初級翻訳・罪と罰 第9話

ドストエフスキー

その代わりにもらってきたのが、このザマなんです!……もう、何もかもおしまいだ!」

マルメラードフは、拳で自分の額をコツンと叩き、歯を食いしばって目を閉じ、テーブルにしっかりと肘をつきました。
しかし、一分も経つと、彼の顔は急に変わり、妙にわざとらしいズルそうな表情と、無理やり図々しく振る舞う態度を浮かべて、ラスコーリニコフを見やりました。
そして、笑い出しながら言いました。

「今日はソーニャのところへ行って、迎え酒代をねだってきましたよ! へへへ!」

「で、くれたのかい?」と傍の方から、今やって来た連中の一人がわめきました。
そう言って、喉を鳴らして大笑いしました。「ほら、この小瓶に入っている酒は、娘が稼いだ金で買ったものなんだ」と、マルメラードフは特にラスコーリニコフの方を向いて言いました。
「娘は三十カペイカを差し出してくれたんですよ。
自分の手で、なけなしの金を全部はたいてね……わしがこの目でしっかり見たんです……娘は何も言わずに、ただ黙ってわしの顔を見ていました……こうなるともう、この世の出来事とは思えない。まるで違う世界の出来事のようです。人のことを心配して、泣いてばかりいるくせに、一度も文句を言わない。
ちっとも怒ったりしないんです! でも、それがかえって私にはつらい。怒ってくれたほうが、まだ楽なんです!……三十カペイカ、そうです。
でもね、あの子だって今、自分にお金が必要なはずでしょう? あんたはどう思いますか、書生さん? 今あの子は、身なりを清潔に保つことに気を配らなきゃいけないんです。
その『清潔』っていうのも特別なもので、結構お金がかかるんですよ。
ねえ、わかりますか? おわかりかな? まあ早い話が、髪につけるポマードも買わなきゃいけない。
だって、ポマードなしじゃやっていけないでしょう。
そのほか、糊でパリッとさせたスカートだの、なるべく格好のいい靴だの……ほら、道に水たまりがあるときに、足をちょいと出して歩く姿が粋に見えるようなやつですよ。
ええ、あんた、わかりますか? その『清潔にしている』ということの意味が! それなのに、この私が、あの子の父親である私が、その三十カペイカをひったくって、自分の迎え酒の代金にしてしまったんです。
今こうして飲んでいるこれですよ! いや、もう飲み干してしまったんだ!……さあ、こんな私を、誰かかわいそうだと思ってくれる人はいますか? ねえ? 書生さん、あんた今、この私をかわいそうだと思いますか? どうなんです? さあ、言ってみてください。かわいそうか、そうじゃないか? へへへへ!」
彼はまたお酒を注ごうとしましたが、もう中身はありませんでした。
瓶は空っぽでした。
「なんでお前みたいな奴をかわいそうに思わなきゃいけないんだ?」と、また他のお客たちのところにやってきた酒場の主人が、大きな声で言いました。
笑い声がどっとわき起こりました。
ひどい言葉を投げかける声まで聞こえてきます。
話を聞いていた者も、聞いていなかった者も、ただの落ちぶれた役人の情けない姿を見て、笑いながら悪口を言っているのです。
「かわいそう! 何のために私をかわいそうになど思うんだ!」と、マルメラードフは、まるでその言葉を待ち構えていたかのように、ものすごく興奮した様子で片手を突き出しながら立ち上がり、突然叫びました。
「何のためだ! そうとも! 私をかわいそうに思う理由なんて、これっぽっちもない! 私なんか十字架に張り付けにされるべき人間だ。
十字架に縛りつけて、罰を与えるのが本当で、かわいそうに思うなんてとんでもない! しかしな、皆さん、張り付けにするのはいい。だが、張り付けにした上で、私を哀れんでくれ! そうしてくれれば、私から進んで罰を受けに行く。
私はただの楽しみがほしいんじゃない、悲しみと涙を求めているんだからな!……おい、亭主、きさまはこの小瓶が私の楽しみになったと思っているのか? 私はこの底に悲しみを求めたんだ。悲しみと涙を求めたんだ。
そして、それを見つけ出したんだ。味わったんだ。
ただ、すべての人を哀れみ、すべてを理解する神様だけが、我々を哀れんでくださる。
神様だけが、唯一の審判者だ。
最後の審判の日に、神様はこう尋ねてくださるだろう。
『意地の悪い肺病やみの継母のために、他人の小さな子供たちのために、自分自身を売った娘はどこにいる? 地上に生きていたとき、酔っぱらいでどうしようもない父親の乱行を恐れず、それでも父親をかわいそうに思った娘はどこにいる?』そして、こうもおっしゃるはずだ。
『さあ、来なさい! わしはもう一度お前を許した……前にも許してやったが……今度はお前が犯したたくさんの罪もすべて許そう。お前が多く愛した、そのために……』こうして娘のソーニャは許されるんだ……許されるに決まっている。私にはわかるんだ、必ず許されると。
さっきあの子のところへ行ったとき、この胸ではっきりと感じたんだ!……神様はすべての人を裁き、そして許してくださる。善人も悪人も、賢い人も、へりくだった人もな……そして、みんなを許し終えると、今度は我々に向かって、『お前たちも出てきなさい!』とおっしゃるだろう。
『酒飲みも出てきなさい! 意気地なしも出てきなさい! 恥知らずも出てきなさい!』そこで、我々が恥ずかしげもなく出て行って御前に立つと、神様はこうおっしゃるはずだ。
『お前たち豚どもめ! 顔には獣のような印が刻まれているが、それでも来るがいい!』すると知恵ある者や賢い者が、『神様、なぜこのような者たちをお迎えになるのですか?』と尋ねると、神様はこうおっしゃるだろう。
『知恵ある者よ、わしは彼らを迎えるのだ。賢い者よ、わしは彼らを迎えるのだ。』それは、彼らの中の誰一人として、自分自身がその神の愛に値するなんて思っていないからだ……」
そう言って、神様は私たちに向かって御手を伸ばされる。
そこで、私たちはその御手に口づけして……泣き出す……そして、何もかもが合点(がてん)いくのだ!……そのときこそ、何もかもが心に落ちる!……誰も彼もが納得する……カチェリーナだって……あの子も同じように合点いくんだ……主よ、あなたの王国が来ますように!」

言い終わると、彼はぐったりと力尽きて、まるで周囲のことなど忘れ果てたように、誰の顔も見ず、深く考え込みながらベンチの上へ崩れ落ちました。

彼の言葉は、その場にいた人々の心に何かを残しました。
少しの間、沈黙があたりを支配しましたが、やがてすぐに先ほどと同じような笑い声や罵(ののし)る声が起こりました。
「へん、また小理屈をこねやがって!」
「どうも吹かした話だな!」
「よう、お役人さんよ!」
そんな声が飛び交います。

「書生さん、行こう」と、突然マルメラードフは顔を上げて、ラスコーリニコフに話しかけました。
「私を送ってくれないか……コーゼルの家、裏庭の方にあるんだ。もう帰る時間だ……カチェリーナのところへ帰らなきゃ……」

ラスコーリニコフは、とっくの昔にここを出て行きたいと思っていました。それに、この男を送っていくことは、自分でも考えていたことでした。

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