坊つちやん

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初級翻訳・坊つちやん 第1話

一 生まれつきの無鉄砲な性格のせいで、子供の頃から損ばかりしてきた。 小学校に通っていた頃、学校の二階から飛び降りて、一週間ほど腰を抜かして歩けなくなったことがある。「なぜそんな無茶をしたんだ」と不思議に思う人がいるかもしれない。 別段、深...
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初級翻訳・坊つちやん 第2話

自分の手で、おれという人間を立派に育て上げているかのように誇っているみたいで、少々気味が悪かった。母が死んでから、清はいよいよおれを可愛がった。時々は子供心に、なぜあんなに可愛がるのかと不審に思った。つまらない、やめればいいのに、と思った。...
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初級翻訳・坊つちやん 第3話

清に聞いてみました。「どこかへ奉公でもする気かね?」と聞くと、清は「あなたがおうちを持って、奥さまをもらうまでは、仕方がないから甥の厄介になりましょう」と、ようやく決心した返事をしました。この甥というのは裁判所の書記で、今日一日食うには困ら...
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初級翻訳・坊つちやん 第4話

汽車がずいぶんと動き出してから、もう大丈夫だろうと思って窓から首を出し、振り返ってみると、清はまだそこに立っていました。何だか、とても小さく見えました。二 ブウという音を立てて汽船が止まると、艀(はしけ)が岸を離れてこちらへ漕ぎ寄せてきまし...
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初級翻訳・坊つちやん 第5話

そんなに偉い人間が、月給四十円でわざわざこんな田舎まで来るものか。人間なんて、だいたい似たようなものだ。腹が立てば喧嘩の一つくらいは誰だってするだろうと思っていたが、この様子じゃ、めったに口も利けないし、散歩だって自由にはできない。そんな難...
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初級翻訳・坊つちやん 第6話

今日学校へ行って、みんなにあだ名をつけた。校長は狸、教頭は赤シャツ、英語教師はうらなり、数学は山嵐、画学はのだいこだ。今度またいろいろなことを書いてやる。さようなら」手紙を書き終えると、いい気持ちになって眠気がさしてきたので、さっきのように...
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初級翻訳・坊つちやん 第7話

あなたもお見受けしたところ、大分ご風流でいらっしゃるらしい。ひとつ道楽で始めてみてはいかがです?」と、とんでもない勧誘をしてくる。二年前、ある人の使いで帝国ホテルへ行った時は、錠前直しと間違えられたことがある。ケープを被って鎌倉の大仏を見物...
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初級翻訳・坊つちやん 第8話

子供の頃からそんな教育を受けているから、ひねくれていて、植木鉢の楓みたいに小さくまとまった人間ができあがるんだ。無邪気なら一緒に笑ってやることもできるが、こいつらは違う。子供のくせに、変に毒気を含んでいる。俺は黙って「天麩羅」の文字を消すと...
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初級翻訳・坊つちやん 第9話

すると「何かご用ですか」と聞くから、「用じゃない、温泉に入るんだ」と答えて、さっさと出かけた。赤手拭を宿に忘れてきたのが残念だが、今日は先方で借りることにしよう。それからかなりゆっくりと、出たり入ったりして過ごし、ようやく日が暮れてきたから...
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初級翻訳・坊つちやん 第10話

いたずらだけして罰はご免被るなんていう下劣な根性が、どこの国で流行っていると思っているんだ。金を借りるだけ借りて、返すのはご免だなんて抜かす連中は、どうせ卒業したってそんな仕事に就くに決まっている。そもそも、中学校へ何をしに来ているんだ。学...
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初級翻訳・坊つちやん 第11話

明後日勝てなければ、下宿から弁当を取り寄せて、勝つまでここに居座ってやる。俺はそう決心したので、廊下の真ん中にあぐらをかいて、夜が明けるのを待つことにした。蚊がぶんぶん飛んできたが、そんなものはどうでもいい。さっきぶつけた脛(すね)を撫でて...
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初級翻訳・坊つちやん 第12話

