初級翻訳・ニールスのふしぎな旅 第14話

ニールスのふしぎな旅

つまり、小人はハシバミの茂みへ駆け込んでは、そこからリスの赤ちゃんを連れてきて、死んでしまわないようにしてやっているのだと。
おばあさんは、小人の邪魔をしないように、じっとしていました。
小人はおばあさんに気がつかないようです。
片方の赤ちゃんを連れてかごによじ登ろうとして、もう片方の赤ちゃんを下におこうとしました。
そのとたんに、小人は猫の青い目がそばで光っているのを見つけると、両手に赤ちゃんを持ったまま、困りきって、立ち尽くしてしまいました。
小人はあたりを見回しました。
と、おばあさんがいるのに気がつきました。
そこですぐさま、おばあさんのところへ歩いていって、この子を受けとってくれというように、両腕を高くさしあげました。
おばあさんは、小人にこう頼まれたからには、いやとは言えません。
そこで、体をかがめて、リスの赤ちゃんを受け取りました。
そして、小人が、もう一人の赤ちゃんを連れてかごのところによじ登り、それからまた戻ってきて、預けておいた赤ちゃんを連れていくまで、しっかりと抱いて立っていました。
次の朝、農家の人たちが朝ごはんのために集まってきたとき、おばあさんは昨晩見たことを話さずにはいられませんでした。
それを聞くと、みんなは笑い出し、夢でも見たのだろう、と言いました。
こんな早い季節に、まだリスの赤ちゃんがいるはずがない、というのです。
けれども、おばあさんは信じきっていました。
それで、みんなにかごの中を見てくるように言いました。
みんなは言われたとおりにしました。
見れば、たしかに、小さな巣箱の中の葉っぱの寝床の上に、生まれてからまだ二日ほどで、毛もまばらで、目もまだよく見えないリスの赤ちゃんが、四匹いました。
この農家の主人は、赤ちゃんリスを見て、こう言いました。
「まあ、いずれにしても、たしかにわしらは、この家で、動物に聞かれても、人に聞かれても恥ずかしいことをしていたんだ。」それから、親リスと四ひきの赤ちゃんリスを、かごの中から取りだして、おばあさんの前かけに入れました。
そして、「このリスたちをハシバミのやぶへつれていって、放してやってください」と言いました。
これが大評判になったという事件です。
しかも、これは新聞にものりました。
けれども、なんとも説明しようのないできごとなので、たいていの人たちは、信じようとはしませんでした。
ヴィットシェーヴレのお城

それから二日たって、またふしぎな事が起こりました。
その朝、一むれのガンが飛んできて、ヴィットシェーヴレ荘園からあまり遠くない東スコーネの畑に舞いおりました。
そのむれの中には、あたりまえの灰色のガンが十三羽と、まっ白なガチョウが一羽いました。
ガチョウのせなかには、黄色い革ズボンをはき、緑のチョッキを着て、白い毛織りの帽子をかぶったチビさんがのっていました。
ここはバルト海のすぐ近くなので、ガンたちがおりた畑にも、ふつうの海岸と同じように、砂がいっぱいありました。
でも、このあたりの砂は、ほうっておくと、風に吹きとばされてしまうのでしょう。
で、それをふせぐために、あちこちにマツの木がたくさん植えてありました。
ガンたちが、しばらくの間ごはんをたべていますと、畑の向こうのほうを、子どもがふたり歩いてきました。
それを見ると、見はりをしていたガンが、たちまちバタバタと羽ばたきをして、空に舞いあがりました。
ほかのガンたちも、危険とさとって、いっせいに飛びあがりました。
ところが、白いガチョウだけは、そんなことは気にもかけずに、ノソノソと地べたを歩いています。
みんなが舞いあがったのを見ますと、頭をあげて、大声で言いました。
「逃げることはないよ! 子どもがふたりっきりじゃないか!」
ところで、チビさんは、森のはずれの小山の上にすわりこんで、マツボックリを拾っては、割っていました。
けれども、子どもたちがすぐそばにいるものですから、畑を横ぎって、白いガチョウのところまでかけてゆく勇気がありません。
それで、大きな枯れたアザミの葉の下にかくれて、大声で、あぶないっ、と言いました。
ところがガチョウのほうは、びくともしないで、あいもかわらず、ノソノソと歩きまわっています。
そして、子どもたちがどっちへいこうとしているか、そんなことには見むきもしませんでした。
そのうちに、子どもたちは小道からそれて、畑を横ぎり、だんだんガチョウに近づいてきました。
ガチョウが見あげたときには、もうすぐ目の前まで来ていました。
ガチョウはびっくりしてしまい、すっかりあわててしまったので、飛べるのを忘れて、ただ、つかまらないように、かけようかけようとしていました。
けれども、子どもたちに追いかけられているうちに、みぞの中に追いつめられて、とうとうつかまってしまいました。
そうして、大きい子にかかえられて、つれていかれました。
アザミの葉の下にしゃがんでいたチビさんは、これを見ますと、ハッと、とびあがりました。
ガチョウをとり返そうというのです。
しかし、そのとたんに、いまのじぶんは、ちっぽけで、力のないことを思いだしました。
ああ、くやしい! チビさんは小山の上に身を投げだして、こぶしをかためて地べたをなぐりつけました。
ガチョウは助けをもとめて、ひっしになってさけびました。
「オヤユビくん、助けてくれ! オーイ、オヤユビくん、助けてくれ!」すると、ニールスはこんなに悲しんでいながらも、思わずにっこりして、さけびました。
「よしきた! ぼくはもう、だれでも助けてやるいい人間なんだぞ!」
ニールスは起きあがって、ガチョウのあとをつけていきました。
「待てよ、ぼくにはとても助けられやしないだろう。
でもまあ、どこへつれていかれるか、それだけでも見とどけてやろう」と、言いながら。
子どもたちは、だいぶさきのほうを歩いていましたが、ニールスはその姿を見失わずについていきました。
やがて、小川の流れているくぼんだところへやってきました。
ここでニールスは、とびこせるぐらいの幅のせまいところを見つけるために、しばらくまわり道をしなければならなくなりました。
小川をとびこえて道に出たときには、子どもたちの姿はもう見えなくなっていました。
でも、森のほうへいくせまい道に足跡がついています。
それで、ニールスはそのあとをたどっていきました。
まもなく四つ辻に来ました。
ここで子どもたちは別れたにちがいありません。
だって、両方の道に足跡がついていますもの。
これでいよいよ、望みはなくなってしまったようです。
けれど、ふと、わきを見ますと、ヒースの生えている小高いところに、小さな白いはねが一枚落ちているではありませんか。これは、ガチョウがどこへ連れていかれるかを示すために、道ばたに落とされたものだったのです。
だからニールスは、さらに探しながら森の中を歩いていきました。
でも、ガチョウの姿はまだ見えません。
それでも、道に迷いそうなところにくると、いつも白い小さな羽根が一枚落ちていて、ニールスに道を教えてくれるのです。
ニールスがその羽根をたよりに進んでいくと、やがて森を抜けて、畑を二つほど横切り、道路に出ました。

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