初級翻訳・シンデレラ 第2話

シンデレラ

そこには、ハツカネズミと同じ毛色をした、灰色で立派なウマのチームができあがっていたのです。
ただ、御者(馬車を操る人)がいないので、ウマたちは「これからどう動くの?」と少し落ち着かない様子でした。
シンデレラはピンときて、うばに言いました。
「ということは、御者が必要なのですね? 私、今度はドブネズミの罠のところへ行って、捕まっていないか見てきますわ!」
うばはシンデレラにこう言いました。
「ああ、そのとおりだね。行って、しっかり見てくるんだよ」
シンデレラが罠をうばのところへ持ってくると、中には太ったドブネズミが三匹入っていました。
うばは、その中から一番立派なヒゲを生やした一匹を選び、妖精のステッキで叩きました。
すると、ドブネズミはたちまち、明るい顔をした太っちょの御者に変わってしまいました。立派な皇帝のようなヒゲをたくわえて、そのえらそうな態度といったら、誰にも負けないほど立派なものでした。
次に、うばはシンデレラに言いました。
「もう一度、庭へ行っておくれ。ジョウロの陰に、トカゲが六匹いるから、それをつかまえてくるんだよ」
シンデレラはすぐにつかまえてきました。
うばは、トカゲたちを六人の召使いに変えてしまいました。
六人の召使いは、馬車の後ろに急いで飛び乗りました。召使いは金や銀で飾り立てた豪華な衣装に身を包み、ずっとそうしていたかのように、馬車の後ろにピタッと張り付いて立っていました。
うばはひと段落すると、シンデレラに言いました。
「ほぉら、もうここには、ダンス・パーティに行くには十分な馬車もお供も、すべて揃ったよ」「ん、うれしくないのかい?」
シンデレラはぽかんとしていましたが、「あ……は、はい!」と答えたとき、あることに気がつきました。
「あの、でも、わたし、こんなに汚れたぼろ服では、行けません……」
そこで、うばはステッキでシンデレラの服をポンと叩きました。
するとどうでしょう、みるみるうちに、シンデレラの服は金や銀、宝石などをちりばめた、立派なドレスに変わってしまいました。
そして、うばは一足の小さなガラスの靴をシンデレラに与えました。
世界のどんなものよりもかわいらしい、素敵な靴でした。
こうして、シンデレラはすっかりおめかしをして、馬車に乗り込みました。
けれども、うばは最後に、シンデレラにある注意をしました。
ダンス・パーティを楽しむのはいいけれど、夜中の十二時を越えてはいけないよ。
もし少しでも過ぎたら、馬車はカボチャに、ウマはハツカネズミに、御者はドブネズミに、召使いはトカゲに、ドレスはぼろ服に、みんなみんな元通りに戻ってしまうよ、と。
シンデレラはうばに、十二時までにはダンス・パーティから帰ってきます、と約束しました。
それから、すぐさま馬車は走り出しました。
シンデレラは、湧き上がってくる喜びを隠しきれませんでした。
王子さまは、誰も知らない素敵な姫君がやって来たという知らせを聞いて、お迎えしようとさっと出てきました。
シンデレラが馬車から降りると、王子さまは手を取って、ダンス・パーティの会場へ案内してくれました。
すると、会場はしーんとしずまりかえり、みんな踊るのも、ヴァイオリンを弾くのも忘れて、新しくやってきた見知らぬ絶世の美女を前に、じっと見つめることしかできませんでした。
しばらくすると、ざわざわとみんなが騒ぎ出しました。
「おい、あの人、たいへんな美人だぞ」
「ねぇ、あの人、たいへんな美人じゃないかしら」
王さまは、もうお年でしたが、それでもシンデレラの美しさにはびっくりしてしまいました。
そして、隣にいるお妃さまに、昔、おまえを見たときも、あの少女のように美しかったんだよ、と甘くささやかずにはいられませんでした。
会場にいた女の人はみんな、シンデレラの服や髪飾りが、あまりに素晴らしいので、次の日に真似してこようとじっと見つめました。
でも、それにはうばが与えてくれたような素晴らしい素材と、シンデレラのような見事な腕前が必要なのですけれどね。
王子さまは、シンデレラをパーティの主役が座る席に連れていきました。
そして、一緒にダンスをしましょう、とフロアに手を引いていきました。
みんながうっとりするほど、シンデレラのダンスは上手でした。
おいしそうなお菓子が出されたときも、王子さまはひと口も食べず、ずっとシンデレラの顔を見つめていました。
シンデレラは姉たちのそばに行って座り、たいへん丁寧に挨拶をして、王子さまからもらったオレンジやシトロンを分けてあげました。
ふたりの姉は、目の前のお姫さまがシンデレラだとは気づかず、とてもびっくりしていました。
シンデレラがこうしてふたりの姉を楽しませているうちに、十一時四十五分の鐘が鳴りました。
シンデレラはあわてて、みんなにお別れの挨拶をしてから、一目散に会場をあとにしました。
家にかえると、シンデレラは急いでうばを探しました。
そして、お礼を言いました。
あともうひとつ、シンデレラには言わなければならないことがありました。
明日もダンス・パーティに行きたい、ということです。
というのも、王子さまが、明日もぜひ来てくださいと言ってくれたからです。
シンデレラがダンス・パーティのことをうばに嬉しそうに話していたとき、ちょうどふたりの姉が玄関のドアをノックしました。
シンデレラは走っていってドアを開けました。
「おそいお帰りですね」と目をこすって、伸びをしながら、あくびまじりにシンデレラは言いました。
誰が見ても、今起きたばかりにしか見えませんでした。
でも、姉たちが出かけてから、シンデレラは一度も眠いと思ったことはないのですけれど。
下の姉が言いました。
「もしあなたがダンス・パーティにいたならば、一刻も退屈することはなかったでしょう!……なんてね。だって、きれいなお姫さまが突然あらわれたのよ。もう、見たことないくらい美人なの。すごく礼儀正しくて、わたしたちにオレンジとかシトロンとかくれたのよ」
シンデレラは、おもしろくないふりをしました。でもいちおう、そのお姫さまの名前なんていうの、と聞きました。
ふたりの姉は、名前は知らないけれど、王子さまはそのお姫さまにすっかり夢中だったわ、と言いました。
王子さまでしたら、その方の名前を知るためなら、この国だってあげてしまうかもしれませんわ、と。
このときばかりは、シンデレラもほほえみました。
それから、こう言いました。
「とてもきれいな、お姫さまでしたのね。
うらやましいかぎりですわ。
わたしも、そのお姫さまがみたくなってきましたわ。
ねぇ、シャルロットお姉さま、お姉さまのいつも着ている、あの黄色い服、かしてくださいませんか?」
すると、上の姉のシャルロットは、かん高い声で言いました。
「まあ、そうくると思ったわ。
あなたのような、うすぎたない灰むすめに、わたしの服を貸せですって! ばかにしているわ!」
シンデレラも、そういう返事がくると思っていました。
逆に、そう言われてうれしかったくらいです。
だって、もし姉たちがお遊びで服を貸してくれようものなら、シンデレラはみじめな気分でパーティに行くことになっていたからです。

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