「あの松を見たまえ、幹がまっすぐで、上が傘のように開いて、ターナーの絵にありそうだね」と赤シャツが野だに言うと、野だは、「全くターナーですね。どうもあの曲がり具合といったらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔だ。ターナーとは何のこ...
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初級翻訳・坊つちやん 第13話

清はシワだらけの婆さんだが、どんなところへ連れて行っても恥ずかしいなんて気持ちは少しもしない。野だのような奴は、馬車に乗ろうが、船に乗ろうが、凌雲閣に登ろうが、到底一緒に歩けたものじゃない。もしおれが教頭で、赤シャツがおれだったら、きっとお...
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初級翻訳・坊つちやん 第14話

悪いことをしなければいいんでしょう」赤シャツは「ホホホホ」と笑った。別段、おれは笑われるようなことを言った覚えはない。今日この瞬間まで、自分のやり方でいいと固く信じている。よく考えてみると、世間の大部分の人間は、悪いことをすることを奨励して...
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初級翻訳・坊つちやん 第15話

しかし、これから話そうという気持ちで、すでに一銭五厘を手のひらに用意しているくらいだから、ここで赤シャツから口止めをされちゃ、ちょっと困る。赤シャツも赤シャツだ。山嵐と名前を指さないにしろ、あれほど推察できる謎をかけておきながら、今さらその...
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初級翻訳・坊つちやん 第16話

黒い革張りの椅子が二十脚ほど、長いテーブルの周りに並んでいて、神田の洋食屋くらいの格好はついている。そのテーブルの端に校長が座り、校長の隣には赤シャツが陣取る。あとは好きなところに座ればいいそうだが、体操の先生だけはいつも末席に遠慮している...
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初級翻訳・坊つちやん 第17話

狸でも赤シャツでも、人物から言えばおれよりも下等だが、弁舌はなかなか達者だから、まずいことを喋って揚げ足を取られても面白くない。ちょっと腹案を作ってみようと、胸の中で文章を組み立てていた。すると、前に座っていた野だが突然起立したのには驚いた...
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初級翻訳・坊つちやん 第18話

おれは頭が悪いから、狸の言うような理屈はよく分からないが、蕎麦屋や団子屋に行ったくらいで中学の教師が務まらなくなるようなら、おれみたいな食いしん坊には到底無理な話だと思った。それならそれでいいから、最初から蕎麦や団子が嫌いな人間を募集して雇...
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初級翻訳・坊つちやん 第19話

「それじゃ僕も二十四でお嫁さんをもらうから、世話をしてくれないかな」と、田舎言葉を真似て頼んでみたら、お婆さんは正直に「本当ですか?」と聞いてきた。「本当の本当に、俺は嫁がもらいたくて仕方がないんだ」「そうでしょうねぇ。若いうちは誰でもそん...
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初級翻訳・坊つちやん 第20話

なるほど読みにくい。字が下手なばかりではない、ほとんどが平仮名だから、どこで切れてどこで始まるのか、句読点をつけるのにも相当骨が折れる。おれはせっかちな性分だから、こんな長くてわかりにくい手紙は、五円やるから読んでくれと頼まれても断るような...
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初級翻訳・坊つちやん 第21話

すると、うらなり君が突然おれの隣から立ち上がって、そろそろと女の方へ歩き出したので、少し驚いた。マドンナじゃないか、と思った。三人は切符売り場の前で軽く挨拶を交わしている。遠いので何を話しているのかは分からない。停車場の時計を見ると、もう五...
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初級翻訳・坊つちやん 第22話

男と女は、また元の通りに歩き出しました。おれには考えがあったので、急に全速力で追いかけました。先方は何の気配も感じていないのか、最初の通りゆっくりと歩いています。今では話し声まではっきりと聞こえます。土手の幅は六尺(約1.8メートル)ほどし...
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初級翻訳・坊つちやん 第23話

校長も同意見らしいが、追っては君にもっと働いてもらわなくてはならなくなるかもしれないから、どうか今からそのつもりで覚悟をしておいてほしいんだ」「今より授業時間でも増えるんですか?」「いや、時間は今より減るかもしれないがね」「時間が減って、も...
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初級翻訳・坊つちやん 第24話

