それに田舎でも、わたしがあなたに仕向けたことより、かえってあなたの方がずっとわたしをひどい目に遭わせたじゃありませんか。ところで、この件ですが……」
「ソフィヤ・セミョーノヴナは、このことを知っているんですか?」
「いや、あの人には何も話していません。それに、いま家にいるかどうかさえ不確かなくらいですからね。しかし、おそらくいるでしょう。あの人も今日は自分の身内を葬ったばかりだから、お客のところを歩き回るような日じゃありませんからね。わたしは時期が来るまで、このことを誰にも話したくないので、あなたに知らせたことさえ少々後悔しているくらいなんですよ。この際、ほんのわずかな不注意でも、密告と同じ意味を持ってしまいますからね。わたしはすぐそこに住んでいるんです、ほら、あの家に。さあ、もうそばまで来ましたよ。ほら、あれがこの家の庭番です。庭番はわたしをよく知っております。ほら、お辞儀をしているでしょう。あの男はわたしが女性と一緒に歩いているのを見たわけだから、当然あなたの顔も覚えたはずですよ。もしあなたがひどくわたしを恐れて、疑っているのだとしたら、これはあなたにとって有利なことですよ。いや、どうかこんなにずけずけ言うのをお許しください。わたしは借家人から部屋をまた借りしているんです。ソフィヤ・セミョーノヴナはわたしと壁一枚隔てた隣同士で、同じく借家人からまた借りなんですよ」この階は、ほとんど間借人ばかりでいっぱいなんですよ。あなた、何をそんなに子供みたいに怖がっているんです? それとも、私がそんなに恐ろしい人間にでも見えますか?」
スヴィドリガイロフの顔は、無理やり卑下したような笑みにゆがんだ。しかし実際には、彼は笑っている場合ではなかった。心臓はずきんずきと激しく打ち、呼吸が喉に詰まりそうになっていたのだ。彼は自分の中で高まっていく興奮を隠そうとして、わざと大きな声で話した。しかしドゥーニャは、相手のそんな異常な興奮に気づく余裕もなかった。「まるで子供のように私を怖がっている、私はそれほど恐ろしい人間に思われるのか」というその言葉が、彼女をひどくいら立たせたからだ。
「あなたが……破廉恥な人間だということは知っていますわ。でも、少しも怖くなんてありません。どうぞ、先へ進んでください」
彼女は見た目には落ち着き払った様子でそう言ったが、その顔は真っ青だった。スヴィドリガイロフはソーニャの部屋の前で立ち止まった。
「ちょっとお聞きしますが、お宅でしょうか。……留守ですね。困ったことだ! ですが、あの人はすぐに帰ってくるはずです。分かっていますよ。あの人が出かけたとしたら、それは身寄りのない子供たちのことで、あの夫人を訪ねているに違いないから。あの子たちは母親を亡くしましたからね。私も少し手を出して、世話をしてやったんですよ。もしソフィヤ・セミョーノヴナが十分経っても帰らなかったら、ご都合に合わせて今日中にでもすぐにお宅へ行かせますから。さあ、こちらが私の住まいです。部屋が二つあります。ドアの向こうが、貸主のレスリッヒ夫人の部屋になっているんです。さあ、今度はこちらを見てください。私の重大な証拠物件をお見せしますから。このドアが、私の寝室から、がら空きになっている二つの貸部屋へ通じているのです。この部屋がそうです……これを少し念入りにご覧になる必要がありますよ……」
スヴィドリガイロフは、かなり広い部屋を二間、家具付きで借りていた。ドゥーネチカは疑わしげにあたりを見回したが、部屋の飾りつけにも配置にも、これといって変わったものは見当たらなかった。もっとも、スヴィドリガイロフの部屋が、ほとんど人が住んでいない二つの部屋に両側から挟まれていることには、少し気づいたようだった。彼の部屋へ入るには、直接廊下からではなく、ほとんどがら空きの家主の部屋を二つ通らなければならなかったのだ。
スヴィドリガイロフは寝室から鍵のかかっていたドアを開け、これもがら空きの貸間をドゥーネチカに見せた。ドゥーネチカは、何のためにこんなものを見ろというのか納得がいかず、敷居の上に立ち止まろうとした。しかし、スヴィドリガイロフは急いで説明を始めた。
「さあこちらを、この二つ目の大きな部屋をご覧ください。そして、このドアに注意していただきたい。これには鍵がかかっているんです。それからドアの傍に椅子があるでしょう。二つの部屋を通じてたった一脚きりです。これは聞くのに便利なように、私が自分の部屋から持ってきたのです。それから、あのドアのすぐ向こう側に、ソフィヤ・セミョーノヴナのテーブルがあるんです。あの人はそこに腰をかけて、ロジオン・ロマーヌイチと話をしていたわけなので。私はこの椅子に掛けながら、二晩続けて、しかも二度とも二時間くらい、ここで聞き耳を立てていたんですよ――だから、もちろん、私も何か少しは知ることができるというわけでしょう? あなたはどうお考えですか?」
「あなたは聞き耳を立てていたのですか?」
「左様、立聞きしました。さあ、そろそろ私の部屋へ戻りましょう。ここは腰を掛けるところもありませんから」
彼はアヴドーチャを促し、客間にあてている手前の部屋へ引き返し、彼女を椅子に座らせた。そして自身はテーブルの反対の端、少なくとも彼女から一間(約1.8メートル)ばかり離れた場所に座ったが、どうやらその目の中には、いつかドゥーネチカを脅かした例の焔が、もうきらりと光ったようだった。
彼女はびくりと身震いし、もう一度疑わしげにあたりを見回した。このしぐさは無意識のうちに出たものだった。彼女は疑いの色を顔に出したくないようだったが、スヴィドリガイロフの住まいのあまりの寂しげな様子には、さすがにぎょっとさせられた。彼女はせめて家主でも家にいるのかと尋ねてみたいと思ったが、結局尋ねはしなかった。……つまり、プライドのためである。その上、自分自身に対する不安とは比較にならないほど大きな苦痛が、もう一つ彼女の心の中にあった。彼女は耐えがたい苦痛を忍んでいたのである。
「これがあなたの手紙です」彼女はテーブルの上にそれを置き、こう切り出した。「あなたが手紙に書いているようなことが、本当にあり得ると思っているんですか? あなたは兄が犯したという罪について、あからさまにほのめかしています。
それも、これ以上ないほどはっきりと。今さらごまかしなんて通用しませんよ。
先にお断わりしておきますけれど、わたしはあなたに会いに来る前、すでにその馬鹿げた作り話については聞いていました。でも、そんなこと、これから先も絶対に信じたりはしません。
それはあまりに汚らわしくて、滑稽な言いがかりです。
そのいきさつも、なぜ、どういう理由でそんな噂が流れたのかも、わたしは全部知っています。
あなたに証拠なんてあるはずがないんです。
あなたは証明してみせると約束したのですから、さあ、言ってください! でも、前もってお断わりしておきますよ。わたしはあなたを信じはしません。絶対に、信じませんから!」
ドゥーネチカはこれだけの言葉を、せきこむように早口で言い切った。
一瞬、彼女の顔がカッと赤く染まった。
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