分かっているんですよ。
じゃあ、あなたは私が本当に、役所の話であなたを……何かしようとしたなんて、そんなことをお考えになったのですか? ……へへ! あなたもなかなか皮肉屋ですね。いや、もうその話はやめましょう! ああ、そうだ、ついでに一つ。
どうも言葉や思想というものは、一つがまた次の一つを呼び寄せるものでしてね。ほら、あなたは先ほど『正式な』とおっしゃいましたね、つまり尋問の態度について……。しかし、『正式』なんていったい何でしょう! 形式なんてものは、あなた、多くの場合くだらないものです。時と場合によっては、友達同士のような話し方をした方が、案外うまくいくこともあるんですよ。形式なんてものは、決して逃げていきませんからね。その点はどうかご安心ください。
それに、本質的に見て、『形式』とはいったい何なのでしょう。一つお尋ねしたいくらいですよ。形式なんてものは、どんな場合であっても、予審判事を縛り付けることはできません。予審判事の仕事は、いわば一種の自由な芸術ですからね。一種の、というより、むしろその……へ、へ、へ!」
ポルフィーリイは少し息をついた。彼は少しも疲れた様子を見せず、やたらにまくし立てた。無意味で空っぽな文句を並べているかと思うと、急に何か謎めいた言葉を漏らし、かと思うと、すぐまた意味のないおしゃべりに戻りながら、とうとうと喋り続けた。
彼は部屋の中を、ほとんど駆け回るように歩いていた。太くて短い足をいよいよ速く動かしながら、絶えず自分の足元を見つめたまま、右手を背中に回し、左手をひっきりなしに振り回しては、言葉の意味とはちっとも一致しない、奇妙な身振りを繰り返していた。
部屋を駆け回るうちに、彼は二度ばかりドアのそばでほんの少しだけ立ち止まり、外の音に耳を澄ませたようだった。ラスコーリニコフはふとそのことに気がついた。
(こいつ、何かを待っているのか?)
「いや、実際あなたのおっしゃったことは、全くその通りです」と、またもやポルフィーリイは、この上なく愉快そうで、並外れて気さくな様子でラスコーリニコフを見ながら(その笑顔のせいで、ラスコーリニコフはぷるっと身震いし、一瞬にして心の構えをした)、こう言葉を続けた。
「実際、あなたが法律上の形式に対してあの鋭い皮肉を飛ばされたのは、完全に的を射ています。へ、へ! どうもあの――もちろん全部ではありませんが――意味深長な心理的アプローチというやつは、いやはや滑稽なもので、あまりに形式にこだわりすぎると、むしろ有害無益なくらいですからね。
さよう……おや、また形式の話をしてしまいました。ところで、もし仮に私が担当するある事件で、甲だろうが乙だろうが丙だろうが、いわゆる犯罪者として認めると――いや、もっと適切に言えば、嫌疑をかけるとしましょう……。ところで、あなたは法律家になるために勉強しておられたのでしょう? ロジオン・ロマーヌイチ」
「ええ、そのつもりでしたが……」
「でしょう。だから一つ、あなたに将来のご参考として――しかし、生意気にもあなたを捕まえて講義をするなんて思わないでくださいよ。とんでもない! あなたはあんな堂々とした犯罪論を発表していらっしゃるんですからね! とんでもない、私はただ一つの事実として、ちょっとした例を参考までに差し上げるだけなんです。
そこで、仮に私が、たとえば甲なり乙なり丙なりを犯人だと考えたとしましょう。で、二つ伺いたいのですが、その場合、たとえ多少の証拠を手に入れていたとしても、時機が熟さないうちに当人を騒がせる必要がどこにありますか? もっとも、中には一刻も早く捕まえなければならない相手もいます。
ところが、また別のタイプの人間もいるんですよ、全く。そんな相手に対しては、しばらくの間、自由に街を歩かせておいたっていいじゃありませんか。へ、へ! ……しかし、どうやらあなたはよくお分かりにならないようですね。じゃあ、もう少しはっきり説明しましょう。
たとえば、もし私がその男をあまりに早くから留置場にぶち込んでしまうと、それによって私は彼に、いわば『精神的な支点』を与えてしまうことになるかもしれませんからね。へ、へ! あなたは笑っておいでですな?」
(ラスコーリニコフは笑おうなどとは考えてもいなかった。彼は唇を硬く結び、燃えるような視線をポルフィーリイから外さず、じっと腰を下ろしていた)。
「しかし、実際ある種の人々に対しては、まさにそうなんですよ」人間というのは本当に多種多様ですが、実際に相手を扱う方法は、誰に対しても一つしかありません。
たった今、あなたは証拠と言いましたね。まあ、仮に証拠が必要だとしてもですよ、その証拠というやつは、あなた、たいてい両方に尻尾を持っているものなんです。われわれ予審判事なんて弱い人間ですから白状しますが、予審というものは数学的にハッキリさせたい、二かける二は四、といったような証拠を握りたくてたまらない! 逃げも隠れもできない、確実な証拠を手に入れたくてたまらないものなんです! もし私が、まだ時期が早いのにその男を捕まえて収監してごらんなさい――たとえ「これこそが犯人だ」という確信を持っていたとしてもですよ――そのとき私は、その男に対して、それ以上の証拠を握るための手段を、自分から手放してしまうようなものじゃありませんか。
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