俺は小倉の袴をはいて、また出かけた。大きな玄関で呼び出すと、また例の弟が出てきた。俺の顔を見て「また来たのか」という目つきをした。用事があれば二度だって三度だって来る。夜中だって叩き起こさないとは限らない。教頭のところへご機嫌伺いに来るよう...
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初級翻訳・坊つちやん 第25話

最近は学校へ来てその一銭五厘を見るのが苦になるくらい嫌だったんだ」と言うと、山嵐は「君はよっぽど負け惜しみの強い男だな」と言うので、「君こそよっぽど強情っぱりだ」と答えてやった。それから二人の間でこんな会話が始まった。「君は一体どこの出身だ...
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初級翻訳・坊つちやん 第26話

後で調べてみたら、瀬戸で作られる焼き物だから「瀬戸物」と呼ぶのだそうだ。俺は江戸っ子だから、陶器全般のことを瀬戸物というのだとばかり思っていた。床の間の真ん中には大きな掛け軸がかかっていて、俺の顔くらいの大きさの字が二十八文字も書かれている...
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初級翻訳・坊つちやん 第27話

それで演説ができないなんて不思議だ」「なに、これは喧嘩のときに使おうと思って、用心のために取っておく言葉さ。演説となっちゃ、こうは出てこない」「そうかな、しかしペラペラ出るじゃないか。もう一遍やってみたまえ」「何遍でもやるさ、いいか。『――...
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初級翻訳・坊つちやん 第28話

十今日は祝勝会で学校は休みだ。練兵場で式があるというので、校長(タヌキ)は生徒を引率して参列しなければならない。おれも職員の一人として、その後ろについて行くことになった。町へ出ると日の丸だらけで、目が眩むほどだ。学校の生徒は八百人もいる。体...
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初級翻訳・坊つちやん 第29話

清が心配している気持ちは分からないでもないけれど、清の注文通りに手紙を書くのは、三週間も断食するより苦しい。おれは筆と巻紙を放り出して、ごろりと横になり、肘をついて庭のほうを眺めてみたけれど、やっぱり清のことが気にかかる。その時、おれはこう...
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初級翻訳・坊つちやん 第30話

今度は「陸海軍万歳」と赤地に白く染め抜かれたものが風に揺られて、温泉の町から相生村の方へ飛んでいった。たぶん観音様の境内にでも落ちたことだろう。式の最中はそれほどでもなかったが、今はとんでもない人出だ。田舎にもこんなに人間が住んでいたのかと...
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初級翻訳・坊つちやん 第31話

山嵐はどうしたかと見回すと、紋付の羽織をズタズタにされて、向こうで鼻を拭いている。鼻の頭を殴られて、ずいぶんと出血したらしい。鼻が腫れ上がって真っ赤になっていて、ひどく見苦しい。俺は絣(かすり)の着物を着ていたから泥だらけにはなったけれど、...
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初級翻訳・坊つちやん 第32話

用心しないとやられるぞ」と忠告してきた。「どうせ臭い奴だろうが、今日から急に臭くなったわけじゃないだろ」と返すと、「お前、まだ気づかないのか。昨日わざわざ俺たちを誘い出して、喧嘩の真っ只中へ引きずり込んだのは、あいつの策略なんだよ」と教えて...
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初級翻訳・坊つちやん 第33話

とにかく、家でもう一度考え直してみてくれ」考え直すと言われても、変えようのない明々白々な理由だが、狸が青くなったり赤くなったりして、なんだかかわいそうになってきたので、ひとまず考え直すことにして引き下がった。赤シャツには一言も口をきかなかっ...
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初級翻訳・坊つちやん 第34話

自分たちが今ごろ飛び込んだって、「乱暴者だ」と言われて途中で遮られるだけだ。理由を話して面会を求めても、いないと逃げるか、別室へ案内されて終わりだ。不用意に踏み込んだところで、数十とある座敷のどこにいるかなんてわかるはずがない。退屈でも出て...
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