初級翻訳・曲馬団の「トッテンカン」 第7話

下村 千秋

新吉は、曲馬団のファットマンのことを思い出し、門の鉄格子の扉につかまって、中の様子をじっとのぞき込んでいました。
するとそこへ、白いズボンをはいた品の良いおじいさんが出て来て、にこにこしながら、
「お前さんは、こんなに早く動物園を見に来たのかね?」
と新吉に話しかけました。
新吉は、そうじゃないと答えてから、
「おじさん、僕を動物園の象使いにしてくださいな」
と、真剣な顔で言いました。
「いったいお前さんは、どういう子なんだね!」
とおじいさんは尋ねました。
そこで新吉は、曲馬団に入ってそこを逃げ出すまでの経緯と、東京へ叔父さんを尋ねて来て、こうして迷子になっていることを一通り話しました。
「じゃあ、お前は泊まる場所がない宿無しかね。
そりゃあ困ったね。
ここですぐに象使いとして雇うわけにはいかないが、お前の叔父さんの居場所がわかるまで、わしがお前を引き取ってあげよう。
曲馬団で動物に慣れているならちょうどいい、いろいろな動物たちにエサをやる仕事でも手伝っているといい。
さあ、こっちへお入り」
親切なおじいさんはそう言って、新吉を門の内側へと迎え入れました。
それからの新吉がどうなったのかは分かりませんが、世の中には鍛冶屋のおやじや曲馬団の団長のような、話の通じない意地悪な人間がいる一方で、この動物園のおじいさんのような、物分かりがよくて親切な人もたくさんいます。
素直でまじめで優しい心の持ち主である新吉は、やがてこうした人たちに見初められ、幸せな生活を送るようになったに違いありません。

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