青年二人はずんずんと先へ進んだが、ルージンは礼儀を守って、控室で外套を脱ぐのをわざとゆっくりと時間をかけた。
母親のプリヘーリヤ・アレクサンドロヴナは彼を迎えに、すぐさま敷居のところまで出てきた。ドゥーニャは兄と挨拶を交わしていた。
ルージンは部屋に入ると、かなり愛想の良い態度ではあったが、前にも増して気取った様子で、婦人たちに挨拶をした。もっとも、少し戸惑っているようで、何と言えばいいのかわからないような様子だった。
プリヘーリヤはどこか照れくさそうに、サモワールが沸き立っている円テーブルの周りに、急いで皆を座らせた。
ドゥーニャとルージンは、テーブルの両端に向かい合って座った。
ラズーミヒンとラスコーリニコフはプリヘーリヤと向き合う形になり、ラズーミヒンはルージンの近くに、ラスコーリニコフは妹のそばに座った。
ほんの一瞬、沈黙が流れた。
ルージンは香水の匂いがぷんぷんする麻のハンカチを悠々と取り出して、紳士としての品位を保ちつつも、傷つけられた自分のプライドに対して、しっかり説明を求めようと固く決心したような態度で、ちゅんと一つ鼻を鳴らした。
彼は控室にいた時から、このまま外套も脱がずに帰ってしまい、たちどころに二人の婦人に万事を思い知らせ、骨身にしみるほど厳重にこらしめてやろうか、と考えていたのだが、さすがに実行には移せなかった。
それにこの男は、はっきりしないことを嫌う質だったので、この際、事情をはっきりさせる必要があった。
これほど露骨に命令を無視されたからには、何か理由があるはずだ。
ならば、まずそれを知ることが先決だ。こらしめるのはいつでもできるし、それは彼の手中にあることなのだから。「道中、特にお困りのこともなかったことと存じますが」と、ルージンはかしこまった口調でプリヘーリヤに話しかけました。
「おかげさまで、ピョートル・ペトローヴィッチ」
「それは何よりでございました。アヴドーチャ・ロマーノヴナも、お疲れではございませんでしたか?」
「私は若くて丈夫ですから、少しも疲れてなんていませんわ。でも、母はだいぶ大変だったみたいです」とドゥーネチカが答えました。
「それは仕方のないことですな。何しろこの国の道は、とてつもなく長い。いわゆる『母なるロシア』というものは広大であると相場が決まっておりますから……。昨日、お出迎えに伺いたいのは山々でしたが、どうしても都合がつかず、間に合わせることができませんでした。しかし、まあ大きな問題もなく無事に到着されたようで何よりです」
「いいえ、ピョートル・ペトローヴィッチ。私たちはもう、すっかりがっかりしてしまっていたんですよ」プリヘーリヤは声を強めて、急いでそう言いました。「もし神様が昨日、このドミートリイ・プロコーフィッチを私たちのところへおつかわしくださらなかったら、私たちは全く途方に暮れるところでした。この方が、そのドミートリイ・プロコーフィッチ・ラズーミヒンさんですの」と言いそえて、彼をルージンに紹介しました。
「もうお知り合いになったようですが……昨日ね」ルージンはラズーミヒンをいまいましげに横目で見て、そうつぶやきました。そして眉をひそめ、黙り込んでしまいました。
ルージンという男は、人前にいるときは愛想よく振る舞い、社交的な紳士であることを得意としているくせに、少しでも気に食わないことがあると、たちまち余裕を失ってしまいます。そんな時は、座を盛り上げる紳士というよりは、まるで粉袋でも置いているかのように無愛想になってしまう、そういう部類の人間でした。
一同の間に沈黙が流れました。ラスコーリニコフは頑固に黙り込んだままで、アヴドーチャもある時機が来るまでは口を開かないつもりでいました。ラズーミヒンも特に話すことがありません。そこで、プリヘーリヤはまた不安を感じ始めました。
「あの、マルファ・ペトローヴナがお亡くなりになりましたねえ。あなたはお聞きになりましたか?」彼女は話題を変えようと、そう切り出しました。
「ええ、もちろん聞きましたとも。誰よりも先に承知しております。それどころか、アルカージイ・イヴァーヌイチ・スヴィドリガイロフが、奥さんの葬式を済ませるとすぐ、急いでペテルブルグへ向けて出発したことも、お知らせしようと思っていたところです。わたしの入手した確実な情報によれば、間違いありません」
「ペテルブルグへ? ここへ来るのですか?」ドゥーネチカは不安そうに問い返し、母親と顔を見合わせました。
「たしかにそうです。出発のあまりの急ぎようや、その前の出来事を考えてみれば、もちろん何か目的があるはずですよ」
「まあ! あの人はまたここでも、ドゥーネチカを困らせるつもりでしょうか?」プリヘーリヤが叫びました。
「わたしが思うに、あなたにしろ、アヴドーチャ・ロマーノヴナにしろ、格別ご心配なさることはありませんよ。それはもちろん、あなたがたがあの男と何らかの関係を持とうという考えさえお持ちでなければの話ですが。わたし自身としても警戒しており、今もあの男がどこに泊まっているか探らせているところです……」
「ああ、ピョートル・ペトローヴィッチ、あなたが今どれほど私をびっくりさせたか、おわかりにならないでしょう!」プリヘーリヤは続けました。「私はあの人をたった二度見ただけですけれど、恐ろしくて恐ろしくて……。亡くなったマルファ・ペトローヴナも、あの人が殺したに違いないと私は思い込んでいるほどですの」
「その点は、そう一概には言えません。わたしは正確な情報を持っていますからね。あの男が精神的に追い詰めて、事態を早めたかもしれないという点については、わたしも否定はしません。なにしろ、あの男の普段の行状や道徳観については、仰せの通りですからな。いま彼が財産を持っているのか、マルファ・ペトローヴナがどれだけ遺産を残したのか、それはわたしも知りません。もっとも、それもじきにわたしの耳に入ってくるでしょう。ですが、もしこのペテルブルグに来た以上、たとえわずかな金でも持っていれば、あの男はすぐにまた以前と同じようなことをしでかすに違いありません」あの男はすっかり堕落しきって、道楽の限りを尽くした、どうしようもない人間ですからね! わたしは確かな証拠があって言っているのですが、運悪くも八年前にあの男に惚れ込み、借金から救い出してやったマルファ・ペトローヴナは、もう一つ別の点でも、あの男に大きな借りを作らせているようなものなのです。
全くあの婦人の尽力と犠牲のおかげで、本来ならシベリア送りになってもおかしくないような、ある残虐きわまる犯罪事件――いわば、怪奇そのものといった殺人事件の種が、ごく初期の段階でもみ消されてしまったのです。
まあ、あいつはそんな人間ですよ。もし詳しくお知りになりたければ、の話ですが」
「まあ、なんてことでしょう!」とプリヘーリヤは叫びました。
ラスコーリニコフは、その話をじっと聞き入っていました。
「あなた、確かな情報をお持ちだなんて、それは本当なのですか?」ドゥーニャは、相手の心を試すような、鋭い口調で尋ねました。
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