初級翻訳・コウノトリ 第2話

アンデルセン ハンス・クリスチャン

足は、こんなふうにおろすんですよ。
一、二! 一、二! これができたら、世の中へ出てもだいじょうぶよ」それから、おかあさんは少し飛んでみせました。
つづいて、子供たちもぶきっちょに、ちょっとはねあがりましたが、バタッとたおれてしまいました。
まだ、体が重すぎたのです。
「ぼく、飛ぶのはいやだよ」一羽のひな鳥はそう言って、巣の中へはいこんでしまいました。
「暖かい国へなんか、行かなくったっていいや!」
「じゃあ、おまえは冬がきたら、ここで凍え死んでもいいの? あの男の子たちがやってきて、おまえをつるして、あぶって、焼き殺してしまってもいいの? なら、おかあさんが男の子たちを呼んできてあげましょう」
「いやだ、いやだ」と、そのコウノトリの子供は言って、ほかのひな鳥たちと同じように、また屋根の上をはねまわりました。

三日めには、少しでしたけれども、みんなはほんとうに飛ぶことができるようになりました。
こうなると、もう自分たちも空に浮かぶことができるだろう、と思いました。
それで、みんなはじっと浮んでいようとしましたが、すぐにバタッと落っこちてしまいました。
ですから、またあわてて羽を動かさなければなりませんでした。
そのとき、男の子たちが下の通りへ集まってきて、またうたいだしました。
「コウノトリよ、コウノトリ、とんでお帰り、おまえのうちへ!」
「ぼくたち、飛びおりていって、あの子たちの目玉をくりぬいてやっちゃいけない?」と、ひな鳥たちは言いました。
「いけません。ほうっておきなさい」と、おかあさんは言いました。
「おかあさんの言うことだけ聞いていればいいんですよ。そのほうが、ずっとだいじなことなんですから。
一、二、三! さあ、右へまわって! 一、二、三! 今度は、えんとつを左のほうへまわって! ――ほうら、ずいぶんじょうずにできたじゃないの。いちばんおしまいの羽ばたきは、とってもきれいに、うまくできましたよ。
じゃ、あしたは、おかあさんといっしょに、沼へ行かせてあげましょうね」そこへは、りっぱなコウノトリの家のひとたちが、何人も子供たちを連れて集まってくるのよ。だから、その中で、おかあさんの子供たちが一番りっぱな姿を見せてちょうだいね。からだをまっすぐ起こして! そうすれば、とってもかっこよく見えて、みんなから憧(あこが)れられるわよ!」

「でもね、あのいたずらっ子たちに、仕返しをしてやっちゃいけないの?」と、コウノトリの子供たちはたずねました。

「どなりたいだけ、どならせておけばいいのよ。おまえたちは、雲の上まで高くとび上がって、ピラミッドのお国へとんでいくんでしょう? そのときにはね、あの男の子たちは寒くて、ぶるぶるふるえているはずよ。それに、青い葉っぱもおいしいリンゴも、一つだってないんだから」

「でも、ぼくたち、仕返しをしてやろうね」と、子供たちはたがいにささやきあいました。それから、またおけいこをつづけました。

通りに集まる男の子たちの中で、いつもあの悪口の歌をうたっている困った子は、いつだって一番さいしょに歌い出した、あの男の子でした。その子はまだほんの小さな子で、六つより上には見えませんでした。でも、コウノトリの子供たちにしてみれば、その子は自分たちのおかあさんや、おとうさんよりもずっとずっと大きいのですから、年は百歳くらいだろうと思っていました。無理もありません。コウノトリの子供たちに、人間の子供や大人の年が、どうしてわかるはずがありましょう。

コウノトリの子供たちが仕返しをしてやろうというのは、この男の子にたいしてのことだったのです。だって、この子が一番さいしょに歌い出したのですし、それに、いつも決まって歌の仲間に入っていたのですから。

コウノトリの子供たちは、心から怒っていました。そして、大きくなるにつれて、だんだん我慢ができなくなりました。それで、とうとう、おかあさんも「仕返しをしてもいい」と約束しなければならなくなってしまいました。でも、この国をたっていく最後の日まではしてはいけないと、言い聞かせたのでした。

「それよりも、今度の大演習のときに、おまえたちがどんなにやれるか、まず先にそれを見ましょうよ。もし、おまえたちがうまくできなければ、大将さんがくちばしで、おまえたちの胸をつつくのよ。そうすれば、あの男の子たちの言ったことが、少なくとも一つは本当になるじゃないの。さあ、どうなるかしらね」

「わかりました。見ていてよ!」と、コウノトリの子供たちは言って、それからは本当に一生懸命おけいこをしました。こうして毎日毎日おけいこをしたおかげで、とうとうみんなは、軽々ときれいにとぶことができるようになりました。本当に、楽しいことでした。

やがて秋になりました。コウノトリたちは、わたしたちの国に冬がきているあいだ、暖かい国へとんでいくために、みんな集まってきました。それは、たいへんな演習でした! コウノトリたちは、どのくらいとべるかをためすために、いくつもいくつも森や村の上をとばなければなりませんでした。なにしろ、これから先、長い長い旅をしなければならないのですからね。

あのコウノトリの子供たちは、たいそう見事にやってのけましたので、ごほうびに「カエルとヘビ」という優等賞をいただきました。それは一番よい点数だったのです。そして、この一番よい点をもらった者は、カエルとヘビを食べてもいいことになっていました。ですから、このコウノトリの子供たちも、それを食べました。

「さあ、今度は、仕返しだ!」と、みんなは言いました。

「そうですとも!」と、コウノトリのおかあさんは言いました。

「おかあさんがね、いま頭の中で考えたことは、とってもすてきなことなのよ。おかあさんは、ちっちゃな人間の赤ちゃんたちのいる、お池のあるところを知っているの。人間の赤ちゃんたちはね、コウノトリが行って、おとうさんやおかあさんのところへ連れていってあげるまで、そこに寝ているんですよ。かわいらしいちっちゃな赤ちゃんたちは、そういうふうにそこに寝ていて、大きくなってからはもう二度と見ることのない、楽しい夢を見ているのよ。おとうさんやおかあさんはだれでも、そういうちっちゃな赤ちゃんをほしがっているし、子供たちは子供たちで、みんな妹や弟をほしがっているのよ。さあ、あたしたちはみんなでそのお池へとんでいって、悪口の歌をうたわなかった子や、コウノトリをからかったりしなかった子のところへ、かわいらしい赤ちゃんをひとりずつ、連れていってやりましょうね」「みんな、いい子ばかりだからね」

「でも、あの男の子はどうするの? ほら、一番最初に歌を歌い出した、あの意地悪でいたずらな子のことだよ!」と、若いコウノトリたちは声をそろえて叫びました。
「あの子には、どうしてやるつもりなの?」

「あのお池にはね、悲しい夢を見ている、命を授からなかった赤ちゃんもいるのよ。だから、あの子のところへは、その赤ちゃんを連れていってあげましょう。もし私たちが命のない弟を連れていけば、あの子はきっと悲しくて泣き出してしまうはずよ。

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