「この作り直し親方という男は、魔術師に違いない! 道具をすべて取り上げて、どうなるか見てみようではないか」
兵士たちが親方の家に向かい、かんな、きり、金づち、のこぎり、それらの道具をすべて取り上げました。
王さまは、その道具たちを自分の執務室の隣の部屋へと運び入れ、念のためにとその扉の鍵を自身の腰にぶら下げました。
昼の間、道具たちは大人しくしていましたが、夜中の一時を過ぎると、この部屋の中からけたたましい物音が聞こえてきました。
のこぎりがギコギコ、かんながシュッシュッ、金づちがコンコン、きりがシュルシュル、やっとこがカチカチ、そしてそのすぐ後で、わめき声と泣き声が聞こえます。
「お腹が空いた! お腹が空いた!」
王さまが、飛んで行って扉を開けると、道具たちは放り込まれたままの姿でそこに置かれていました。
ところが、王さまが扉を閉めるやいなや、またしてもわめき声と泣き声が聞こえてきます。
「お腹が空いた! お腹が空いた!」
その夜、王さまは一睡もできませんでした。
その次の夜は、それがさらにひどくなりました。
あの大臣が、助言しました。
「陛下、やつらに食材を与えてみてはいかがでしょう」
のこぎりがギコギコ、かんながシュッシュッ、金づちがコンコン、きりがシュルシュル、やっとこがカチカチと騒いでいます。
「静かにしろ、王の命である! さあ、これで腹を満たすのだ」
そして、扉を閉めました。
するとどうでしょう、皿がガチャガチャ、グラスがチンチン、銀食器やナイフが触れ合う音がして、部屋の中ではまるで盛大な晩餐の準備がなされているかのようです。
しばらくすると、笑い声とわめき声がしました。
「おなかいっぱいだ! 腹が裂けてしまう! もう食べられない!」
皆は、耳を疑いました。
「おお、作り直し親方は、魔術師に違いない!」
王さまは、兵を差し向け、作り直し親方を目の前に引き立てました。
「これは、どうしたことじゃ、作り直し親方? そなたの道具どもが、しゃべったり、食べたりしておるぞ?」
作り直し親方は、肩をすくめると、たばこを一服吸い込みました。
「この不思議を説き明かさねば、そなたの首を切り落とすことになるが」
「不思議だろうが何だろうが、陛下! こいつらは皆、わしの息子たちなのだ」
「どうしてまた、そのようなはめになったのじゃ?」
「食っていくために、わしを助けてくれておるのさ」
王さまは、親方の言うことをすっかり信用し、道具をすべて返してやるよう命じました。
「わしにも同じ口がある! などと、金輪際言わぬことじゃ。
後悔することになるぞ」
作り直し親方は、また元のとおり仕事を始めました。
しかし、お客さんは数える程しか訪れませんでした。
皆、作り直し親方とかかわり合いになりたくなかったのです。仕方なしに、作り直し親方は、町の中を歩き回り、その先々で声を張り上げました。
「作り直し親方でござい! 壊れ物や直し物はないかな!」
しかし、誰も作り直し親方を呼び止める者はいません。
「どうするつもりだね、作り直し親方?」
「仕事場にのりがたっぷりあるから、それを食べて食いつなぐさ!」
確かに、のりは仕事場に腐るほどありましたが、今日、明日と食べるうちに、日に日にその量は減っていき、とうとうのりも底を突いてしまいました。
「どうするつもりだね、作り直し親方?」
作り直し親方は、肩をすくめると、何度もたばこを吸い込みました。
王さまには、六人の子供たちがいました。三人の息子と三人の娘です。どの子も美しく、すくすくと育っていました。ところが、ちょうどその頃、六人とも病にかかってしまい、お医者さんにも何の病気か分かりませんでした。体が弱り、食欲が衰え、おなかに一番優しい食べ物ですら受け付けません。診断の上に診断を重ね、薬や様々な調合を試みますが、一向に効果がありませんでした。
ついに、一番上の娘が死んでしまいました。人々が埋葬に向かう途中、作り直し親方が小さなひつぎを肩に乗せて、参列者の後ろを歩いていました。
「誰か亡くなったのかい、作り直し親方?」
「のこぎりのやつだ!」
次の日、男兄弟の一人が死んでしまいました。すると、人々が埋葬に向かう途中、また作り直し親方が小さなひつぎを肩に乗せて、参列者の後ろを歩いていました。
「誰か亡くなったのかい、作り直し親方?」
「金づちのやつだ!」
こんなふうに、毎日のように王さまの息子や娘が死んでいき、参列者の後ろには、いつも小さなひつぎを担いで歩く作り直し親方の姿がありました。
「誰か亡くなったのかい、作り直し親方?」
「のみのやつだ! かんなのやつだ!」
抜け目のないあの大臣が、王さまの子供たちの参列の後には決まってひつぎを担いだ作り直し親方の姿があるのに気付いて、言いました。
「陛下、お子さまを皆失いたくなければ、作り直し親方をここに呼び出すことです。全ての元凶は、やつにあるのですから」
王さまに残されたのはもはや娘が一人だけで、その娘も死の床に伏していました。
「ああ、作り直し親方、わが愛しい娘の命を助けてくれ!」
「ああ、国王陛下、わしの愛しいきりのやつを助けてくれ!」
「どうすればよいのじゃ?」
「方法はただ一つ、二人を結婚させることだ!」
娘のことを思う王さまには、即座に承諾するほか手はありませんでした。心の中では、こうつぶやきながら。
「今に見ておれ、作り直し親方め!」
兄弟が皆いなくなったことで、残された娘は幾日もしない内に王女さまになりました。王さまは、作り直し親方に言いました。
「きりを、宮殿へ連れて来るがよい」
「気を付けなされ、陛下。昼間はただのきりだが、夜は違う。今のところ、それがやつの定めなのだ」
「これから先は、どうなるのじゃ?」
「この先のことは、神のみぞ知るだ」
「それなら婚礼は、ひとまず棚上げじゃな」
「我が陛下のお考えとあらば」
それからというもの、折に触れて、王さまは作り直し親方に尋ねるのでした。
「きりはどうじゃ、夜はひょう変するか?」
「相変わらずです、陛下」
「では婚礼は、ひとまず棚上げじゃな」
「我が陛下のお考えとあらば」
数年が過ぎました。王女さまときりとの結婚がどんどん先に延びて、うれしくてたまらない王さまは、作り直し親方をからかうようにこう言いました。
「これは、固まらないミルクのようなものじゃ! さあ、どうするかな、作り直し親方? もはや引き下がることもできまいし、そなたの元にはもうあのきりの他おらぬしのう」
「きりのやつには、おとぎ話をしてやっております。昨日などは、なかなか見事な話になりました。陛下も、お聴きになりますか?」
「ぜひ聴かせてもらおうではないか、作り直し親方!」
「昔あるところに、二人の息子を持つ王さまがいました。一人はいい息子で、一人は悪い息子でした。いい息子は王子となり、父亡き後は王さまになることになっていました。悪い方の息子は、それが気に入りませんでした」
王さまがうろたえて、途中で話を遮りました。
「どうも、その話は好みではない」
「まあ、お聴きなさい、陛下。ここからが、いいところです。
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