こんどはおべんとうなんかも、じゅうぶん用意してくるんですね。
」
「ええ、わたしもそのほうがいいと思います。
それにあの漁師のじいさんも、海岸で待ちかねているでしょうからね。
しかし、わたしの先祖は、じつに用心ぶかいかくし方をしたものですね。
岩の戸を開けば、すぐにも金塊が手にはいるのかと思ったら、まだその奥があるんですからね。
しかもそれが地の底の迷路というのでは、これからがたいへんですよ。
」
宮瀬氏は、先祖の用心ぶかさに感じいったようにいいました。
「そうでしょう。
そのころにしても百万両に近い大金ですからね。
ご先祖が、用心のうえにも用心なさったのも、むりはありませんよ。
」
明智は、宝さがしがむずかしくなったのを、かえって喜ぶようなおももちで答えました。
それから、また四人がかりで、大岩をもとのところへもどして、穴の入り口がわからないようにしておいて、そのまま、島の船つき場へ引きかえしましたが、漁師のじいさんは、もうちゃんと、そこに待ちかまえて、ぶじに一同を長島の町に送りとどけました。
さて、そのあくる朝です。
四人は宿屋でぐっすりねむって、ひじょうな元気で目をさましました。
きょうこそ、いよいよ大金塊を手に入れることができるのかと思うと、宮瀬氏はもちろん、明智探偵も、ふたりの少年も、心がおどるような気持ちです。
土地の人のこわがる鬼ガ島へ、二日もつづけて遊びに行くのを、みょうにうたがわれてはいけませんので、宿屋へは、あの島のめずらしい鉱物を見つけたから、それを採集に行くのだといって、きのうの漁師のじいさんを、むりにたのんでもらって、午前九時ごろ、長島町の海岸を出発しました。
きょうは、にぎりめしだとか、パンだとか、うんとおべんとうを用意して、みんなのリュックサックにつめてあるのです。
地の底の迷路の中で、道にまよって、二日ぐらいはだいじょうぶおなかがすかないように、できるだけ食糧品をしいれたのです。
それに、みんなの水筒にはお湯がいっぱいはいっています。
島につきますと、夕方、またむかえにくるようにといって、じいさんを帰し、四人は大急ぎできのうのほら穴にたどりつきました。
大岩を取りのけて、東京からリュックサックに入れて持ってきた、長い細引きのはしを、ほら穴の入り口の岩かどにくくりつけ、その細引きをつたって中へはいることにしました。
まんいち迷路にまよったときの用心です。
きのうのように、明智がろうそくを持って先に立ち、小林君と不二夫少年とは懐中電灯をてらし、宮瀬氏は登山用のピッケルをにぎりしめて、あたりに気をくばり、用心しながらほら穴の中へはいっていきました。
そのとき、四人がもう少し注意ぶかく、島ぜんたいをしらべておけばよかったのです。
そうすれば、あんなおそろしいめにあわなくてすんだかもしれません。
でも、岩屋島はまったく無人島かと思いこんでいたものですから、さすがの明智探偵も、ついゆだんをして、そこまでは気がつかなかったのです。
ごらんなさい。
何も知らないで四人がほら穴へはいっていくのを、あのカラス岩の岩かげから、そっとのぞいているやつがあるではありませんか。
せびろの洋服を着てゲートルをつけて、鳥打ち帽をまぶかくかぶって顔をかくすようにして、じっとほら穴の入り口を見つめています。
むろんこのへんの人ではありません。
都会から来た旅人です。
その男は、いったいどこからこの島へ上陸したのでしょう。もし、けさ、長島町から島へわたったのだとすれば、せまい町のことですから、漁師のじいさんが知っているはずです。
ところが、じいさんはそんな客があったということを、一度もしゃべらなかったではありませんか。
なんにしても、あやしい人物です。
この島のどこかに、人知れずそんな人物が住んでいたのでしょうか。
それとも、もしかしたら、土地の人がこわがっている、あの鬼のたましいとやらが、人間の姿にばけて、島をあらしにやってきた四人のものに、あだをしようとしているのではないでしょうか。
四人の探検隊の行くてには、何かしら、おそろしい運命が待ちうけているような気がします。
地の底で、大金塊を見つけるまえに、思いもよらぬ大事件が起こるのではないでしょうか。
地の底のまい子
ほら穴の入り口から五、六メートルのあいだは、ひじょうに道がせまくて、四人は腹ばいになって、やっとくぐりぬけましたが、そこを出はなれますと、ちょっと広くなったところがあって、道が二つにわかれていました。
「まず右のほうへはいってみよう。
こちらのほうが広いようだから。
」
明智はそういって、右のほうのほら穴へぐんぐんはいっていきました。
そのへんはもう、はわなくてもじゅうぶん立って歩けるのです。
しばらく行きますと、また枝道に出くわしましたが、明智はやはり右の道をとって進みました。
行っても行っても、ほら穴はくねくねとまがりながら、はてしもなくつづいていました。
五、六メートルごとに枝道があるうえに急な坂になって、地の底へ地の底へとくだっていくかと思うと、またのぼり道になっているというふうで、五、六十メートルも進みますと、いま自分たちがどのへんにいるんだか、まるでけんとうもつかなくなってしまいました。
「おそろしく深い穴ですね。
いったいどこに行きどまりがあるのでしょう。
この島の地の下ぜんたいが、こんなほら穴になっているのじゃないでしょうか。
それにしても、わたしの先祖は、じつにむずかしい場所へ宝ものをかくしたもんですね。
これほどにしなくてもよさそうに思われますが。
」
宮瀬氏が、あきれはてたようにつぶやきました。
「いや、なにしろ、ばくだいな宝ものですからね。
ご先祖がここまで用心ぶかくなさったのも、もっともですよ。
一生はたらきづめにはたらいても、ふつうのものには、とても手にはいらないほどの大きな金額です。
それをさがすのに、これぐらいの苦労をするのはあたりまえですよ。
」
明智は笑いながら、そんなことをいって、みんなをはげますのでした。
それから、また、すこし行きますと、肩にすれすれであった両がわの岩が見えなくなって、地の底の広っぱのようなところへ出ました。
懐中電灯でてらしてみても、むこうがわの岩がはっきり見えないほど、がらんとした大きなほら穴なのです。
明智はやはり右のほうへ、岩の壁をつたうようにして、進んでいきましたが、しばらくすると、とつぜん、いちばんあとから歩いていた宮瀬氏が、アッとおそろしいさけび声をたてました。
すると、その声が四方の岩壁にこだまして、あちらからも、こちらからも、アッ、アッ、アッと、同じさけび声が、つづけざまに聞こえてきました。
「どうなさったのです。
宮瀬さんですか。
」
いちばんさきの明智が大きな声でたずねますと、その声もやはりこだまになって、同じことばが、やみの中から、つづけざまに聞こえてきました。
小林少年はまえに、ある事件で、こんな経験がありますから、べつにおどろきませんでしたが、不二夫君は、こだまというものをはじめて聞いたものですから、きみ悪そうに、まっさおになってふるえあがってしまいました。
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