初級翻訳・罪と罰 第182話

ドストエフスキー

官吏はラスコーリニコフに、「こうなっては医者を呼んでも無駄かもしれない」と小声で言いつつも、念のため使いをやるよう指示を出しました。
カペルナウモフが自ら走っていきました。
その間に、カチェリーナは少しだけ落ち着き、吐血も一時的に止まりました。
彼女は病的な、しかし心の奥底まで射抜くような目で、哀れなソーニャをじっと見つめていました。
ソーニャは義母の額からあふれ出る玉のような汗をハンカチで拭いながら、わなわなと震えていました。
やがてカチェリーナは、自分を起こしてほしいと言いました。
人々が両側から支えて、彼女を寝台の上に座らせました。
「子供たちはどこ?」と彼女は弱々しい声で尋ねました。
「ポーリャ、お前、二人を連れて帰ったのかい? 本当に、なんて馬鹿なことを……えっ、どうして駆け出したの……ああ!」
血はまだ、彼女の乾いた唇にべっとりとこびりついていました。
彼女は状況を確認するように、あたりをぐるりと見回しました。
「なるほどね、お前はこんなところで暮らしているんだね、ソーニャ! わたしは一度も来たことがなかったけれど……こんな形で知ることになるとはね」
彼女は、とても苦しそうな表情でソーニャを見ました。
「わたしたちはすっかり、お前の血まで吸いつくしてしまったねえ、ソーニャ……ポーリャ、レーニャ、コーリャ、ここへおいで……さあ、これでみんな揃ったわね。ソーニャ、どうかこの子たちを引き取っておくれ……手から手へ渡すようにね……わたしはもう、十分頑張ったわ!……芝居もこれで幕切れよ! ああ! もう寝かせておくれ、せめて死ぬ時くらい、静かにさせて……」
人々は再び彼女を枕に寝かせました。
「え? お坊さん?……いらないわ……わたしたちに、そんな余分なお金を払う余裕なんてあるはずがないでしょう?……わたしにはそんな大それた罪障なんてありません……仮に罪があったとしても、神様は許してくださるわ……わたしがどれほど苦しんできたか、神様はちゃんとご存じなんだから……でも、もし許してくださらなくても、それはそれで構わないわ!……」
不安な失神状態が、次第に彼女の意識を強く支配していきました。
時おり彼女は身震いしてあたりを見回し、一瞬だけ目の前の人々の顔を見分けますが、すぐに意識はうわ言へと変わっていきました。
彼女は苦しげに、しゃがれた息を吐きました。
喉の奥で、何かゴロゴロと鳴っているようでした。
「わたしはあの人に言いました。閣下……」一言ずつ区切りながら、彼女は叫びました。
「あのアマリヤ・リュドヴィーゴヴナめ……ああ! レーニャ、コーリャ! お手々を腰に当てて、早く、早く、すり足で、パー・ド・バスク(バスク風のステップ)で拍子をとって……すっきりとした可愛い子になるんですよ。
Du hast Diamanten und Perlen……
ダイアモンドや真珠ばかりか……
その先はどうだったかしら? そうよ、これを歌えばいいのね……
〔Du hast die schönsten Augen.〕
〔Mädchen was willst du mehr?〕
上なく美しい瞳を持って
乙女よ、この上なにを望むぞ?……
ふむ、そうじゃなくてね! was willst du mehr――なんてことを思いつくなんて、まぬけね!……ああ、そうだ、まだこんな歌もあったわね。
真昼の暑さ!……ダゲスタンの!……谷間にて!……
ああ、わたしはこれがどんなに好きだったことか……この小唄がたまらなく好きだったのよ、ポーレチカ!……これはお前のお父さんがね……まだ婚約していたころ、よく歌ってくれたものよ……ああ、あのころは!……そう、これを歌うのよ! おや、どんな歌詞だったかしら、どうだったかしら……ああ、忘れちゃった……ねえ、思い出させてちょうだい、どんなだったっけ?」
彼女は激しく興奮し、身を起こそうとあがきました。
そしてついに彼女は、一言一言を叫ぶようにして息を継ぎながら、刻々と深まる驚愕の表情を浮かべ、腹の底をえぐるような恐ろしいしゃがれ声で歌い始めました。
「真昼の暑さ!……ダゲスタンの!……谷間にて……胸に鉛の弾丸を持ち!」
「閣下!」
ふいに彼女は、さめざめと涙にくれながら、胸を裂くような悲鳴とともにそう叫びました。「みなし児たちをお助けくださいまし! 亡くなったセミョーン・ザハールイチの饗応を思い出して!……貴族といってもいいくらいの!……ああ!」彼女は突然われに返って、何かぎょっとしたようにあたりを見回しながら、ぴくりと身を震わせましたが、すぐにソーニャに気がつきました。
「ソーニャ、ソーニャ!」ソーニャが前に立っているのに驚いたように、彼女はつつましやかで優しい声で繰り返しました。
「ソーニャ、可愛いソーニャ! お前もここにいたの?」
人々はもう一度彼女を起こしました。
「たくさんだ!……もうおさらばをしていいころだ!……さようなら、ソーニャ、お前も苦労したねえ!……みんなで痩せ馬を乗りつぶしたんだ!……もう精も根も尽きはーてーたー」と彼女は絶望したように、憎々しげにひと声叫ぶと、どうとばかりに枕の上に頭を落としました。
彼女は再び意識を失いました。
けれど、この最後の昏睡状態は長くは続きませんでした。
彼女の痩せ衰えた青白い顔は、仰向けにがっくりと垂れ、口はいっぱいに開き、足はけいれんするようにぐっと伸びました。
彼女は深い深い息をついて、ついにこと切れました。
ソーニャは空しい亡骸の上に倒れ、両手でひしと抱きかかえ、痩せ細った胸に頭を押しつけたまま、じっと身動きもしませんでした。
ポーレチカは母の足元に身を投げると、しゃくり上げて泣きながら、しきりに接吻を繰り返しました。
コーリャとレーニャは、まだ何が起こったのか分かりませんでしたが、何か非常に恐ろしいことを予感して、互いに両手で肩をつかみ合い、じっと目を見つめ合っていました。そしていきなり二人そろって口を開け、わっと大声で泣き出しました。
二人ともまだ仮装したままでした――一人はトルコ頭巾を巻き、もう一人はダチョウの羽根飾りのついたお椀帽子をかぶったままです。
いつの間にかどうして出てきたのか、あの「賞状」がふと寝台の上に、カチェリーナのそば近く転がっていました。
それはすぐそこ、枕元にありました。
ラスコーリニコフはそれに気づきました。
彼は窓の方へ離れていきました。
レベジャートニコフがそのそばへ飛んできました。
「死にましたなあ!」とレベジャートニコフは言いました。
「ロジオン・ロマーヌイチ、あなたに一言申し上げなければならないことがあるのですが」とスヴィドリガイロフが寄ってきました。
レベジャートニコフはすぐに場所を譲り、気を利かせて姿を消しました。
スヴィドリガイロフはびっくりしているラスコーリニコフを、さらに奥まった隅の方へ引っ張っていきました。
「今度のいっさいの面倒は、つまり葬儀の準備から何から、わたしが引き受けます。
なに、ただ金さえあればいいんでしょう。
ところが、この前もお話しした通り、わたしには余っている金があるんですから。
わたしはこの二人の雛っ子とポーレチカを、どこか良さそうな孤児院へ入れてやります。

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